この記事では飽和水蒸気量について以下の項目を図を用いて分かりやすく説明しています。
- 飽和水蒸気量とは?
- 飽和水蒸気量の温度による変化
- 飽和水蒸気量の計算方法
- 湿度の計算方法
- 露点とは?
- 結露とは?
飽和水蒸気量
飽和水蒸気量とは、1[m3]の空気中に含むことのできる最大の水蒸気量[g]です。
単位は[g/m3]となります。
空気中に含むことのできる水蒸気の量には限界量があり、その限界量を飽和水蒸気量と呼んでいるのです。
補足
- 飽和水蒸気量は容積絶対湿度、飽和水蒸気密度とも呼ばれています。
飽和水蒸気量と温度
飽和水蒸気量は温度によって変化します。
上図は縦軸が飽和水蒸気量、横軸が温度のグラフです。
上図から分かるように、温度が高いと、飽和水蒸気量が大きくなり、温度が低いと、飽和水蒸気量が小さくなります。
例えば、温度が30[℃]の場合、飽和水蒸気量は30.3[g/m3]となります。つまり、1[m3]の空気中に30.3[g]の水蒸気を含むことができるということです。
しかし、温度が20℃になると、飽和水蒸気量は17.3[g/m3]となり、空気中に含むことのできる水蒸気量が小さくなります。
飽和水蒸気量の計算
温度が30[℃]の場合、飽和水蒸気量は30.3[g/m3]になります。
次に、この飽和水蒸気量30.3[g/m3]がどのような計算から導出されたのかについて説明します。
飽和水蒸気量の計算では、まず飽和水蒸気圧を求める必要があります。
そのため、飽和水蒸気圧についてまず説明します。
『水蒸気圧』と『飽和水蒸気圧』とは
水蒸気圧とは、空気がもっている全圧力において、空気中に含まれている水蒸気がもつ圧力のことです。水蒸気分圧とも呼ばれています。
飽和水蒸気圧とは、空気中の水蒸気が飽和している時における水蒸気がもつ圧力のことです。つまり、飽和水蒸気量の時の水蒸気圧のことを表します。
ポイントまとめ
- 飽和水蒸気圧e(t)[hPa]
- 飽和水蒸気量a(t)3[g/m3]
空気中の水蒸気が飽和している時の水蒸気の圧力
空気中の水蒸気が飽和している時の水蒸気の質量
飽和水蒸気量の計算方法
飽和水蒸気量a(t)を求めるためには、最初に飽和水蒸気圧e(t)を導出する必要があります。
飽和水蒸気圧e(t)は、温度t[℃]を以下のTetens(テテンス)の式に代入すると求めることができます。
Tetens(テテンス)の式
e(t)= 6.1078×10^{\left(\displaystyle\frac{at}{t+b}\right)}\\
水面の場合:a=7.5, b=237.3\\
氷面の場合:a=9.5, b=265.5
\end{eqnarray}
今回は、飽和水蒸気圧を求めるので、上式に『a=7.5, b=237.3』を代入し、
\begin{eqnarray}
e(t)= 6.1078×10^{\left(\displaystyle\frac{7.5t}{t+237.3}\right)}
\end{eqnarray}
となります。
飽和水蒸気量a(t)は、飽和水蒸気圧e(t)と温度t[℃]を次式に代入すると求めることができます。
飽和水蒸気量a(t)を求める式
a(t)&=&217×\displaystyle\frac{e(t)}{t+273.15}\\
&=&217×\displaystyle\frac{6.1078×10^{\left(\displaystyle\frac{7.5t}{t+237.3}\right)}}{t+273.15}
\end{eqnarray}
上式を用いると、ある温度t[℃]における飽和水蒸気量a(t)を計算することができます。
例えば、温度が30[℃]の場合は上式に『t=30』を代入します。すると、
\begin{eqnarray}
a(t)&=&217×\displaystyle\frac{6.1078×10^{\left(\displaystyle\frac{7.5t}{t+237.3}\right)}}{t+273.15}\\
&=&217×\displaystyle\frac{6.1078×10^{\left(\displaystyle\frac{7.5×30}{30+237.3}\right)}}{30+273.15}\\
&{\approx}&30.3{\mathrm{[g/m^3]}}
\end{eqnarray}
となり、温度が30[℃]の場合、飽和水蒸気量は30.3[g/m3]となることが分かります。
湿度の計算
飽和水蒸気量を用いると、湿度を計算することができます。
湿度は以下の式で求めることができます。
湿度を求める式
湿度=\frac{実際の水蒸気量}{飽和水蒸気量}×100
\end{eqnarray}
