製品の信頼性を表す品質用語にFIT・MTBF・MTTF・MTTRがあります。
各用語の意味は下記となっています(後ほど各用語について詳しく説明します)。
- FIT(Failure In Time)
- MTBF(Mean Time Between Failure)
- MTTF(Mean Time To Failure)
- MTTR(Mean Time To Repair)
製品の故障率を表す単位のこと。
製品の平均故障間隔のこと。ある製品が稼働してから(または故障から復旧してから)、故障するまでの時間を示している。
製品の平均故障時間のこと。ある製品が稼働してから、故障するまでの時間を示している。
製品の平均修理時間のこと。ある製品が故障してから、復旧するまでの時間を示している。
この記事では上記に示しているFIT・MTBF・MTTF・MTTRについて図を用いて詳しく説明します。
FITとは
FITとは製品の故障率を表す単位です。10億時間(109時間,約11万4155年)あたりの平均故障回数を表しています。10[FIT]の製品は10億時間あたり平均10個故障するということになります。「Failure In Time」の頭文字を取ってFITと呼ばれています。
単位である[FIT]を[個/109時間]に置き換えると計算が理解しやすくなります。
例えば、10[FIT](=10[個/109時間])の製品は、1億時間(108[時間])稼働すると平均1個故障するということなります。式で表すと次式のようになります。
\begin{eqnarray}
故障数&=&10{\mathrm{[FIT]}}×10^8{\mathrm{[時間]}}\\
\\
&=&10{\mathrm{[個/10^9時間]}}×10^8{\mathrm{[時間]}}\\
\\
&=&10^{-8}{\mathrm{[個/時間]}}×10^8{\mathrm{[時間]}}\\
\\
&=&1{\mathrm{[個]}}
\end{eqnarray}
また、1[FIT]は換算すると以下に示すように[%/1000h]や[ppm/1000h]の単位で表すこともできます。
\begin{eqnarray}
1{\mathrm{[FIT]}}&=&1{\mathrm{[個/10^9時間]}}\\
\\
&=&10^{-9}{\mathrm{[個/時間]}}\\
\\
&=&10^{-4}{\mathrm{[{\%}/1000h]}}\\
\\
&=&1{\mathrm{[ppm/1000h]}}
\end{eqnarray}
補足
- [FIT]の単位は半導体製品などの大量に生産され、故障率が極めて低い製品によく用いられています。また、[FIT]の単位以外にも[%/1000h]や[ppm/1000h]等も用いられることがあります。
- 製品1つを10億時間稼働させて故障を監視することは現実的にはできないので、実際には複数の同一製品を一定期間同時に稼働させ、その間に故障した製品の数からFITを求めています。
- 故障率が10FITであるということは、故障する確率が1億時間(108時間)で1個ということであり、製品の寿命が1億時間(108時間)ではないことに注意してください。
- 故障率の記号にはλ(ラムダ)を用いるのが一般的です。
では次にFITに関する計算例を説明します。
FITに関する計算(その1)
市場で10,000台の製品が100時間稼働しており、その間に故障した製品数が10個だった場合の故障率λ[FIT]を求めてみましょう。
この製品の総稼働時間は以下の値となります。
\begin{eqnarray}
総稼働時間&=&10,000×100{\mathrm{[時間]}}\\
\\
&=&10^6{\mathrm{[時間]}}
\end{eqnarray}
したがって、故障率λ[FIT]は下記の値となります。
\begin{eqnarray}
故障率{\lambda}&=&\frac{製品の故障数{\mathrm{[個]}}}{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}\\
\\
&=&\frac{10{\mathrm{[個]}}}{10^6{\mathrm{[時間]}}}\\
\\
&=&10^{-5}{\mathrm{[個/時間]}}\\
\\
&=&10^{-5}×10^9{\mathrm{[個/10^9時間]}}\\
\\
&=&10^4{\mathrm{[個/10^9時間]}}\\
\\
&=&10^4{\mathrm{[FIT]}}
\end{eqnarray}
FITに関する計算(その2)
10[FIT]の部品が1,000個搭載された製品の故障率λ[FIT]を求めてみましょう。
