この記事では『ミルマンの定理』について
- ミルマンの定理とは
- ミルマンの定理の『公式の覚え方』と『例題』
- ミルマンの定理とオームの法則の関係
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
ミルマンの定理とは
ミルマンの定理とは、「電圧源と抵抗が直列接続されている回路」が「複数個並列接続されている」時に、回路の端子電圧(開放電圧)\(V\)を求めることができる定理です。
例えば、上図に示すような「電圧源と抵抗が直列接続されている回路」が「\(n\)個並列接続されている」時、この回路の端子電圧(開放電圧)\(V\)は次式で表されます。
ミルマンの定理の公式
\begin{eqnarray}
V=\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{V_i}{R_i}}{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{1}{R_i}}=\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{V_n}{R_n}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{1}{R_n}}\tag{1}
\end{eqnarray}
補足
- ミルマンの定理は「全電圧の定理」や「帆足(ほあし)・ミルマンの定理」とも呼ばれています。
- ミルマンの定理は英語では「Millman"s Theorem」と書きます。
ミルマンの定理の覚え方
ミルマンの定理は覚えるのが大変ですが、分子と分母に分けて考えると覚えやすくなります。
分子
分子は次式となっており、「端子A-B間を短絡した時に流れる合成電流」を意味しています。
\begin{eqnarray}
(1)式の分子=\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{V_i}{R_i}=\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{V_n}{R_n}\tag{2}
\end{eqnarray}
分母
分母は次式となっており、「電圧源を取り除いた後の端子A-B間の合成抵抗の逆数(合成コンダクタンス)」を意味しています。
\begin{eqnarray}
(1)式の分母=\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{1}{R_i}=\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{1}{R_n}\tag{3}
\end{eqnarray}
このようにミルマンの定理において、「分子は短絡した時に流れる合成電流」、「分母は合成抵抗の逆数(合成コンダクタンス)」と考えると覚えやすくなります。
あわせて読みたい
コンダクタンスは「直流回路または交流回路における電流の流れやすさ」を表し、抵抗\(R\)の逆数となります。記号は\(G\)、単位は\({\mathrm{[S]}}\)(ジーメンス)を用います。式で表すと次式となります。
\begin{eqnarray}
G=\frac{1}{R}{\mathrm{[S]}}
\end{eqnarray}
コンダクタンスについては、下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。
【コンダクタンスとは】『単位』や『計算方法』などのまとめ!
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「ミルマンの定理」と「オームの法則」
ミルマンの定理がやっていることは「オームの法則(\(V=RI\))」と変わりはありません。「オームの法則」を変形させると、次式に示すように「ミルマンの定理」となります。
\begin{eqnarray}
V&=&RI=\frac{I}{\displaystyle\frac{1}{R}}=\frac{\displaystyle\frac{V}{R}}{\displaystyle\frac{1}{R}}{\;}{\;}{\Rightarrow}{\;}{\;}V&=&\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{V_i}{R_i}}{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{1}{R_i}}=\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{V_n}{R_n}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{1}{R_n}}\tag{4}
\end{eqnarray}
ミルマンの定理の例題
先ほど説明した回路だと、全ての枝で電圧源と抵抗が直列接続されていました。しかし、実際の回路では電圧源の数が少なかったり、逆向きの電源があったりしますよね。
なので、次に
- 「電圧源:3個」、「抵抗:3個」の回路の場合
- 「電圧源:2個」、「抵抗:3個」の回路の場合(←電圧源が少ない場合)
- 「逆向きの電源」がある回路の場合
の3パターンにおいて、ミルマンの定理の例題を解いてみましょう。
「電圧源:3個」、「抵抗:3個」の回路の場合
上図に示す回路の端子電圧(開放電圧)\(V\)は何\(V\)でしょうか。
解答
ミルマンの定理の公式は次式で表されます。
ミルマンの定理の公式
\begin{eqnarray}
V=\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{V_i}{R_i}}{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{1}{R_i}}=\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{V_n}{R_n}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{1}{R_n}}\tag{1}
\end{eqnarray}
上図に示す回路では、各枝には全て電圧源と抵抗が直列接続されており、また、逆向きの電源もないため、電圧源\(V_1\),\(V_2\),\(V_3\)、抵抗\(R_1\),\(R_2\),\(R_3\)に各値を代入すると、端子電圧\(V\)を求めることができ、以下の値となります。
\begin{eqnarray}
V&=&\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+\displaystyle\frac{V_3}{R_3}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+\displaystyle\frac{1}{R_3}}\\
\\
&=&\frac{\displaystyle\frac{12}{6}+\displaystyle\frac{16}{4}+\displaystyle\frac{24}{12}}{\displaystyle\frac{1}{6}+\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{12}}\\
\\
&=&\frac{2+4+2}{\displaystyle\frac{2+3+1}{12}}\\
\\
