この記事では『トライアックを利用した調光器』について
- トライアックを利用した調光器の回路図・原理・シミュレーション
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
トライアックを利用した調光器
トライアックの動作を利用した製品に調光器があります。
上図に示しているのは、トライアック\(TR\)、ダイアック\(D\)、可変抵抗\(VR\)、コンデンサ\(C\)で構成されている調光器の内部回路です。入力電圧\(v_{IN}\)は一般的な商用電源(コンセントから供給される電圧)となります。
可変抵抗\(VR\)の値を調整することで、トライアック\(TR\)がONになる位相を変わり、電球の明るさを変えることができます。可変抵抗\(VR\)が大きいほど、トライアック\(TR\)がONになる位相が遅くなるため、電球が暗くなります。
トライアック\(TR\)をオンする位相を変えているので、この制御方式は位相制御と呼ばれています。
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トライアックの原理や構造については、下記の記事で別途まとめていますので、ご参考になれば幸いです。
【トライアックとは】『構造』や『特徴』などを分かりやすく説明します!
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トライアックを利用した調光器の原理
下記の特徴を捉えれば、調光器の原理が分かります。
- トライアック\(TR\)は3端子の素子であり、ゲートに電流\(i_G\)が流れるとONする。
- トライアック\(TR\)に流れる電流がゼロ(厳密には保持電流以下)になるとOFFする。
- ダイアック\(D\)は2端子の素子であり、ダイアックの両端電圧がブレークオーバー電圧\(V_{BO}\)を超えるとONする。
- 負荷(電球)\(R_{OUT}\)にかかる電圧\(v_{OUT}\)はトライアックがONしている時は入力電圧\(v_{IN}\)と等しくなり、トライアック\(TR\)がOFFしている時は0Vとなる。
- コンデンサ\(C\)は入力電圧\(v_{IN}\)により充放電されるが、コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)は入力電圧\(v_{IN}\)よりも時間的に遅れた波形となる。
調光器の原理
トライアックがオンする(入力電圧\(v_{IN}\)がプラスの時)
入力電圧\(v_{IN}\)により、コンデンサ\(C\)が充電されると、電圧\(v_C\)が上昇します。電圧\(v_C\)がダイアックのブレークオーバー電圧\(V_{BO}\)を超えると、ダイアック\(D\)がONします。その結果、トライアックにゲート電流\(i_G\)が流れるため、トライアックがONします。
トライアックがOFFする
入力電圧\(v_{IN}\)の電圧がゼロになると、トライアックに流れる電流がゼロになるため、トライアックがOFFします。
トライアックがオンする(入力電圧\(v_{IN}\)がプラスの時)
入力電圧\(v_{IN}\)により、コンデンサ\(C\)が放電されると、電圧\(v_C\)が低下します。電圧\(v_C\)がダイアックのブレークオーバー電圧\(V_{BO}\)を超えると、ダイアック\(D\)がONします。その結果、トライアックにゲート電流\(i_G\)が流れるため、トライアックがONします。
トライアックがOFFする
入力電圧\(v_{IN}\)の電圧がゼロになると、トライアックに流れる電流がゼロになるため、トライアックがOFFします。
トライアックを利用した調光器は上記の①から④の動作が繰り返されています。
コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)は可変抵抗\(VR\)により調整します。可変抵抗\(VR\)の大きさを大きくすると、コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)の上昇および低下が遅くなり、トライアックがONする位相が遅くなります。そのため、可変抵抗\(VR\)が大きいほど電球が暗くなります。
LTspiceを用いた調光器のシミュレーション
LTspiceのサンプルファイル(Documents\LTspiceXVII\examples\Educational\dimmer.asc)の定数等を変えたシミュレーション回路を上図の左側に示しています。右側に示している波形は上から
- 入力電圧\(v_{IN}\)
- コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)
- トライアックに流れる電流\(i_G\)
- 負荷(電球)にかかる電圧\(v_{OUT}\)
となっています。
コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)が約30V付近になると、ダイアック\(D\)がONし、トライアック\(TR\)にゲート電流\(i_G\)が流れ、トライアック\(TR\)がオンしていることが分かります。
また、LTspiceの『.stepコマンド』を用いて、可変抵抗\(VR\)の値を30kΩ(赤色波形)、100kΩ(青色波形)、200kΩ(緑色波形)に変化させた時のシミュレーション結果を下図に示しています。可変抵抗\(VR\)の抵抗値が大きいほど、トライアック\(TR\)がONするスピードが遅くなっていることが確認できます。
LTspiceの『.stepコマンド』については下記の記事で説明していますので、ご参考にしてください。
-
【LTspice】.stepコマンドとは
続きを見る
まとめ
この記事では『トライアックを利用した調光器』について、以下の内容を説明しました。
- トライアックを利用した調光器の回路図・原理・シミュレーション
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