各部品の故障率の合計が製品全体の故障率になります。したがって、部品数が多くなるほど製品の故障率が上昇します。式で表すと以下の値になります。
\begin{eqnarray}
故障率{\lambda}&=&10{\mathrm{[FIT]}}×1,000\\
\\
&=&10{\mathrm{[個/10^9時間]}}×1,000\\
\\
&=&10^4{\mathrm{[個/10^9時間]}}\\
\\
&=&1{\mathrm{[個/10^5時間]}}
\end{eqnarray}
したがって、10[FIT]の部品が1,000個搭載された製品の場合、100,000(105時間)あたりに平均1個故障するということになります。
FIT・MTBF・MTTF の関係と換算方法
製品の信頼性を表す品質用語には、FIT以外にもこの後に説明するMTBF(修理可能なもの)やMTTF(修理不可能なもの)があります。
FITはMTBFやMTTFの逆数に10億(109)を掛けたものに等しくなります。式で表すと以下のようになります。
FIT・MTBF・MTTF の関係
\begin{eqnarray}
故障率{\lambda}&=&\frac{1}{MTBF}×10^9{\mathrm{[FIT]}}\\
\\
&=&\frac{1}{MTTF}×10^9{\mathrm{[FIT]}}
\end{eqnarray}
MTBFとは
MTBFとは製品の平均故障間隔のことです。「Mean Time Between Failure」の頭文字を取ってMTBFと呼ばれています。
MTBFは製品の総稼働時間を故障数で割ることで求めることができます。式で表すと次式のようになります。
\begin{eqnarray}
MTBF=\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}
\end{eqnarray}
例えば、上図に示す製品Aが下記に示すような稼働と修理を行っていたとします。
- 1,100時間稼働して故障し、10時間修理
- 修理後1,000時間稼働して故障し、8時間修理
- 修理後900時間稼働して故障し、12時間修理
製品AのMTBFを計算すると以下の値になります。
\begin{eqnarray}
MTBF&=&\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}\\
\\
&=&\frac{1,100+1,000+900}{3}\\
\\
&=&\frac{3,000}{3}\\
\\
&=&1,000
\end{eqnarray}
したがって、MTBFが1,000時間である製品Aは『1,000時間稼働すると平均1個故障する』ということなります。ゆえに、MTBFが長ければ長いほど製品の信頼性が高いということになります。
このMTBFは単位を[時間/個]と考えると計算が理解しやすくなります。
例えば、MTBFが10,000時間(104時間)の製品を100,000時間(105時間)稼働すると、平均10個故障するということになります。式で表すと次式のようになります。
\begin{eqnarray}
故障数&=&\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{MTBF{\mathrm{[時間/個]}}}\\
\\
&=&\frac{10^5{\mathrm{[時間]}}}{10^4{\mathrm{[時間/個]}}}\\
\\
&=&10{\mathrm{[個]}}
\end{eqnarray}
では次にMTBFに関する計算例を説明します。
MTBFに関する計算
MTBFが500,000時間の製品が市場で10,000台稼働している時、100時間あたりに準備しなければならない製品の数を求めてみましょう。
この製品の総稼働時間は以下の値となります。
\begin{eqnarray}
総稼働時間&=&10,000×100{\mathrm{[時間]}}\\
\\
&=&10^6{\mathrm{[時間]}}
\end{eqnarray}
そのため、市場で故障する推定個数は以下の値となります。
\begin{eqnarray}
故障数&=&\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{MTBF{\mathrm{[時間/個]}}}\\
\\
&=&\frac{10^6{\mathrm{[時間]}}}{5×10^5{\mathrm{[時間/個]}}}\\
\\
&=&2{\mathrm{[個]}}
\end{eqnarray}
したがって、MTBFが500,000時間の製品が市場で10,000台稼働している時、100時間あたりに最低2台の代替品を用意しておく必要があります。
このように、MTBFは市場で稼働している製品の準備数を決定するためにも用いられています。
