この記事では自己インダクタンスについて
- 自己インダクタンスとは
- 自己インダクタンスの『単位』
- 自己インダクタンスと誘導起電力
- 自己インダクタンスに関する問題
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
自己インダクタンスとは
上図に示すような\(N\)回巻きのコイルに電流\(I{\mathrm{[A]}}\)を流した時、この電流\(I\)によって生じる磁束を\({\phi}{\mathrm{[wb]}}\)、磁束鎖交数を\({\psi}{\mathrm{[wb]}}\)とすると、磁束鎖交数\({\psi}\)は電流\(I\)に比例するため、次式で表されます。
\begin{eqnarray}
{\psi}=N{\phi}=LI\tag{1}
\end{eqnarray}
(1)式において、比例定数\(L\)が自己インダクタンスとなります。
(1)式より、コイルの自己インダクタンス\(L\)はコイルに1Aの電流を流した時の磁束鎖交数に等しいということが分かります。
磁束鎖交数Ψと磁束Φの記号について
磁束鎖交数と磁束の記号は参考書やネットによって様々であり、磁束鎖交数の記号を\({\phi}\)(ファイ)や\({\psi}\)(プサイ,プシー)で表している場合もあります。
このサイトでは、
- 磁束鎖交数の記号:\({\psi}\)(プサイ,プシー)
- 磁束の記号;\({\phi}\)(ファイ)
で表示しています。
補足
- 自己インダクタンス\(L\)は『自己誘導係数』とも呼ばれています。単に『インダクタンス』と呼ぶこともあります。
- 自己インダクタンス\(L\)はコイルの巻き数、長さ、断面積、透磁率等によって決まります。
自己インダクタンスの『単位』
(1)式において、自己インダクタンス\(L\)の式に変形すると、次式となります。
\begin{eqnarray}
L=\frac{{\psi}}{I}=\frac{N{\phi}}{I}\tag{2}
\end{eqnarray}
(2)式において、磁束鎖交数\({\psi}\)の単位は\({\mathrm{[wb]}}\)であり、電流\(I\)の単位は\({\mathrm{[A]}}\)となるため、自己インダクタンス\(L\)の単位は\({\mathrm{[wb/A]}}\)となりますが、電気の世界では自己インダクタンス\(L\)の単位を\({\mathrm{[H]}}\)(←ヘンリー)とします。
自己インダクタンスと誘導起電力
上図において、抵抗\(R\)の値や電圧源\(E\)の値を変えることによって、コイルに流れる電流\(I\)を変化させると、磁束鎖交数\({\psi}\)が変化します。その結果、ファラデーの電磁誘導の法則によって、コイルに自己誘導起電力(逆起電力)\(e\)が発生します。
自己誘導起電力\(e\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
e=-\frac{d{\psi}}{dt}=-N\frac{d{\phi}}{dt}{\mathrm{[V]}}\tag{3}
\end{eqnarray}
この現象を自己誘導といいます。
ここで、(3)式に(1)式を代入すると、次式となります。
\begin{eqnarray}
e=-L\frac{dI}{dt}{\mathrm{[V]}}\tag{4}
\end{eqnarray}
(4)式より、コイルの自己インダクタンスLはコイルに流れる電流を1秒間に1Aの割合で変化させた時の自己誘導起電力に等しいということが分かります。
つまり、自己インダクタンス\(L\)とは、コイルに生じる自己誘導起電力\(e\)の大きさの目安を表す量であり、\(L\)が大きいほど、自己誘導起電力\(e\)が大きくなります。
補足
自己誘導起電力\(e\)はレンツの法則により、磁束\({\phi}\)の変化を妨げる方向となります。
- 電流\(I\)が増加する時
- 電流\(I\)が減少する時
磁束\({\phi}\)が増加するので、電流\(I\)と反対の方向の自己誘導起電力\(e\)が発生し、磁束\({\phi}\)の増加を妨げます。
磁束\({\phi}\)が減少するので、電流\(I\)と同じの方向の自己誘導起電力\(e\)が発生し、磁束\({\phi}\)の減少を妨げます。
そのため、(3)式と(4)式に「-(マイナス)」が付いています。
自己インダクタンスに関する問題
では、これから自己インダクタンスに関する問題を2つ解いてみましょう。
自己インダクタンスに関する問題(その1)
問題文
巻数\(N=300\)のコイルに\(I=10{\mathrm{[A]}}\)の電流が流れた時、\({\phi}=6.0×10^{-2}{\mathrm{[wb]}}\)の磁束が生じた。この場合のコイルの自己インダクタンス\(L\)を求めてみましょう。
回答
このコイルの磁束鎖交数\({\psi}\)は(1)式を用いると以下の値となります。
\begin{eqnarray}
{\psi}=N{\phi}=300×6.0×10^{-2}=18{\mathrm{[wb]}}
\end{eqnarray}
そのため、自己インダクタンス\(L\)は(2)式を用いると以下の値となります。
\begin{eqnarray}
L=\frac{{\psi}}{I}=\frac{18}{10}=1.8{\mathrm{[H]}}
\end{eqnarray}
自己インダクタンスに関する問題(その2)
問題文
コイルに流れる電流が\(0.12\)秒間に\(10{\mathrm{[A]}}\)から\(0{\mathrm{[A]}}\)に変化し、自己誘導起電力\(e=60{\mathrm{[V]}}\)が生じた。この場合のコイルの自己インダクタンス\(L\)を求めてみましょう。
回答
自己インダクタンス\(L\)は(4)式を用いると以下の値となります。
\begin{eqnarray}
e&=&-L\frac{dI}{dt}\\
{\Leftrightarrow}L&=&-e\frac{dt}{dI}=-60\frac{0.12}{0-10}=0.72{\mathrm{[H]}}
\end{eqnarray}
まとめ
この記事では自己インダクタンスついて、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 自己インダクタンスとは
- 自己インダクタンスの『単位』
- 自己インダクタンスと誘導起電力
- 自己インダクタンスに関する問題
お読み頂きありがとうございました。
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