この記事ではローレンツ力について
- ローレンツ力とは
- ローレンツ力の『向き』
- ローレンツ力の『公式』と『大きさ』
- ローレンツ力による円運動
- ローレンツ力と電磁力の関係
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
ローレンツ力とは
ローレンツ力とは、荷電粒子が磁場中を運動するときに受ける力です。
上図に示しているように、電気量\(+q{\mathrm{[C]}}\)の荷電粒子が速度\(v{\mathrm{[m/s]}}\)で磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)の磁場中を磁場と垂直な向きで運動している時、荷電粒子は磁場の向きと速度の向きの両方に垂直な向きにローレンツ力\(F{\mathrm{[N]}}\)を受けます。
次に、ローレンツ力の向きはどのように決まるのか?ローレンツ力の大きさはどれくらいか?について説明します。
補足
- 荷電粒子とは、電荷を持つ粒子のことです。プラスの電荷(電気量\(+q{\mathrm{[C]}}\))を持った粒子とマイナスの電荷(電気量\(-q{\mathrm{[C]}}\))を持った粒子があります。
- ローレンツ力は英語では「Lorentz Force」と書きます。
- ローレンツ力はオランダの物理学者「ヘンドリック・アントーン・ローレンツ(Hendrik Antoon Lorentz)」により発見されました。
ローレンツ力の向き(フレミングの左手の法則との関係)
ローレンツ力の向きは左手を使って調べます。
荷電粒子がプラスの電荷(電気量\(+q{\mathrm{[C]}}\))を持つとき、ローレンツ力の向きはフレミングの左手の法則において、
- 親指
- 人差し指
- 中指
ローレンツ力\(F{\mathrm{[N]}}\)
磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)の磁場
荷電粒子の速度\(v{\mathrm{[m/s]}}\)
となります。
なお、荷電粒子がマイナスの電荷(電気量\(-q{\mathrm{[C]}}\))を持つときは親指の向きと逆向きにローレンツ力\(F\)を受けます。
その他の方法としては、「荷電粒子の速度の向き」を「電流の向き」に変換して、フレミングの左手の法則を当てはめる方法があります。この場合、ローレンツ力\(F\)の向きは以下のようになります。
- 親指
- 人差し指
- 中指
ローレンツ力\(F{\mathrm{[N]}}\)
磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)の磁場
電流\(I{\mathrm{[A]}}\)(プラスの電荷の場合は速度\(v\)の向き、マイナスの電荷の場合は速度\(v\)と逆向きの向き)
ローレンツ力の公式・大きさ
次にローレンツ力の大きさについて説明します。
電気量\(+q{\mathrm{[C]}}\)の荷電粒子が速度\(v{\mathrm{[m/s]}}\)で磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)の磁場中を磁場と垂直な向きで運動している時、荷電粒子に働くローレンツ力\(F{\mathrm{[N]}}\)は次式となります。
ローレンツ力の公式
\begin{eqnarray}
F=qvB{\mathrm{[N]}}\tag{1}
\end{eqnarray}
また、磁場の向きと速度の向きの角度が\({\theta}\)の時、荷電粒子に働くローレンツ力\(F{\mathrm{[N]}}\)は次式となります。
ローレンツ力の公式(角度がθの時)
\begin{eqnarray}
F=qvB{\sin}{\theta}{\mathrm{[N]}}\tag{2}
\end{eqnarray}
上式よりローレンツ力\(F\)は電気量の大きさ\(q\)、速度\(v\)、磁束密度\(B\)に比例することが分かります。
また、角度\({\theta}\)が直角(\({\theta}=90°\))に近いほど\({\sin}{\theta}\)は\(1\)に近づきます。そのため、\({\sin}{\theta}\)は「磁場の向きと速度の向きが直角(\({\theta}=90°\))に近いほどローレンツ力が大きくなるよ!」ということを意味しています。
電荷粒子が磁場と垂直な向きに運動するときは『\({\theta}=90°\)』より『\({\sin}{\theta}=1\)』となるので、(2)式は『\(F=qvB\)』となり、(1)式と同じになります。
ローレンツ力による円運動
上図に示すように、電気量\(+q{\mathrm{[C]}}\)の荷電粒子が磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)の一様な磁場中に速度\(v{\mathrm{[m/s]}}\)で飛び込んだ時を考えてみます。なお、磁場の向きは表から裏に向かう向きとします。
この時、荷電粒子はローレンツ力\(F\)を受けて、等速円運動を行います。
この理由について説明します。
フレミングの左手の法則を用いると、速度\(v\)で飛び込んだ荷電粒子は左向きにローレンツ力\(F\)を受け、速度の向きが変わります。
荷電粒子は常に速度の向きと垂直な向きにローレンツ力\(F\)を受けます。そのため、速度の向きが変わると、ローレンツ力の向きも変わります。その結果、以下の流れが繰り返され、円運動を行います。
速度の向きが変わる→ローレンツ力の向きが変わる→速度の向きが変わる→ローレンツ力の向きが変わる→・・・
