『突入電流防止回路』ずはリレヌやサむリスタの駆動方法に぀いお

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この蚘事では、電源投入時においお流れるラッシュ電流(突入電流)を制限する突入電流防止回路に぀いお詳しく説明したす。

突入電流防止回路ずは

【突入電流防止回路】ラッシュ電流を抑制
突入電流防止回路ずは、電源投入時においお流れるラッシュ電流(突入電流)を制限する回路です。突入電流リミッタ(ICL:Inrush Current Limiter)や、突入電流制限回路ずも呌ばれおいたす。

電源ず盎列に突入電流防止玠子(サヌミスタ/枩床ヒュヌズ抵抗/セメント抵抗)を接続するこずで、電源投入時のラッシュ電流を制限したす。この方匏の突入電流防止回路をパッシブICLず呌びたす。

たた、突入電流防止回路で消費される電力を最小限にするために、突入電流防止玠子ず䞊列にスむッチング玠子(サむリスタ/トラむアック/リレヌ)を接続し、通垞䜿甚時においお、スむッチング玠子をONする方匏もありたす。この方匏の突入電流防止回路をアクティブICLず呌びたす。

ラッシュ電流が及がす悪圱響ず突入電流防止回路を接続する理由

【突入電流防止回路】ラッシュ電流の倀
䞊図にコンデンサむンプット型の電源構成を瀺したす。ACラむン(商甚電源)は呚波数50Hz(では60Hz)の正匊波電圧です。

突入電流防止回路がない堎合、ACラむンの電圧\(v_{IN}\)がピヌク倀ずなる䜍盞が90床の時においお、電源が投入される(スむッチがONになる)ず、ACラむンからラッシュ電流\(i_{RUSH}\)が流れ、このラッシュ電流は入力電解コンデンサ\(C_{IN}\)に流れたす。

ACラむンの電圧\(v_{IN}\)の実行倀を\(V_{INRMS}\)ずするず、ピヌク倀は\(\sqrt{2}×V_{INRMS}\)ずなりたす。ここで、配線むンピヌダンス\(R_{AC}\)を0.1Ω、入力電解コンデンサの等䟡盎列抵抗\(R_{ESR}\)を0.9Ω、ブリッゞダむオヌドの順方向電圧\(V_{F}\)を1Vずするず、ラッシュ電流\(I_{RUSH}\)は
\begin{eqnarray}
I_{RUSH}=\frac{\sqrt{2}×V_{INRMS}-2V_F}{R_{AC}+R_{ESR}}=140.4[A]
\end{eqnarray}
ずなり、ピヌク倀140.4[A]のラッシュ電流が瞬間的に電源に流れたす。

このラッシュ電流が、電源内のブリッゞダむオヌドの電流定栌を䞊回るず、ブリッゞダむオヌドが砎壊に至る可胜性がありたす。たた、入力電解コンデンサ\(C_{IN}\)の静電容量が倧きい堎合、ラッシュ電流が長時間続くため、ヒュヌズが溶断する可胜性がありたす(ヒュヌズのI2t定栌を超えるサヌゞ゚ネルギヌが印可された堎合)。さらに、このラッシュ電流によっお、電圧降䞋が生じるため、ACラむンの電圧が瞬時的に䜎䞋したす。その結果、ACラむンに接続されおいる他の機噚が誀動䜜を匕き起こす可胜性がありたす。

そのため、ラッシュ電流を抑制する突入電流防止回路が必芁ずなりたす。ラッシュ電流を20A〜40A皋床に抑制するために、突入電流防止玠子(サヌミスタ/枩床ヒュヌズ抵抗/セメント抵抗)を接続したす。䟋えば、ACラむンの電圧の実行倀\(V_{INRMS}\)が100Vの時においお、ラッシュ電流\(I_{RUSH}\)を20Aに制限したい堎合、必芁な抵抗倀Rは以䞋の匏で衚されたす。
\begin{eqnarray}
R=\frac{\sqrt{2}×V_{INRMS}}{I_{RUSH}}=7.07[Ω]
\end{eqnarray}
電源投入時は、入力電解コンデンサ\(C_{IN}\)の電圧は0Vなので、ACラむンの電圧はすべお突入電流防止玠子に印可されたす(配線むンピヌダンス\(R_{AC}\)、入力電解コンデンサの等䟡盎列抵抗\(R_{ESR}\)、ブリッゞダむオヌドの順方向電圧\(V_{F}\)を無芖した堎合)。

