トランス(変圧器)には『インダクタンス値の調整』や『磁気飽和の防止』等のためにコアにギャップを設けている場合があります。
この記事ではトランス(変圧器)の『ギャップ』について
- コアを削ってギャップを設ける方法
- スペーサーを用いてギャップを設ける方法
- ギャップとAL値の関係
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
コアを削ってギャップを設ける方法
EEコアはEコアとEコアを組み合わせたコアです。このEEコアの中脚を削ることで、中脚が短くなり、ギャップを設けることができます。中脚にギャップがあるコアは『センターギャップコア』と呼ばれています。
このギャップが大きいほど、インダクタンス値が小さくなります。
EEコア等のコアの形状については、下記の記事にまとめていますので、ご参考になれば幸いです。
補足
- センターギャップコアは大量生産に向いています。コアの中脚を削るためには、専用の機械を用いる必要があり、少量生産の場合には単価が高くなるからです。
- EEコア以外にもEERコアやPQコアでも中脚を削ることでギャップを設けることができます。
- ギャップを設けると漏れ磁束が増加します。
スペーサーを用いてギャップを設ける方法
EIコアはEコアとIコアを組み合わせたコアです。このEコアとIコアの間にスペーサーを挿入することでギャップを設けることができます。サイドにギャップがあるコアは『サイドギャップコア』と呼ばれています。
このギャップが大きいほど、インダクタンス値が小さくなります。
補足
- スペーサーを用いたギャップはスペーサーをカッターなどで切ることで実現することができるため、少量生産に向いています。
- スペーサーの材料はポリエステル樹脂やフェノール樹脂が一般的です。
- EEコアにもスペーサーを用いることでギャップを設けることができますが、EEコアの場合、スぺーサーが2つ必要になります。そのため、スペーサーを用いたギャップはEEコアよりもEIコアの方が適しています。
- ギャップを設けると漏れ磁束が増加します。
ギャップとAL値の関係
AL値(AL-value)とは『トランスの自己インダクタンスLを巻数Nの2乗で割った値』です。式で表すと次式となります。単位は [nH/N2]で表します。
\begin{eqnarray}
AL値=\displaystyle\frac{L}{N^2}{\mathrm{[nH/N^2]}}\tag{1}
\end{eqnarray}
コアのデーターシートを見ると、縦軸がAL値、横軸がギャップの特性が記載されています。上図に示しているのはTDK製のEIコアのデータシートに記載されていた『AL値-ギャップ特性』です。横軸と縦軸は対数となっています。
上図から分かるようにギャップが大きくなるほど、AL値が低下していることが分かります。(1)式より、AL値が低下すると、インダクタンス値Lが小さくなります。
AL値については、下記の記事にまとめていますので、ご参考になれば幸いです。
まとめ
この記事ではトランスの『ギャップ』について、以下の内容を説明しました。
- コアを削ってギャップを設ける方法
- スペーサーを用いてギャップを設ける方法
- ギャップとAL値の関係
お読み頂きありがとうございました。
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