この記事では高調波について
- 高調波とは
- 高調波の『発生原因』
- 高調波の『影響・問題』
- 高調波の『対策』
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
高調波とは
高調波とは『交流の基本波に対する整数倍の周波数成分をもつ波形』のことです。
基本波の3倍の周波数をもつ正弦波成分を「第3次高調波」、5倍の周波数をもつ正弦波成分を「第5次高調波」、N倍の周波数をもつ正弦波成分を「第N次高調波」といいます。
また、基本波は『商用電源の周波数』であり、東日本では50Hz、西日本では60Hzとなります。
そのため、商用電源の周波数が50Hzの場合、第3次高調波は150Hz(50Hz×3)、第5次高調波は250Hz(50Hz×5)の正弦波成分となります。
上図は50Hzの基本波に対して、第3次高調波を30%、第5次高調波を10%足し合わせた時の波形です。基本波に高調波成分が加わると、波形に歪みが生じます。
後ほど詳しく説明しますが、この高調波成分により、コンデンサ焼損、皮相電力の増加等の問題が生じます。そのため、高調波には規格(国際的にはIEC 61000-3-2、国内ではJIS C 61000-3-2)があり、「第N次高調波の限度値は〇Aまで」と決められています。
高調波とノイズの違い
高調波と似ている現象に「ノイズ」があります。
ノイズは単発的に発生し、商用電源の周波数(50Hz,60Hz)と同期しません。
一方、高調波は商用電源の周波数に同期します。分かりやすく説明すると以下の表となります。
項目 | 高調波 | ノイズ |
特徴 | 商用電源の周波数(50Hz,60Hz)と同期する。 | 単発的に発生し、商用電源の周波数(50Hz,60Hz)と同期しない。 |
周波数 | 一般には基本波の40次程度までの周波数である(商用電源の周波数が50Hzの場合は2kHz程度まで、60Hzの場合は2.4kHz程度まで) | 150kHz以上 |
高調波と高周波の違い
高調波とは『交流の基本波に対する整数倍の周波数成分をもつ波形』であり、一般的には基本波の40次程度までの周波数なので、商用電源の周波数が50Hzの場合は2kHz程度までの周波数となります。
一方、高周波とはその名の通り、高い周波数のことです。特に何Hzからという決まりはありませんが、2kHzを超える周波数を高周波ということが多いそうです。
高調波の発生原因
高調波の発生原因としては、以下の一例に示すように様々あります。
- パソコンやテレビなどに搭載されている『コンデンサインプット型の整流回路』
- こたつや調光器などに搭載されている『トライアック位相制御回路』
- 変圧器の磁気飽和現象による『ひずみ波電流』
- アーク炉の『アーク電流』
高調波の対策
高調波の対策としては、以下の一例に示すように様々あります。
- 『チョークインプット型の整流回路』にする
- 入力電解コンデンサの前段に『PFC回路(力率改善回路)』をつける
- 『進相コンデンサ』と『直列リアクトル』を組み合わせて電源波形を改善する
高調波による影響・問題
高調波が発生することで以下の一例に示すような影響・問題が発生します。
- 進相コンデンサに高調波電流が流れることによる燃損
- 電気機器の入力電圧が下がることによって、スイッチング電源が正常に動作しない
- 皮相電力が大きくなる
- トランスのうなる
- ステレオに雑音が発生する
- テレビの画面がちらつく
- ヒューズが溶断する
- リアクトルが焼損する
- 電気機器が誤動作する
コンデンサのインピーダンス\(Z_C\)は以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
Z_C=\frac{1}{2{\pi}fC}
\end{eqnarray}
そのため、周波数\(f\)が高いほどインピーダンス\(Z_C\)が小さくなります。したがって、以下の流れでコンデンサが焼損する可能性があります。
コンデンサの焼損の流れ
高調波電流が流れる→高調波は商用電源の周波数(50Hz,60Hz)より高い→コンデンサのインピーダンスが小さい→コンデンサに流れる電流が大きくなる→コンデンサが焼損する
電源ラインにはインピーダンスが存在しています。高調波電流が流れることにより、そのインピーダンスによって電圧降下が発生します。その結果、スイッチング電源の入力電圧が高調波を含んだ波形となり、入力電圧が下がります。
高調波電流が多い機器は力率が低いため、皮相電力が大きくなります。そのため、入力電流が大きくなり、電力設備に余裕が必要となります。
高調波の規格
高調波には規格があり、規格では「第N次高調波の限度値は〇Aまで」と決められています。
この高調波の限度値に関する規格は世界的には国際的には「IEC 61000-3-2」、国内では「JIS C 61000-3-2」、中国では「中国強制認証制度(CCC)」に規定されています。詳しくは各規格を参照してください。
まとめ
この記事では高調波ついて、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 高調波とは
- 高調波の『発生原因』
- 高調波の『影響・問題』
- 高調波の『対策』
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