&=&\frac{8}{0.5}\\
\\
&=&16{\mathrm{[V]}}\tag{5}
\end{eqnarray}
「電圧源:2個」、「抵抗:3個」の回路の場合(←電圧源が少ない場合)
上図に示す回路の端子電圧(開放電圧)\(V\)は何\(V\)でしょうか。
解答
ミルマンの定理の公式は次式で表されます。
ミルマンの定理の公式
\begin{eqnarray}
V=\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{V_i}{R_i}}{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{1}{R_i}}=\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{V_n}{R_n}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{1}{R_n}}\tag{1}
\end{eqnarray}
上図に示す回路には、電圧源が1個ありません。電圧源\(V_3\)が無くなっています。この場合、電圧源がないところには\(0{\mathrm{[V]}}\)の電圧源があるものと考えます(\(V_3=0{\mathrm{[V]}}\))。そのため、上式において、電圧源\(V_1\),\(V_2\)、抵抗\(R_1\),\(R_2\),\(R_3\)に各値を代入すると、端子電圧\(V\)を求めることができ、以下の値となります。
\begin{eqnarray}
V&=&\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+\displaystyle\frac{V_3}{R_3}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+\displaystyle\frac{1}{R_3}}\\
\\
&=&\frac{\displaystyle\frac{12}{6}+\displaystyle\frac{16}{4}+\displaystyle\frac{0}{12}}{\displaystyle\frac{1}{6}+\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{12}}\\
\\
&=&\frac{2+4}{\displaystyle\frac{2+3+1}{12}}\\
\\
&=&\frac{6}{0.5}\\
\\
&=&12{\mathrm{[V]}}\tag{6}
\end{eqnarray}
「逆向きの電源」がある回路の場合
上図に示す回路の端子電圧(開放電圧)\(V\)は何\(V\)でしょうか。
解答
ミルマンの定理の公式は次式で表されます。
ミルマンの定理の公式
\begin{eqnarray}
V=\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{V_i}{R_i}}{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{1}{R_i}}=\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{V_n}{R_n}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{1}{R_n}}\tag{1}
\end{eqnarray}
上図に示す回路では、「電圧源\(V_3\)の向き」は「他の電圧源\(V_1\)および\(V_2\)の向き」と比較すると、逆向きになっています。この場合、逆向きになってる電圧源にはマイナスの値を代入します。 (\(V_3=-24{\mathrm{[V]}}\))。そのため、上式において、電圧源\(V_1\),\(V_2\),\(V_3\)、抵抗\(R_1\),\(R_2\),\(R_3\)に各値を代入すると、端子電圧\(V_{AB}\)を求めることができ、以下の値となります。
\begin{eqnarray}
V&=&\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+\displaystyle\frac{V_3}{R_3}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+\displaystyle\frac{1}{R_3}}\\
\\
&=&\frac{\displaystyle\frac{12}{6}+\displaystyle\frac{16}{4}+\displaystyle\frac{-24}{12}}{\displaystyle\frac{1}{6}+\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{12}}\\
\\
&=&\frac{2+4-2}{\displaystyle\frac{2+3+1}{12}}\\
\\
&=&\frac{4}{0.5}\\
\\
&=&8{\mathrm{[V]}}\tag{7}
\end{eqnarray}
ミルマンの定理(負荷抵抗\(R_L\)が接続されている時)
今までは、負荷が開放されている時の端子電圧(開放電圧)\(V\)を計算しましたが、負荷に抵抗\(R_L\)が接続されていても、負荷にかかる電圧\(V_L\)を求めることができます。
上図に示すように、回路に負荷抵抗\(R_L\)が接続されている時、等価電圧源\(V\)と等価抵抗\(R\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
V&=&\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{V_i}{R_i}}{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{1}{R_i}}=\frac{\displaystyle\frac{V_1}{R_1}+\displaystyle\frac{V_2}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{V_n}{R_n}}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{1}{R_n}}\tag{8}\\
\\
R&=&\frac{1}{\displaystyle\sum_{i=1}^n\displaystyle\frac{1}{R_i}}=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{R_1}+\displaystyle\frac{1}{R_2}+{\;}{\cdots}{\;}+\displaystyle\frac{1}{R_n}}\tag{9}
\end{eqnarray}
したがって、負荷抵抗\(R_L\)にかかる電圧\(V_L\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
V_L=\frac{R_L}{R+R_L}V\tag{10}
\end{eqnarray}
まとめ
この記事では『ミルマンの定理』について、以下の内容を説明しました。
- ミルマンの定理とは
- ミルマンの定理の『公式の覚え方』と『例題』
- ミルマンの定理とオームの法則の関係
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