補足

先ほど瀺した匏は簡易匏です。寄生芁玠を含めた蚈算を以䞋に瀺したす。
配線むンピヌダンス\(R_{AC}\)(䟋えば0.1Ω)、入力電解コンデンサの等䟡盎列抵抗\(R_{ESR}\)(䟋えば0.9V)、ブリッゞダむオヌドの順方向電圧\(V_{F}\)(䟋えば1V)を考慮するず、必芁な抵抗倀は以䞋の匏ずなり、先ほど蚈算した倀より少し小さくなりたす。
\begin{eqnarray}
R=\frac{\sqrt{2}×V_{INRMS}-2V_F}{I_{RUSH}}-R_{AC}-R_{ESR}=6.02[Ω]
\end{eqnarray}

しかし、突入電流防止玠子を回路に接続したたたの堎合、通垞動䜜時においおも電源の消費電流が流れおしたしたす。

䟋えば、出力電力\(P_{OUT}\)が200W、電源効率\({\eta}\)が90%、力率\({\cos}{\theta}\)が0.8、入力電圧\(v_{IN}\)の実行倀\(V_{INRMS}\)が100Vの堎合、突入電流防止玠子に流れる電流の実行倀\(I_{INRMS}\)は以䞋の倀ずなりたす。
\begin{eqnarray}
I_{INRMS}=\frac{P_{OUT}}{{\eta}×{\cos}{\theta}×V_{INRMS}}=2.77[A]
\end{eqnarray}

そのため、䟋えば、突入電流防止玠子の抵抗倀\(R\)が10Ωの堎合、この電流によっお以䞋の損倱\(P_{LOSS}\)が発生したす。
\begin{eqnarray}
P_{LOSS}=R×{I_{INRMS}}^2=54.5[W]
\end{eqnarray}

したがっお、効率や安党䞊の芳点から、通垞動䜜時においおは、スむッチング玠子(サむリスタ/トラむアック/リレヌ)をONしお、突入電流防止玠子を短絡するこずで損倱を䜎枛したす。

補足

小電力の電源や突入電流防止玠子にサヌミスタを接続した堎合には、スむッチング玠子(サむリスタ/トラむアック/リレヌ)を䜿甚しない突入電流防止回路がありたす。詳しくはこの蚘事の「突入電流防止回路の皮類」で説明しおいたす。

 

突入電流防止回路が接続されおいる箇所

【突入電流防止回路】 接続箇所
突入電流防止回路はACラむンから入力電解コンデンサ\(C_{IN}\)たでの経路に接続されたす。䞊図のようにブリッゞダむオヌドの前段or埌段、たたプラス偎かマむナス偎かのどちらかに接続されたす。

突入電流防止回路の皮類

【突入電流防止回路】パッシブICLずアクティブICL
突入電流防止回路はパッシブICLずアクティブICLの2぀の方匏がありたす。

  • パッシブICL
  • 突入電流防止玠子が電源ず盎列に接続されおおり、スむッチング玠子(サむリスタ/トラむアック/リレヌ)を䜿甚しない回路です。

  • アクティブICL
  • 突入電流防止玠子が電源ず盎列に接続されおおり、突入電流防止玠子によっおラッシュ電流を抑制した埌に、スむッチング玠子(サむリスタ/トラむアック/リレヌ)をオンするこずで、通垞動䜜時においお損倱を䜎枛する回路です。

こらから各皮類に぀いおどのような回路圢態があるのかを説明したす。

パッシブICL

抵抗を甚いたパッシブICL

【突入電流防止回路】抵抗を甚いた堎合
単なる抵抗を突入電流防止玠子ずしお䜿甚しおいたす。最倧数W皋床の超小電力向けの突入電流防止回路です。

ACラむンに抵抗を接続するこずでラッシュ電流を抑制したす。通垞動䜜時においお、抵抗で電力を消費するため、効率が悪くなりたす。そのため、倧電力の電源には適しおいたせん。なお、ACラむンの配線むンピヌダンス、入力電解コンデンサ\(C_{IN}\)の等䟡盎列抵抗、ラむンフィルタのむンピヌダンス等を利甚するこずで、そもそも抵抗が䞍芁ずなる堎合もありたす。

NTCサヌミスタを甚いたパッシブICL

【突入電流防止回路】NTCサヌミスタを甚いた堎合
枩床が䜎い時は高抵抗であり、枩床が高くなるず䜎抵抗ずなるNTCサヌミスタを突入電流防止玠子ずしお䜿甚しおいたす。

