MOSFETにゲートソース間抵抗が接続されている理由

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MOSFETのゲートとソースには抵抗(ゲートソース間抵抗と呼ばれます)が接続されているのをよく見かけます。でも一体この抵抗は何のために接続されているのでしょうか?とりあえず、おまじないとして10kΩを接続すると良いとか言いますが、それは一体なんでなのか・・・

ゲートソース間抵抗を接続する理由が分からなかったので調べてみました。これから詳しく説明します。

ゲートソース間抵抗を接続する理由

入力信号がない時(オープンになった時)に確実にゲートの電位を0Vにするため

MOSFETにゲートソース間抵抗を接続する理由1
MOSFETをオフする際に、入力信号をオープンにする制御ICがある場合を考えてみます。

この時、ゲートソース間抵抗RGS を接続せずに、MOSFETをオフすると、MOSFETのゲートは入力インピーダンスが高い (ゲートに電圧をかけてもほとんど電流が流れないということ)ため、ゲート電位はLow(通常、0V)にならず、浮遊状態となり、基準電位を失います。

その結果、ゲートの電位が不安定になり、MOSFETをオンしていないにも関わらず、勝手にオン(セルフターンオン)してしまう可能性があります。

ドレインに高dv/dtの電圧が印可された時にMOSFETがターンオンするのを防ぐため

MOSFETにゲートソース間抵抗を接続する理由2
ノイズやスイッチングにより、MOSFETのドレインの電圧が急に上昇(高dv/dt)した場合を考えてみます。

MOSFETには寄生容量があります。ゲートとドレインの間のCGD (ミラー容量と呼ばれる)、ゲートとソースの間のCGS、ドレインとソースの間のCDSが寄生容量です。

ドレインの電圧に高dv/dtが印可された場合、この寄生容量によって電流が流れ、ゲートソース間電圧が上昇します。その結果、ゲートソース間抵抗RGSの上昇が大きくなり、MOSFETがセルフターンオンする可能性があります。これは、CGD/CGSの比率が大きいほど、セルフターンオンが発生する可能性が上がります。

ここで、CGSと並列にゲートソース間抵抗を接続することで、ゲートソース間抵抗RGSのインピーダンスが下がります。その結果、ゲートソース間電圧の上昇を抑え、セルフターンオンを防ぐことができます

制御ICのシンク電流が十分でないときに補助するため

MOSFETにゲートソース間抵抗を接続する理由3
制御ICのシンク電流(制御ICに流れる電流)が小さい場合を考えてみます。ゲートソース間抵抗RGSがない場合、MOSFETをオフしようとしてもシンク電流が小さいため、ゲートにたまった電荷を引き抜くのが遅くなります。

これは、制御信号が高速の場合には、MOSFETをオフしようとしても、ゲートの電荷の引き抜きが遅いことで、MOSFETをオフすることができなくなり問題となる場合があります。

ゲートソース間抵抗を接続することで、ゲートにたまった電荷をすばやく引き抜くことがき、制御信号が高速の場合にもMOSFETをオフすることができます。

MOSFETが誤ってオンしてしまうとどうなるのか

MOSFETが誤ってオンしてしまうとどうなるのか
入力電圧VIN、ハイサイドMOSFET、ローサイドMOSFETがある構成を考えてみます。この構成では、ハイサイドMOSFETとローサイドMOSFETは同時にオンしないように駆動させるのが普通です。

しかし、ハイサイドMOSFETをONしているときに、ノイズなどでローサイドのMOSFETが勝手にオン(セルフターンオン)してしまうと、ハイサイドMOSFETとローサイドMOSFETが両方オンすると、入力電圧VINから大電流が流れます。

その結果、MOSFETが破損してしまうのです。このため、セルフターンオンを防ぐためにゲートソース間抵抗RGSが必要となります。

ゲートソース間抵抗の呼び方

ゲートソース間抵抗の呼び方
プルダウン抵抗とも呼ばれています。プルダウン抵抗とは、ゲートに対して入力信号がない場合に”Low”レベル(通常0V)にするために用いられる抵抗です。

このMOSFETのゲートとソースに接続する抵抗も同じ作用があるので、ゲートソース間抵抗をプルダウン抵抗と呼ぶことがあります。

しかし、一般的にはゲートソース間抵抗と呼ぶことが多いです。

なお、PchのMOSFETの場合には、プルアップ抵抗とも呼ばれています。

ゲートソース間抵抗には何Ωを接続するのか

通常、ゲートソース間抵抗RGSには1kΩから30kΩが接続されているのが多いです。一番見かけるのは10kΩです。セルフターンオン現象が生じない程度の抵抗値にすることが重要なので、ゲートソース間抵抗RGSは大きすぎてもダメです。

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