IGBTの『テール電流』とは?

スポンサーリンク

この記事ではIGBTの『テール電流』について

  • IGBTの『テール電流』とは
  • IGBTに『テール電流』が流れる原理

などを図を用いて分かりやすく説明しています。

IGBTの『テール電流』とは

IGBTの『テール電流』について
上図にMOSFETとIGBTのターンオフ時の波形を示します。

IGBTではターンオフの後半に電流が流れ出ている期間があります。この期間をテール期間(ttail)といい、その時に流れている電流をテール電流と呼びます。ターンオフ時のコレクタ電流ICの波形が“しっぽ(テール)“に似ていることからテール電流と呼ばれています。

テール電流は英語では「Tail Current」と書きます。

このテール電流によってターンオフ時間が長くなり、かつ、ターンオフ損失が増加します。

IGBTについては以下の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。

IGBTの『テール電流が流れる原理

IGBTの『テール電流が流れる原理
IGBTの構造を上図に示します。

IGBTはオン状態において、高抵抗のN-ドリフト層P+コレクタ層のキャリア(正孔)が注入することで、N-ドリフト層の抵抗値が低下する伝導度変調を利用しています。

この伝導度変調によって、IGBTのオン状態におけるON電圧が小さくなります。しかし、逆にターンオフ時にはN-ドリフト層に蓄積されたキャリアを吐き出す必要があります。

ターンオフ時におけるN-ドリフト層に蓄積されたキャリアの吐き出しは、初期過程は外部回路によって素早く行われますが、IGBTのコレクタ-エミッタ間電圧VCEが立ち上がった後は、N-ドリフト層に蓄積されたキャリアが再結合で消滅するまで電流が流れます。この電流がテール電流であり、キャリアが再結合で消滅するまでにかかる時間がテール期間となります。

高抵抗のN-ドリフト層P+コレクタ層のキャリア(正孔)が注入することによって、IGBTのオン状態におけるON電圧が小さくなりますが、逆に、テール電流が流れるようになります。すなわち、IGBTではON電圧ターンオフ時のスイッチング損失がトレードオフの関係にあります。このトレードオフをいかに改善するかがIGBTの特性向上のポイントになります。

伝導度変調については以下の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。

補足

テール電流を減らすためには、「N-ドリフト層にわざと欠陥を作り、ライフタイムを短くすることでキャリアの消滅速度を速める」、「P+コレクタ層からのホール注入量を抑制する」等があります。内容が少し難しくなりますので、詳しくは専門書等を参考にしてください。

まとめ

この記事ではIGBTの『テール電流』について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • IGBTの『テール電流』について
  • IGBTに『テール電流』が流れる原理

お読み頂きありがとうございました。

当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。

全記事一覧

スポンサーリンク