【交流発電機の誘導起電力】『大きさ』と『向き』について解説!

スポンサーリンク


一様な磁束密度の中でコイルを回転させると、コイルを貫く磁束が変化することで、誘導起電力が発生します。

この記事では、この誘導起電力の大きさ、向き、例題について図を用いて説明しています。

交流発電機の誘導起電力の大きさ

交流発電機の誘導起電力の大きさ

上図に一様な磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)の中で、巻数\(N\)、断面積\(S{\mathrm{[m^2]}}\)のコイルが角速度\({\omega}{\mathrm{[rad/s]}}\)で回転している様子を示しています。

時刻\(t{\mathrm{[s]}}\)においては、コイル面と磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)のなす角は\({\omega}t{\mathrm{[rad]}}\)となります。その時、コイルを垂直に貫く磁束\({\phi}{\mathrm{[wb]}}\)の成分は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
{\phi}=BS{\cos}{\omega}t{\mathrm{[wb]}}\tag{1}
\end{eqnarray}

コイルの巻数は\(N\)なので、(1)式を用いると、コイルの磁束鎖交数\({\psi}{\mathrm{[wb]}}\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
{\psi}=N{\phi}=NBS{\cos}{\omega}t{\mathrm{[wb]}}\tag{2}
\end{eqnarray}

従って、コイルの誘導起電力\(e{\mathrm{[V]}}\)はファラデーの法則を用いると次式で表されます。

\begin{eqnarray}
e=-\frac{d{\psi}}{dt}=-\frac{d}{dt}\left(NBS{\cos}{\omega}t\right)=N{\omega}BS{\sin}{\omega}t{\mathrm{[V]}}\tag{3}
\end{eqnarray}

(3)式の誘導起電力の式には『\({\sin}\)』があります。そのため、コイルに誘導される起電力\(e{\mathrm{[V]}}\)は正弦波状に変化するということになります。このような電圧を交流電圧といいます。また、交流電圧を抵抗に加えたときに流れる電流を交流電流または交流(AC:Alternating Current)といいます。

ここで、『\(E_{M}=NωBS\)』と置くと、(3)式は次式となります。

\begin{eqnarray}
e&=&N{\omega}BS{\sin}{\omega}t\\
&=&E_{M}{\sin}{\omega}t{\mathrm{[V]}}\tag{4}
\end{eqnarray}

(4)式より、コイルの誘導起電力\(e{\mathrm{[V]}}\)は、コイルの巻数\(N\)、角速度\({\omega}{\mathrm{[rad/s]}}\)、断面積S{\mathrm{[m^2]}}、磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)が大きいほど、大きくなることが分かります。

なお、交流電圧は、上式の振幅\(E_{M}\)の代わりに実効値を用いることがあります。実効値\(E_{RMS}\)を用いると(4)式は次式となります。

\begin{eqnarray}
e&=&E_{M}{\sin}{\omega}t\\
&=&\sqrt{2}E_{RMS}{\sin}{\omega}t{\mathrm{[V]}}\tag{5}
\end{eqnarray}

ファラデーの法則とは

ファラデーの法則とは、「電磁誘導によって生じる誘導起電力の大きさは、その回路を貫く磁束の変化の速度に比例する」ことを表した法則です。詳しくは以下の記事に説明していますので、参考にしてください。

【ファラデーの法則とは?】『公式』や『積分形』や『微分形』などを詳しく解説!
【ファラデーの法則とは?】『公式』や『積分形』や『微分形』などを詳しく解説!

続きを見る

【補足】角速度、周期、周波数の関係

  • 周期
  • コイルが1回転するに要する時間です。記号は\(T\)、単位は\({\mathrm{[s]}}\)となります。

  • 周波数
  • コイルが1秒間に回転する回数です。記号は\(f\)、単位は\({\mathrm{[Hz]}}\)となります。

  • 角速度
  • コイルが1秒間に回転する角度です。記号は\({\omega}\)、単位は\({\mathrm{[rad/s]}}\)となります。

周期\(T{\mathrm{[s]}}\)、周波数\(f{\mathrm{[Hz]}}\)、角速度\({\omega}{\mathrm{[rad/s]}}\)には以下の関係式があります。

\begin{eqnarray}
T=\frac{1}{f}=\frac{2{\pi}}{{\omega}}\tag{6}
\end{eqnarray}

例えば、コイルが1回転するのに要する時間(周期)が\(T=0.1{\mathrm{[s]}}\)だとすると、1秒間に回転する回数(周波数)は\(f=10{\mathrm{[Hz]}}\)、1秒間に回転する角度(角速度)は\({\omega}=2π×10{\mathrm{[rad/s]}}\)となります。

なお、(6)式を用いれば、『\(e=E_{M}{\sin}{\omega}t\)』は以下のように書き換えることもできます。

\begin{eqnarray}
e&=&E_{M}{\sin}{\omega}t\\
&=&E_{M}{\sin}2{\pi}ft\\
&=&E_{M}{\sin}2{\pi}\frac{t}{T}
\end{eqnarray}

交流発電機の誘導起電力の向き

交流発電機の誘導起電力の向き

誘導起電力の向きはレンツの法則によって求めることができます。

レンツの法則とは、「電磁誘導によって生じる誘導起電力の向き」を表した法則です。誘導起電力の向きは「元の磁束の変化を妨げる方向」となります。

レンツの法則について詳しくは以下の記事に説明していますので、参考にしてください。

【レンツの法則とは】起電力の向きについてわかりやすく解説!
【レンツの法則とは】起電力の向きについてわかりやすく解説!

続きを見る

例えば、一様な磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)とコイルの向きが垂直の状態から、コイルが回転した時を考えてみましょう。

\(t\)秒後、コイルが回転したことによって、コイル面と磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)のなす角は\({\omega}t{\mathrm{[rad]}}\)となります。その結果、コイルを貫く磁束が減少しています。

すると、レンツの法則によって、磁束の変化を妨げる方向(下から上)に磁束を発生させるように、反時計回りの向きに誘導起電力が生じます。

例題

例題

各辺の長さ\(a{\mathrm{[m]}}\)、\(b{\mathrm{[m]}}\)で巻数\(N\)の長方形コイルが一様な磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)の中で、角速度\({\omega}{\mathrm{[rad/s]}}\)で回転している時、コイルに誘導される起電力の最大値は何ボルトか?

交流発電機の誘導起電力の例題

解答

コイルの断面積\(S{\mathrm{[m^2]}}\)は『\(S=a×b{\mathrm{[m^2]}}\)』となります。そのため、(3)式を用いると、コイルの誘導起電力\(e{\mathrm{[V]}}\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
e=N{\omega}BS{\sin}{\omega}t{\mathrm{[V]}}=N{\omega}Bab{\sin}{\omega}t{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}

ゆえに、コイルに誘導される起電力の最大値は以下となります。

\begin{eqnarray}
最大値=N{\omega}Bab{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}

まとめ

この記事では交流発電機の誘導起電力について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • 交流発電機の誘導起電力の『大きさ』と『向き』

お読み頂きありがとうございました。

当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。

全記事一覧

スポンサーリンク