コアには多くの種類があります。例えば、有名なものだと、EIコア、EEコア、EERコア、PQコア、トロイダルコアなどがあります。コイルやトランスについて勉強した時におそらく一度は見たことがあります。
各コアの使い分けには特に決まった法則はありません。『フィルタに用いるコイル』でも『AC/DCコンバータに用いるトランス』でも同じ形状のコアを用いる場合があります。
しかし、各コアで特徴が異なります。この記事では様々なコアの特徴を説明していますので、ご参考になれば幸いです。
コイルやトランスのコアの種類
代表的なコアとしてはEIコア、EEコア、EERコア、PQコア、トロイダルコアなどがあります。
EIコアとEEコアは中脚が角形であり、太い電線を巻くのが難しいため、小電力のコイルやトランスに用いられており、EERコアとPQコアは中脚が円柱形であり、太い電線を巻くことができるため、大電力のコイルやトランスに用いられることが多くなっています。
ではこれから各コアについて詳しく説明していきます。
EIコア
EIコアはEコアとIコアを組み合わせたコアです。ボビンに対して、Eコアの中脚部を挿入し、反対側からIコアを突き合わせることで閉磁路を形成しています。ポピュラーな形状のコアです。
EコアとIコアをくっつけており、2つのコアには隙間があるため、漏れ磁束が発生します。
EIコアの中脚は角形となっています。そのため、太い電線を巻線にすると、角の部分が膨らみ、電線の密着性が悪くなり、巻線長が長くなります。その結果、形状が若干大きくなります。電線の線形は0.5Φ程度にしておくことをお勧めします。
EIコアのその他の特徴
- EIコアのコア材は一般的には『Mn-Znフェライト』を用います。
- EIコアは太い電線を用いると、電線の密着性が悪くなることから、『細い電線を巻く小電力のコイルやトランス』によく使用されています。
補足
- EIコアは形に注目すると「E+I=日」となっているため、「日」の字型のコア形状と説明している資料があります。
EEコア
EEコアはEコアとEコアを組み合わせたコアです。ボビンに対して、2つのEコアをボビンの両側から対称に挿入して、突き合わせることで閉磁路を形成しています。ポピュラーな形状のコアです。
EコアとEコアをくっつけており、2つのコアには隙間があるため、漏れ磁束が発生します。
EEコアの中脚は角形となっています。そのため、太い電線を巻線にすると、角の部分が膨らみ、電線の密着性が悪くなり、巻線長が長くなります。その結果、形状が若干大きくなります。電線の線形は0.5Φ程度にしておくことをお勧めします。
EEコアのその他の特徴
- EEコアのコア材は一般的には『Mn-Znフェライト』を用います。
- EEコアは太い電線を用いると、電線の密着性が悪くなることから、『細い電線を巻く小電力のコイルやトランス』によく使用されています。中電力~大電力のコイルやトランスには後ほど説明する中脚が円柱形のEERコアやPQコアを用いることが多いです。
EERコア
EERコアはEEコアの中脚が円柱形となったコアです。現在では最もポピュラーな形状となっています。
EERコアも2つのコアをくっつけており、2つのコアには隙間があるため、漏れ磁束が発生します。
EIコアやEEコアと比べると、EERコアはコアの中脚が円柱形となっています。そのため、太い電線でも巻線がしやすくなっています。その結果、電線の密着性が良く、巻線長が短くなります。平角線巻きも容易です。
EERコアのその他の特徴
- EERコアのコア材は一般的には『Mn-Znフェライト』を用います。
- 小電力のトランスではEIコアとEEコアが主に使われていますが、中電力~大電力といった太い電線を用いる場合には、EERコアと後ほど説明するPQコアが好まれています。
PQコア
PQコアはEERコアに対して、円柱形の中脚の断面積を広く、外脚形状を変えることで、小型化したコアです。実装面積がEIコア、EEコア、EERコアよりも小さくなります。外脚は磁束の流れを考慮して、不要な部分をカット(中心部を薄く)しています。ポピュラーな形状のコアです。
PQコアも2つのコアをくっつけており、2つのコアには隙間があるため、漏れ磁束が発生します。なお、PQコアは外脚の中心部が薄いため、2つのコアを組み合わせた時に寸法のズレが生じやすくなっており、漏れ磁束が多くなってしまいます。その結果、結合度が低くなり、漏れインダクタンスが大きくなります。
PQコアはコアの中脚が円柱形となっています。そのため、太い電線でも巻線がしやすくなっています。その結果、電線の密着性が良く、巻線長が短くなります。平角線巻きも容易です。
PQコアのその他の特徴
- PQコアのコア材は一般的には『Mn-Znフェライト』を用います。
- コアの断面積が広いため、大きな出力に適したコアです。そのため、大電力のトランスではPQコアが好まれています。
EPCコア
EPCコアはコイルやトランスを薄型化するために作られた形状です。コイルやトランスの実装高さに制限がある場合に用いられています。薄くする代わりに、実装面積は広くなります。
薄型化を実現するために、コアの厚みを抑えています。その結果、コアの断面積が狭くなっています。
EPCコアも2つのコアをくっつけており、2つのコアには隙間があるため、漏れ磁束が発生します。
EPCコアのその他の特徴
- EPCコアのコア材は一般的には『Mn-Znフェライト』を用います。
トロイダルコア(リングコア)
トロイダルコアはドーナツ状のコアです。リングコアとも呼ばれています。2つのコアをくっつける構造ではないため、漏れ磁束が非常に少なく、結合が良いという特徴があります。また、磁路長が短く、同じ材質のコアでも実効透磁率が大きくなるため、小型でも比較的に大きなインダクタンスを得ることができます。
