この記事では『ケルビン接続』について
- 『ケルビン接続』とは
- 『ケルビン接続』のパターン配線例
- LCRメータのアクセサリーの『ケルビンクリップ』とは
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
ケルビン接続とは
ケルビン接続とは抵抗測定における4端子法のことです。『電流が流れる配線』とは別に『電圧を測定する配線』を設け、『電圧を測定する配線』を負荷(抵抗など)に接続しています。
ケルビン接続をすることで、リード線の配線抵抗などによる電圧降下の影響を受けずに、負荷にかかる電圧を測定することができます。
ここで一例として、電源と負荷が接続された回路において、『ケルビン接続をしない場合』と『ケルビン接続をした場合』を考えてみましょう。
ケルビン接続をしない場合
電源から負荷までにはリード線の配線抵抗Rが存在します。
ケルビン接続をせず、電源の出力端に設定電圧VSETが印加されるようにフィードバック制御した場合、『出力電流IOUTと配線抵抗Rによる電圧降下RIOUT』により、負荷に印加される電圧VOUTが低くなります(VOUT=VSET-RIOUT)。
その結果、負荷に所望の設定電圧VSETを印加することができなくなります。
電源の出力電流IOUTが小さい場合には、『出力電流IOUTと配線抵抗Rによる電圧降下RIOUT』の影響は大きくありませんが、出力電流IOUTが大きくなると、『出力電流IOUTと配線抵抗Rによる電圧降下RIOUT』の影響が無視できなくなります。
ケルビン接続をした場合
この配線抵抗Rの影響を無視するためには、ケルビン接続が有効です。別途『電圧を測定する配線』を設けることによって、『電流が流れる配線』と『電圧を測定する配線』が分離します。
『電圧を測定する配線』を負荷の入力端に接続することにより、負荷の入力端に設定電圧VSETが印加されるようにフィードバック制御をすることができます。
このようにすることで、『出力電流IOUTと配線抵抗Rによる電圧降下RIOUT』が生じても、負荷に所望の設定電圧VSETを印加することが可能になります。特に低電圧大電流の回路や高精度を要する回路ではケルビン接続が有効です。
ケルビン接続のパターン配線例
ケルビン接続は電流検出抵抗RSにかかる電圧を検出するパターンに用いることがあります。上図にパターンの配線例を示しています。
電流検出抵抗RSに電流Iが流れると、電流検出抵抗RSにかかる電圧VSはVS=RSIとなります。『電流が流れる配線』と『電圧を測定する配線』を分離することで、パターンによる電圧降下の影響を無くすことができます。
補足
- ケルビン接続は英語では『Kelvin Connection』と書きます。
- 『電流が流れる配線』は『Force線』、『電圧を測定する配線』は『Sense線』と呼ばれています。
- ケルビン接続とは抵抗測定における4端子法のことです。抵抗測定には一般的には『2端子法』と『4端子法』があります。各方式の違いについては、以下の記事で詳しく説明していますので、ご参考になれば幸いです。
ケルビンの由来
ケルビン接続は考案者であるイギリスの物理学者『ケルビン卿ウィリアム・トムソン』が由来となっています。絶対温度の単位K(ケルビン温度)も彼の功績を称えて付けられています。
ケルビンクリップとは
LCRメータのアクセサリーにはケルビン接続(4端子接続)することができるケルビンクリップがあります。
ケルビンクリップは上図に示すような構成をしており、ケルビンクリップの先端のみが試料(抵抗など)に接触するような構成になっています。
具体的には、『電流が流れる配線(Force線)を接続するHC電極』と『電圧を測定する配線(Sense線)を接続するHP電極』が完全に絶縁されており、試料をHC電極とHP電極で挟み込むことによって、試料の箇所でのみHP電極とHC電極が接続されるようになっています(LP電極とLC電極についても同様です)。
このようにケルビンクリップを用いることによって、4端子接続を2つのクリップで手軽に行えるようになります。
まとめ
この記事では『ケルビン接続』について、以下の内容を説明しました。
- 『ケルビン接続』とは
- 『ケルビン接続』のパターン配線例
- LCRメータのアクセサリーの『ケルビンクリップ』とは
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