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MOSFETの『SOA(安全動作領域)』とは?かなり詳しく説明します!

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MOSFETなどのトランジスタには、超えてはいけない『電圧』と『電流』の領域があります。
この領域のことをSOAと呼びます。
今回、『SOAとはどのようなものか?』など基本的な内容から、『実際の回路においてどのようにSOAを測定するか?』など少し内容的に難しいことまで、なるべく詳細に説明します。

SOAとは?

SOAとは
SOAとは、MOSFETが安全に動作できる領域を表します(図の緑の領域です)。

横軸がMOSFETのドレインソース間電圧VDS、縦軸がドレイン電流IDであるグラフにSOAが記載されています。横軸と縦軸の両方とも対数軸となっているのが特徴です。

MOSFETのデータシートを見ると、ほとんどSOAが記載してあります。

SOAのS・O・Aとは?

SOAとは、『Safety Operating Area』の頭文字を取ったもので、日本語では『安全動作領域』と呼ばれています。また、SOAはASO(Area of Safe Operating)と呼ばれている場合もあります。SOAもASOも同じことを意味します。

SOAのイメージ

SOAのイメージ
SOAについて簡単な回路でまず説明します。

例えば、直流電源VIN、抵抗R、MOSFETで構成されている回路に、ゲート信号を加えた時にAの波形とBの波形になったと仮定します。

波形Aはスイッチング時、10msの間ドレインソース間電圧VDSとドレイン電流IDが重なっている波形です。波形Bは波形Aと比較すると、ドレイン電流IDが大きく、またスイッチング時にドレインソース間電圧VDSにサージ電圧が発生している波形です。

波形Aと波形Bにおいて、横軸をMOSFETのドレインソース間電圧VDS、縦軸をドレイン電流IDであるグラフにプロットしたのが右側のグラフです。

今回は10msの間、ドレインソース間電圧VDSとドレイン電流IDが重なっているので、SOAの領域は10msの線となります。

波形AはSOAの領域内にあるため、MOSFETが安全に動作します。しかし、波形BはSOAの領域外となっているため、MOSFETが破壊する可能性があります。領域外になる場合には、スナバ回路を用いてサージを抑制するか、定格が大きいMOSFETに変える必要があります。

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SOAの各ラインについて

SOAの各ライン
ではSOAの各ラインはどのように決まっているのでしょうか?

上図において、青色の線はMOSFETのドレイン電流の定格電流によって決まる領域です。ドレイン電流には直流での定格電流とパルスでの定格電流があるため、2つの線があります。

赤色の線はMOSFETのドレインソース間電圧の定格電圧によって決まる領域です。

オレンジ色の線はMOSFETのオン抵抗によって決まる領域です。

緑色の線はMOSFETの定格電力によって決まる領域です。

紫色の線はMOSFETの2次降伏によって決まる領域です。

また、各領域はシングルパルス(単発パルス、短パルス、単一パルスとも呼ばれています)印可時間によって領域が変わります。MOSFETが駆動されるパルス時間幅が大きいと、SOA狭くなり、MOSFETが駆動されるパルス時間幅が小さいとSOAが広くなります。

SOAの領域の決まり方

ではデータシート上でSOAの領域はどのように決まっているのでしょうか?東芝製の『2SK4017』を一例にとって説明したいと思います。

MOSFETのドレイン電流の定格電流によって決まる領域

MOSFETのドレイン電流の定格電流によって決まる領域
データシートには絶対最大定格というものが記載されております。そこに、ドレイン電流の直流(DC)における絶対最大定格とパルスにおける絶対最大定格が書いてあります。

今回はドレイン電流の直流(DC)における絶対最大定格が5A、パルスにおける絶対最大定格が20Aとなっています。そのため、SOAのグラフ上でも、5Aと20Aのところに領域の線が引いてあります。

