トランスには、漏れインダクタンスと励磁インダクタンスがあります。分割巻きトランスの場合、コアのギャップの位置を調整することで漏れインダクタンスを調整することができます。
分割巻きトランスとは
分割巻きトランスとは、1次巻線と2次巻線を重ねず、分けて巻いてあるトランスです。一次巻線と二次巻線を分けて巻けるように、ボビンに仕切りがあります。一次巻線と二次巻線の結合度が弱いので、漏れインダクタンスが大きくなります。この時、コアの有無、ギャップの位置によって漏れインダクタンスを調整できるのがポイントです。
分割巻きトランスの漏れインダクタンスの値
上図に分割巻きトランスにおいて、ギャップがない場合、一次巻線と二次巻線の間にギャップがある場合、一次巻線の途中にギャップがある場合、そして重ね巻きトランスの場合の漏れインダクタンスの値を示しました。漏れインダクタンスの値は参考程度にしてください。
ギャップがない場合
漏れ磁束が少なく、漏れインダクタンスは一次インダクタンスの1/10くらいとなります。
一次巻線と二次巻線の間にギャップがある場合
ギャップから磁束が漏れます。漏れインダクタンスは一次インダクタンスの半分くらいとなります。
一次巻線の途中にギャップがある場合
ギャップから磁束が漏れますが、漏れた磁束同士が打ち消し合うため、一次巻線と二次巻線の間にギャップがある場合と比較すると、漏れインダクタンスが小さくなります。漏れインダクタンスは一次インダクタンスの1/5~1/3くらいになります。
重ね巻きトランスの場合
重ね巻きトランスは分割巻きトランスと比較すると、漏れインダクタンスが少ないのが特徴です。漏れインダクタンスは一次インダクタンスの1/10以下となります。
漏れインダクタンスが必要な時とは
漏れインダクタンスが必要な時はどのようなケースでしょうか?
フライバックコンバータやフォワードコンバータに用いられるトランスの漏れインダクタンスが大きい場合、半導体スイッチがオフの時にサージ電圧が発生してしまうため、漏れインダクタンスはない方が好ましいです。
しかし、LLCコンバータは共振インダクタとして漏れインダクタンスを利用するため、漏れインダクタンスが大きい方が好ましいです。そのため、LLCコンバータのトランスには分割巻きのトランスを使用するのが一般的です(重ね巻きトランスを使用する場合には、トランスの外部に、漏れインダクタンスに相当するインダクタを追加する必要があります)。