上式は、空気中に含むことのできる最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)に対して、実際の水蒸気量はどれくらいかを表しています。
例えば、温度が30[℃]の時、1m3の空気中に17.3[g]の水蒸気が含まれているとします。
温度が30[℃]の時は飽和水蒸気量は30.3[g/m3]なので、この時の湿度は
\begin{eqnarray}
湿度=\frac{実際の水蒸気量}{飽和水蒸気量}×100=\frac{17.3}{30.3}×100{\;}{\approx}{\;}57{\mathrm{[%]}}
\end{eqnarray}
となります。
補足
- 湿度には相対湿度と絶対湿度があります。上記で求めた湿度は相対湿度となってます。相対湿度と絶対湿度については以下の記事で説明していますので参考にしてください。
露点
次に露点という用語について説明します。
1[m3]の空気中に、17.3[g]の水蒸気が含まれている状態において、温度が『30[℃]→20[℃]→10[℃]』と下がった時を考えてみましょう。
温度が30[℃]の時
温度が30[℃]の時は、飽和水蒸気量は30.3[g/m3]となります。
すなわち、実際の水蒸気量よりも飽和水蒸気量の方が大きく、まだまだ水蒸気を含める状態です。
この状態では、『30.3[g/m3]-17.3[g/m3]=13.0[g/m3]』の水蒸気を含むことができる余裕があります。
温度が20[℃]の時
では、温度が20[℃]に下がるとどうなるでしょうか。
温度が20[℃]の時は、飽和水蒸気量は17.3[g/m3]となります。
すなわち、実際の水蒸気量と飽和水蒸気量が等しく、これ以上水蒸気を含むことができない状態です。
この時の温度を「露点」と言います。
この時の湿度は
\begin{eqnarray}
湿度=\frac{実際の水蒸気量}{飽和水蒸気量}×100=\frac{17.3}{17.3}×100=100{\mathrm{[%]}}
\end{eqnarray}
となります。つまり、言い換えると、湿度が100%になるときの温度が「露点」となります。
温度が10[℃]の時
では、温度が10[℃]に下がるとどうなるでしょうか。湿度100%となる露点の温度よりも温度が低い状態ですね。
温度が10[℃]の時は、飽和水蒸気量は9.4[g/m3]となります。
すなわち、実際の水蒸気量よりも飽和水蒸気量の方が小さい状態です。
実際の水蒸気量が飽和水蒸気量を超えると、超えた分は凝固して水となります。
今回の場合、凝固して水になる分は
となります。
つまり、17.3[g]あった水蒸気の内、9.4[g]はそのまま水蒸気ですが、残りの7.9[g]は水蒸気の状態で存在できないため、凝結して水になるということです。この凝固して水になる現象を「結露」といいます。
結露の身近な例
寒い冬の朝、カーテンを開けると窓ガラスに結露が発生して、びしょびしょ・・・。この嫌な思いをされた方はいますよね。誰もが一度は経験したことがあると思います。
この窓ガラスの結露は窓ガラスの表面の空気が露点の温度よりも低くなるために起こります。
上図は、温度が30[℃]、湿度が57[%]の部屋において、窓ガラスの表面が10[℃]になっている時の図です。
温度が30[℃]、湿度が57[%]ということは、1[m3]の空気中に17.3[g]の水蒸気があるということになります。
しかし、窓ガラスの表面は10[℃]なので、1[m3]の空気中に9.4[g]しか水蒸気を含むことができません。
そのため、
の水蒸気が水滴となり、結露が発生しているのです。
窓ガラスの表面の温度を上げれば、1[m3]の空気中に含むことのできる水蒸気量があがります。そのため、現在は結露を防ぐために、外の冷たさを伝わりにくくする断熱ガラスを結露対策として使用されています。
また、冬に息を「はぁー」って吹きかけると、白くなる現象ありますよね。
これも同じように説明ができます。
冬は夏に比べて、気温が低いので、飽和水蒸気量が低下しています。この飽和水蒸気量が低下している状態で、息を「はぁー」って吹きかけると、息に含まれている水分量が飽和水蒸気量を越え、白い霧のように凝結するのです。
まとめ
この記事では飽和水蒸気量について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 飽和水蒸気量とは?
- 飽和水蒸気量の温度による変化
- 飽和水蒸気量の計算方法
- 湿度の計算方法
- 露点とは?
- 結露とは?
お読み頂きありがとうございました。
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