しかし、トロイダルコアは自動機による機械巻きが難しく、手巻きの場合が多くなっています。そのため、コストが高くなってしまいます。機械巻きにより自動化しているメーカーもありますが、機械巻きを行うには複雑な装置が必要となります。また、基板に密着して実装する時には、樹脂製の台座に乗せてから実装をする必要があります。
直流重畳特性を改善するためのギャップを設けることが難しいため、ギャップを必要としないチョークコイルやトランスに用いられています。また、コモンモードチョークやノーマルモードチョークにも用いられています。
トロイダルコアのその他の特徴
- トロイダルコアをチョークコイルに用いる場合には、コア材は『センダストコア』を用いることが多いです。ただ、大電流(50A以上)を流すようなチョークコイルの場合、トロイダルコアではなく、『Mn-Znフェライト』のEIコアやEEコアを用いることが多いです。なお、『Mn-Znフェライト』は大電流を流すと、磁気飽和してしまうため、ギャップを設ける必要があります。
- コモンモードチョークは寄生容量が小さく、インダクタンスが大きくすることが重要なので、コア材は『Mn-ZnフェライトのHigh μ材(高透磁率材)』を用いることが多いです。一方、ノーマルモードチョークは磁気飽和を起こさないようにするため、コア材ははフェライトコアではなく、『アモルファスコア』や『ダストコア』を用います。
その他のコアの種類
UUコア
UUコアは2つのUコアを組み合わせたコアです。構造が簡単なので、比較的小型のコアとなっています。また、巻線間の絶縁が楽になるという特徴もあります。
UUコアは『カレントトランス(CT)』に用いられることがあります(コモンモードチョークにも用いることがあります)。UUコアは巻線間の結合は悪いですが、カレントトランスの2次側はmAオーダーの電流しか流れないため、結合が悪くても、特性として問題になることはありません。
UIコア
UIコアはUコアとIコアを組み合わせたコアです。
EPコア
EPコアはプリント基板端子取り付け面を除いて、コイルを覆う構造となっています。そのため、漏れ磁束が少なく、シールド性に優れているという特徴があります。
また、コイルの断面を円形にすることにより、低周波特性を向上させ、実効堆積を増加させています。
ERコア
ERコアは薄型化に適したコア形状です。巻線の代わりにプリント基板のパターンを使うこともあります。
RMコア
RMコアは高密度実装に適したコア形状となっています。組み立てが容易であり、自動巻きにも対応しています。
後ほど説明するポットコアの磁気的および機械的利点を持ちつつ、取り付け面積はポットコアよりも小さくなります。
ドラムコア
ドラムコアは後ほど説明するバーコアと似ている形状をしていますが、両端につばがついており、中央は電線を保持するために狭くなっています。材料費が安価で巻線が良いなのが特徴です。
磁路がオープンなので、漏れ磁束が多くなり、周囲にノイズの影響を当たることがあります。
しかし、磁路がオープンということは、逆に閉磁路であるトロイダルコアと比べると、大電流を流すことができるということになります。そのため、インダクタンスが小さく(数μH程度)、大電流が流れるフィルタで用いられることがあります。特に、DCDCコンバータのチョークコイル等に使われることが多くなっています。
なお、ドラムコアは楽器のドラムに形が似ているため、名付けられたようです。ドラムコアは英語では「Drum Core」と書きます。
ドラムコアのその他の特徴
- ドラムコアのコア材は一般的には『Ni-Znフェライト』を用います。
バーコア
バーコアは丸棒の形状となっています。ドラムコアの両端についている「つば」がない形状です。材料費が安価で巻線が容易なのが特徴です。
ドラムコアと同じく、漏れ磁束が多くなり、周囲にノイズの影響を当たることがあります。
しかし、磁路がオープンということは、逆に閉磁路であるトロイダルコアと比べると、大電流を流すことができるということになります。そのため、インダクタンスが小さく(数μH程度)、大電流が流れるフィルタで用いられることがあります。
ポットコア
ポットコアは、従来の積層鋼板では不可能な粉体からの成形で作られています。その結果、小型化、高耐水性であり、漏れ磁束が非常に少なくなっています。
このポットコアは大電流が流れる箇所に高インダクタンスが必要な時に用いることが多くなっています。
見たことあるコアの種類
以下に示してあるのは、ネットや参考書等で名前は聞いたことがあるが、特徴がよく分からなかったコアです。備忘録として残しておきます。
特徴が分からないコアの一覧
カップコア、UUSコア、UURコア、DSコア、LLコア、DUコア、ECコア、EQコア、ETDコア、ETコア、EIRコア、EEDコア、EEHコア、ESQコア、USQコア、PMコア、PMIコア、FFコア、FUコア、FURコア、FUIコア、FTコア、EPOコア、EPXコア
まとめ
この記事ではコイルやトランスに使われているコアの種類について説明しました。
各コアの使い分けには特に決まった法則はないですが、各コアで特徴が異なります。本記事がご参考になれば幸いです。
私はEIコア、EEコア、EERコア、PQコア、トロイダルコア、ドラムコア、バーコア以外は使ったことないので、他のコアも使って設計してみたいです^^
お読み頂きありがとうございました。
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