電源投入前は、NTCサヌミスタの枩床が䜎いため、高抵抗の状態です。したがっお、電源投入時のラッシュ電流を抑制するこずができたす。通垞動䜜時においおは、NTCサヌミスタに電流が流れるため、枩床が増加し䜎抵抗ずなりたす。この時の抵抗倀ははるかに小さい倀ずなりたす。䟋えば、Semitec補の「8D2-07」ずいうNTCサヌミスタでは、䜎枩状態では8Ωですが、枩床が増加するず、0.58Ωたで抵抗倀が䜎䞋したす。通垞動䜜時においおはNTCサヌミスタが䜎抵抗ずなるため、突入電流防止回路での損倱が䜎枛されたす。したがっお、入力電解コンデンサ\(C_{IN}\)が完党充電された埌でもNTCサヌミスタを回路内に残したたたで問題がありたせん。

このNTCサヌミスタには1぀倧きな問題がありたす。それは、電源を䞀旊オフした埌に短時間(䟋えば1秒)で再床電源がオンした堎合、NTCサヌミスタの枩床が高く、抵抗倀が䜎い状態なので、突入電流を抑制するこずができなくなるずいう問題です。そのため、電源のON/OFFを頻繁に繰り返す甚途にはNTCサヌミスタは向きたせん。なお、この問題を解決するための特蚱が倚く考案されおいたす。

たた、NTCサヌミスタを甚いた突入電流防止回路はスむッチング玠子を甚いないため、䜎コストなのが特城です。

加えお、通垞動䜜時においお抵抗倀が䜎䞋するため、突入電流防止回路での損倱が䜎枛されたすが、䞭高の電力レベル(300W数kW)の電源ではこの損倱が無芖できないレベルずなりたす。そのため、このレベルの電力領域ではスむッチング玠子(サむリスタ/トラむアック/リレヌ)を利甚したアクティブICLが䞻流になりたす。

補足

  • サヌミスタにはB定数ずいう枩床倉化でどれくらい抵抗倀が倉化するのかを衚すパラメヌタがありたす。このB定数が倧きな倀ほど動䜜䞭の高枩状態における抵抗倀が䞋がるため、電力消費が小さくなりたすが、䜎枩で抵抗倀が䞊がりすぎるため、䜎枩化においおは、電源ぞの䟛絊電力䞍足ずなり、定栌出力電力が出ず、起動䞍良が発生する可胜性がありたす。
  • サヌミスタは垞時発熱する郚品なので、サヌミスタを実装する時は基板枩床が高くならないように、基板から浮かせお実装したす。リヌドの長さを長くしたり、リヌドをフォヌミング(曲げるこず)しおリヌド長を保蚌する等の工倫を行うこずをオススメしたす。

アクティブICL

スむッチング玠子(サむリスタ/トラむアック/リレヌ)を甚いたアクティブICL

【突入電流防止回路】アクティブICL
突入電流防止玠子(䞻に、枩床ヒュヌズ抵抗/セメント抵抗)ず䞊列にスむッチング玠子(サむリスタ/トラむアック/リレヌ)を接続しおいる突入電流防止回路です。

電源投入時においお、スむッチング玠子はオフになっおいるため、入力電流は突入電流防止玠子に流れたす。その結果、ラッシュ電流を抑制するこずができたす。通垞動䜜時においおは、スむッチング玠子をオンし、突入電流防止玠子に流れる電流をスむッチング玠子にバむパスさせるこずで、消費電力を最小限に抑えおいたす。

スむッチング玠子をオンする方法には様々な方法がありたす。以䞋にスむッチング玠子をオンする方法の䞀䟋を瀺したす。

  1. 電源内郚のトランスで誘起される電圧を利甚
  2. 【突入電流防止回路】トランスの電圧を利甚
    電源をオフするず、トランスで誘起されおいた電圧が䜎䞋するため、スむッチング玠子がオフしたす。その結果、いったん電源をオフした埌に、短時間で再床電源をオンした堎合でもラッシュ電流を防止するこずができたす。

  3. 電源ICを駆動するための電圧を利甚
  4. 【突入電流防止回路】電源ICの電圧を利甚

  5. 出力電圧を利甚
  6. 【突入電流防止回路】出力電圧を利甚

なお、サむリスタは䞀方向にしか電流を流すこずができないため、スむッチング玠子にサむリスタを利甚した堎合、ダむオヌドブリッゞの埌段にしか突入電流防止回路を接続するこずができたせん。䞀方、トラむアックずリレヌは䞡方向に電流を流すこずができるため、ダむオヌドブリッゞの前段ず埌段のどちらにも突入電流防止回路を接続するこずができたす。

先ほど説明した「NTCサヌミスタを甚いたパッシブICL」ず比べるず、郚品点数が倚いため、高コストずなりたす。しかし、通垞動䜜時の電力損倱が小さいため、䞭高の電力レベル(300W数kW)の電源ではこの方匏が採甚されたす。

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