MOSFETのドレインソース間電圧の定格電圧によって決まる領域

MOSFETのドレインソース間電圧の定格電圧によって決まる領域
データシートにドレインソース間電圧の絶対最大定格が記載されています。今回はドレインソース間電圧の絶対最大定格が60Vとなっています。そのため、SOAのグラフ上でも60Vのところに領域の線が引いてあります。

MOSFETのオン抵抗によって決まる領域

MOSFETのオン抵抗によって決まる領域
データシートにはオン抵抗が記載されています。オン抵抗には標準の値や最大の値が書いてあるのですが、SOAの領域で必要なのはオン抵抗の最大値です。このオン抵抗の最大値によって領域が決まります。この例だと0.15Ωがオン抵抗の最大値R DS(ON)MAXです。

そして、オン抵抗によって決まる領域は、

$${I_D}=\frac{V_{DS}}{R_{DS(ON)MAX}}$$
で決まります。

ここで、グラフにおいてドレインソース電圧VDSの最小値が0.1Vです。この時、ドレイン電流IDは上の式で計算すると、0.66Aとなります。また、グラフにおいてドレイン電流の定格電流が20Aです。この時、ドレインソース電圧は上の式で計算すると、3Vとなります。

この0.66Aと3Vを結んだ線が、オン抵抗によって決まる領域となります。なお、この領域はデータシートによって書いてある場合と書いてない場合があります。

MOSFETの定格電力によって決まる領域

MOSFETの定格電力によって決まる領域
定格電力によって決まる領域はMOSFETのチャネル温度(PN接合部温度とも呼ばれている)によって決まります。MOSFETが熱破壊する温度はチャネル温度が150℃となるときです(ちなみに、バイポーラトランジスタ¥は150℃、サイリスタは125℃で熱破壊します)。

データシートを見ると、許容損失が20Wと書いてあります。これはMOSFETの消費電力が20Wになると、チャネル温度が150℃になり、MOSFETが熱破壊するということです。

ではこの20Wはどのように決まるのでしょうか?

データシートには横軸がパルス幅で縦軸が過渡熱抵抗のグラフがあります。このグラフにおいて、直流の時(グラフには直流がないため、パルス幅が10[s]の時を見ています)、過渡熱抵抗が約6.25℃/Wとなっています。これはMOSFETが1W消費するとチャネル温度が6.25℃増加するということです。

そのため、MOSFETが20W消費すると、チャネル温度が125℃(6.25℃/W×20W=125℃)増加します。周囲温度(雰囲気温度とも呼ばれています)は25℃なので、チャネル温度は周囲温度の25℃に温度上昇の125℃を足して、25℃+125℃=150℃となり、MOSFETが熱破壊する温度に達します。したがって、直流動作では20Wのラインで領域線が引かれています。

次に、パルス動作の場合どのようになるでしょうか?
パルス幅が1msの時、単発パルスの線を見ると、過渡熱抵抗が(6.25℃/W)×0.25となっています。この過渡熱抵抗では、MOSFETが80W消費すると、チャネル温度が150℃となります。そのため、1msのシングルパルス印可では、80Wのラインで領域線が引かれています。

MOSFETの2次降伏によって決まる領域

MOSFETの2次降伏によって決まる領域
次はMOSFETの2次降伏によって決まる領域についてです。そもそも、MOSFETの2次降伏とは何でしょうか?

2次降伏とはドレインソース電圧を上げていくと、ある時点で急に低インピーダンスとなり、ドレイン電流が増加する現象のことです。2次降伏は英語ではSecondary Breakdownと呼ばれており、略してS/Bと表記されることがあります。

この2次降伏によって『MOSFETの定格電力によって決まる領域』よりもSOAが狭い範囲となってしまいます。2次降伏については、
トランジスタの『2次降伏』とは?
で詳しく説明しています。

