この記事ではトランジスタの『オープンコレクタ』について
- 『オープンコレクタ』とは
- オープンコレクタの特徴(メリットとデメリット)
- 『オープンコレクタ』と『オープンドレイン』の違い
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
『オープンコレクタ』とは
オープンコレクタとは、文字通り、トランジスタのコレクタ端子がオープン状態(開放状態)になっている出力形式のことです。
トランジスタにNPN型バイポーラトランジスタが用いられている場合、コレクタ(C)が出力端子、エミッタ(E)がグラウンドに接続されています。
オープンコレクタは主にICやセンサの出力端子に用いられています。ICの出力端子の1つがオープンコレクタの場合、「IC内部のトランジスタのコレクタ端子はどこにも接続されていない状態ですよ!」ということを意味しています。
オープンコレクタはトランジスタをスイッチとして用いており、ベースに流す電流(ベース電流IB)により、トランジスタがON/OFFします。
トランジスタのON/OFF
- ベース電流IBが流れている時
- ベース電流IBが流れていない時
トランジスタがON状態となり、出力端子の電圧は0[V]になります(正確に言うと、完全に0[V]にはならず、トランジスタのコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(SAT)の値になります)。
トランジスタがOFF状態となり、出力端子はオープン状態(開放状態)になります。つまり、出力端子はハイインピーダンスになります。この状態では、出力端子は浮いたままになります。この状態を回避するために、一般的には出力端子の外部にプルアップ抵抗を接続し、トランジスタがOFF状態の時に、出力端子を高い電圧(約V+[V])にします。
なお、トランジスタのコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(SAT)については下記の記事で解説にしていますので、ご参考になれば幸いです。
補足
オープンコレクタは英語では『Open Collector』と書きます。
『オープンコレクタ』の特徴について!【メリットとデメリット】
オープンコレクタは主に以下の特徴(メリットとデメリット)があります。
メリット
- 電圧変換ができる
- 小電力の負荷(LEDなど)を直接駆動できる
- ワイヤードオア接続ができる
デメリット
- 駆動能力が小さい
次に各特徴について順番に説明します。
電圧変換ができる
ICの電源電圧(VCC)とプルアップ抵抗が接続される電圧(V+)は同じである必要はありません。オープンコレクタではプルアップ抵抗が接続される電圧(V+)により、トランジスタOFF時の電圧レベルを自由に設定することができます。
オープンコレクタを用いず、ICの信号を外部回路に直接伝達する場合を考えてみましょう。
オープンコレクタを用いない場合
- ICの電源電圧がVCC=24[V]、外部回路の電圧がV+=12[V]の場合
- ICの電源電圧がVCC=5[V]、外部回路の電圧がV+=12[V]の場合
ICの電源電圧VCCが外部回路の電圧V+よりも大きな場合、直接接続すると、外部回路に過電圧が印加され、故障してしまう可能性があります。
ICの電源電圧VCCが外部回路の電圧V+よりも小さな場合、直接接続すると、外部回路には5[V]しか伝達することができないため、Hレベルの電圧が足りない可能性があります。
オープンコレクタにすることで、上記の問題を解決することができます。
小電力の負荷(LEDなど)を直接駆動できる
LEDのカソード(K)をオープンコレクタの出力端子に、LEDのアノード(A)を抵抗を介してICの電圧電圧VCCに接続することで、LEDを直接駆動することができます。この場合、トランジスタがON状態の時(オープンコレクタの出力端子がLレベルになる時)にLEDが発光します。
また、LEDのカソード(K)をグラウンドに、LEDのアノード(A)をプルアップ抵抗を介して外部電源V+に接続しても、LEDを駆動することができます。この場合、トランジスタがOFF状態の時(オープンコレクタの出力端子がHレベルになる時)にLEDが発光します。この構成では、トランジスタがOFF状態の時に、A点の電圧が約V+になるため、ICの電源電圧VCCとは異なる電圧でLEDを駆動することができます。
ワイヤードオア接続ができる
複数のオープンコレクタの出力端子を1つの線に接続することで、ワイヤードオア(ワイヤードOR)という方式の回路構成を実現することができます。
全てのトランジスタがOFF状態になると、出力端子はオープン状態(開放状態)となり、プルアップ抵抗により出力端子の電圧が高い状態(約V+[V])になります。
複数のトランジスタの中でどれか1つでもON状態になると、出力端子の電圧は約0[V]となります。
駆動能力が低い
トランジスタがOFF時において、プルアップ抵抗経由で寄生容量(電線の浮遊容量や回路の寄生容量)を充電することにより、出力端子の電圧VAが立ち上がるため、電圧の立ち上がり時間(LレベルからHレベルへの遷移時間)が長くなります。すなわち、駆動能力が小さいということになります。
なお、電圧の立ち下がり時間(HレベルからLレベルへの遷移時間)はON状態のトランジスタにより、寄生容量の放電が瞬時に行われるため、早くなります。
補足
オープンコレクタでは、トランジスタがON状態の時、プルアップ抵抗経由で電源V+から電流が吸い込まれます。そのため、トランジスタの定格電流の関係上、プルアップ抵抗をあまり小さくすることができません。
『オープンドレイン』とは
オープンドレインとは、文字通り、FETのドレイン端子がオープン状態(開放状態)になっている出力形式のことです。
FETにNチャネル型MOSFETが用いられている場合、ドレイン(D)が出力端子、ソース(S)がグラウンドに接続されています。
このように、出力素子がトランジスタの場合には『オープンコレクタ』、出力素子がFETの場合には『オープンドレイン』と呼ばれています。
まとめ
この記事ではトランジスタの『オープンコレクタ』について、以下の内容を説明しました。
- 『オープンコレクタ』とは
- オープンコレクタの特徴(メリットとデメリット)
- 『オープンコレクタ』と『オープンドレイン』の違い
お読み頂きありがとうございました。
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