また、ローレンツ力の向きと速度の向きは常に垂直なので、ローレンツ力は速度の向きを変えるだけであり、荷電粒子の運動エネルギーは変化しません。そのため、荷電粒子の速度は変わらず等速となります。これらの理由により、荷電粒子は等速円運動を行います。
ここで、円の半径を\(r{\mathrm{[m]}}\)とすると、円運動の加速度\(a\)は\(a=\displaystyle\frac{v^2}{r}\)となるため、以下の運動方程式を立てることができます。
\begin{eqnarray}
ma&=&F\\
{\Leftrightarrow}m\frac{v^2}{r}&=&qvB\tag{3}
\end{eqnarray}
(3)式において、左辺を半径\(r\)のみに変形すると、次式となります。
\begin{eqnarray}
r=\frac{mv}{qB}\tag{4}
\end{eqnarray}
また、回転の周期(円を1周回る時間)\(T\)は、半径\(r\)の円周\(2{\pi}r\)、速度\(v\)なので次式となります。
\begin{eqnarray}
T=\frac{2{\pi}r}{v}=\frac{2{\pi}\displaystyle\frac{mv}{qB}}{v}=\frac{2{\pi}m}{qB}\tag{5}
\end{eqnarray}
(4)式より、半径\(r\)の大きさは以下のように変化することが分かります。
- 質量\(m\)が大きい→半径\(r\)が大きい
- 速度\(v\)が早い→半径\(r\)が大きい
- 電気量\(q\)が大きい→半径\(r\)が小さい
- 磁束密度\(B\)が大きい→半径\(r\)が小さい
質量\(m\)が重いほど、ローレンツ力\(F\)によって速度の向きが変化しにくい。
電気量\(q\)が大きいほど、ローレンツ力\(F=qvB\)が大きくなるため、半径が小さくなる。
磁束密度\(B\)が大きいほど、ローレンツ力\(F=qvB\)が大きくなるため、半径が小さくなる。
また、(5)式より円運動の周期\(T\)は質量\(m\)、電気量\(q\)、磁束密度\(B\)に依存するが、速度\(v\)には依存しないことが分かります。
ローレンツ力と電磁力の関係
次式のローレンツ力\(F_{L}\)と電磁力\(F_{E}\)の関係について説明します。
ローレンツ力と電磁力
\begin{eqnarray}
F_{L}&=&qvB{\mathrm{[N]}}\\
F_{E}&=&IBl{\mathrm{[N]}}
\end{eqnarray}
ローレンツ力\(F_{L}\)は電磁力\(F_{E}\)をミクロの世界でみた時の力となります。そのため、個々の荷電粒子が受けるローレンツ力\(F_{L}\)の総和が電磁力\(F_{E}\)となります。
上図のように長さ\(l{\mathrm{[m]}}\)、断面積\(S{\mathrm{[m^2]}}\)の導体が磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)の磁場中にあるとします。
導体に流れ散る電流の大きさを\(I{\mathrm{[A]}}\)、自由電子1個の電気量を\(-e{\mathrm{[C]}}\)、自由電子の速度を\(v{\mathrm{[m/s]}}\)、自由電子の単位体積(\({\mathrm{m^3}}\))あたりの個数(数密度と呼ばれる)を\(n{\mathrm{[個/m^3]}}\)とし、磁場の向きと導体が垂直であるとします。
この時、自由電子1個が受けるローレンツ力\(F_{L}\)の大きさは次式となります(\(q\)の箇所に\(e\)を代入します)。
\begin{eqnarray}
F_{L}&=&qvB\\
&=&evB{\mathrm{[N]}}\tag{6}
\end{eqnarray}
また、導体の体積\(V\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
V=Sl{\mathrm{[m^3]}}\tag{7}
\end{eqnarray}
したがって、導体の中にある自由電子の数\(N\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
N&=&n×V\\
&=&n×Sl\\
&=&nSl{\mathrm{[個]}}\tag{8}
\end{eqnarray}
電磁力\(F_{E}\)は導体の中にある自由電子が受けるローレンツ力\(F_{L}\)の総和なので、(6)式と(8)式を用いると、次式となります。
\begin{eqnarray}
F_{E}&=&F_{L}×N\\
&=&evB×nSl\\
&=&envS×Bl\tag{9}
\end{eqnarray}
一方、電流の大きさは『\(I=envS\)』なので、(9)式は次式に変換することができます。
\begin{eqnarray}
F_{E}&=&envS×Bl\\
&=&IBl{\mathrm{[N]}}\tag{10}
\end{eqnarray}
この流れによって、ローレンツ力\(F_{L}\)から電磁力\(F_{E}\)を導出することができます。
まとめ
この記事ではローレンツ力ついて、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- ローレンツ力とは
- ローレンツ力の『向き』
- ローレンツ力の『公式』と『大きさ』
- ローレンツ力による円運動
- ローレンツ力と電磁力の関係
お読み頂きありがとうございました。
当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。