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実際にSOAを測定する時の注意点

今までSOAのグラフがどのようにできているのかを説明しました。次にSOAを測定する時の注意点について説明します。
主に注意点は2つあり、1つはSOAのグラフはシングルパルス限定だということ。もう1つは周囲温度によってSOAの波形が変わることです。

注意点1:繰り返しパルスの場合は平均印加電力も測定する必要あり

繰り返しパルスの場合は平均印加電力も測定する必要あり
SOAはシングルパルスをMOSFETに印加された時のデータです。

連続パルス(繰り返しパルスとも呼ばれる)が印加される場合、すなわち、連続的にMOSFETがスイッチングする場合には、全てのパルスがSOAの領域に入っている事に加えて、平均消費電力が定格電力以下であることが必要です。

注意点2:周囲温度に合わせてディレーティングを行うこと

SOAは周囲温度が25℃の時のデータです。周囲温度が25℃ではない場合や、MOSFET自体が発熱して素子温度が上昇している場合には、その温度でディレーティングする必要があります。次は、このディレーティング方法について説明します。

電力のディレーティング

電力のディレーティング
MOSFETのデータシートには横軸が温度で、縦軸が定格電力のグラフが表示されています。このグラフからディレーティングが決まります。この例では、温度が25℃の時は20W(許容損失PDを100%使用可能)となっていますが、25℃を超えると、電力が減少していき、150℃で0W(許容損失PDを0%使用可能。つまり150℃では使用不可ということです)となっています。この電力減少の傾きは0.8%/℃です。

今回、周囲温度が60℃と仮定すると(または、トランジスタが発熱して60℃となっている場合)、


$$(60℃-25℃)×0.8%/℃=28%$$

となります。そのため、SOAの領域は電流が小さくなる方向に28%移動させます。これは、周囲温度が60℃の時、MOSFETは20Wを28%下げた14.4W(20W×(100%-28%))まで使用可能ということです。つまり、周囲温度が上がると20W使えなくなります。

オン抵抗による最大電流のディレーティング

オン抵抗による最大電流のディレーティング
次にオン抵抗でのディレーティングが必要となります。
MOSFETのデータシートには横軸が温度で縦軸がオン抵抗のグラフが記載されています。このグラフから最大電流のディレーティングを行います。
今回、周囲温度が60℃と仮定します。
周囲温度が25℃の時の最大電流をID (25℃) 、周囲温度が60℃の時の最大電流をID (60℃) します。また、データシートから25℃の時のオン抵抗RDS(ON)(25℃) が約0.07Ωで60℃の時のオン抵抗RDS(ON)(60℃) が0.08Ωです。そのため、最大電流は


$$R_{DS(ON) (25℃)}×I_{D(25℃)}^2= R_{DS(ON) (60℃)}×I_{D(60℃)}^2 {\Leftrightarrow} I_{D(60℃)}=18.7A$$

となります。そのため、SOAの定格電流によって決まる領域を20Aから18.7Aに下げます。

SOAの測定方法

SOAの測定方法
『MOSFETの定格電力によって決まる領域』で説明したように、シングルパルスの幅が短いほど大電力に耐えることが可能です。では実際このパルスの幅はどのように測定すればよいでしょうか。

実施はMOSFETのドレインソース間電圧とドレイン電流をオシロスコープで測定し、VDSとIDの重なりをパルス幅としていることが多いです。

たとえば、VDSとIDの重なり期間が10msの場合だったら、10msの領域内に収まっていることが必要となります。

バイポーラトランジスタのSOAの場合

今回、MOSFETのSOAについて説明しましたが、バイポーラトランジスタを使用する場合にもSOAに気をつける必要があります。
バイポーラトランジスタの場合には、どのようにすればよいでしょうか。

バイポーラトランジスタのSOAはMOSFETとほとんど同じです。MOSFETの場合、ドレイン電流とドレインソース間電圧のグラフでしたが、バイポーラトランジスタではコレクタ電流とコレクタエミッタ間電圧のグラフになります。

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