MTBFからFITに換算する方法
MTBFの単位を[時間/個]と考えると、MTBFとFITの関係が分かりやすくなります。
繰り返しになりますが、MTBFは次式で表すことができます。
\begin{eqnarray}
MTBF=\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}
\end{eqnarray}
しがたって、MTBFの逆数は次式となります。
\begin{eqnarray}
\frac{1}{MTBF}=\frac{故障数{\mathrm{[個]}}}{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}
\end{eqnarray}
1/MTBF[個/時間]は1時間あたりの平均故障回数を示しています。一方、FITは10億時間(109時間)あたりの平均故障回数を示しています。
そのため、1/MTBFに10億(109)を掛けることでFITに換算することができます。式で表すと以下のようになります。
\begin{eqnarray}
故障率{\lambda}&=&\frac{1}{MTBF}×10^9{\mathrm{[FIT]}}
\end{eqnarray}
MTTFとは
MTTFとは製品の平均故障時間のことです。「Mean Time To Failure」の頭文字を取ってMTTFと呼ばれています。
先ほど説明したMTBFと同様にMTTFも製品の総稼働時間を故障数で割ることで求めることができます。式で表すと次式のようになります。
\begin{eqnarray}
MTTF=\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}
\end{eqnarray}
例えば、ある製品3つ(製品A~C)が下記に示すような故障時間だったとします。
- 製品A:1,100時間
- 製品B:1,000時間
- 製品C:900時間
この製品のMTTFを計算すると以下の値になります。
\begin{eqnarray}
MTTF&=&\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}\\
\\
&=&\frac{1,100+1,000+900}{3}\\
\\
&=&\frac{3,000}{3}\\
\\
&=&1,000
\end{eqnarray}
したがって、MTTFが1,000時間である製品は『1,000時間稼働すると平均1個故障する』ということなります。ゆえに、MTTFが長ければ長いほど製品の信頼性が高いということになります。
MTTFとMTBFの違い
MTTFとMTBFは似ていますが、これらの違いはご存知でしょうか。
MTTFは修理できない製品(電球など)に対して使われます。一方、MTBFは修理できる製品(家電製品など)に対して使われます。まとめると下記のようになります。
- MTTF:平均故障期間
- MTBF:平均故障間隔
ある製品が稼働してから、故障するまでの時間のこと。
ある製品が稼働してから(または故障から復旧してから)、次に故障するまでの時間のこと。
このように『修理できないか(MTTF)』or『修理できるか(MTBF)』の違いだけなので、MTTFはMTBFと同様の計算で求めることができます。そのため、MTTFの計算例については割愛します。
MTTFからFITに換算する方法
MTTFの単位を[時間/個]と考えると、MTBFとFITの関係が分かりやすくなります。
繰り返しになりますが、MTTFは次式で表すことができます。
\begin{eqnarray}
MTTF=\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}
\end{eqnarray}
しがたって、MTTFの逆数は次式となります。
\begin{eqnarray}
\frac{1}{MTTF}=\frac{故障数{\mathrm{[個]}}}{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}
\end{eqnarray}
1/MTTF[個/時間]は1時間あたりの平均故障回数を示しています。一方、FITは10億時間(109時間)あたりの平均故障回数を示しています。
そのため、1/MTTFに10億(109)を掛けることでFITに換算することができます。式で表すと以下のようになります。
\begin{eqnarray}
故障率{\lambda}&=&\frac{1}{MTBF}×10^9{\mathrm{[FIT]}}
\end{eqnarray}
MTTRとは
MTTRとは製品の平均修理時間のことです。「Mean Time To Repair」の頭文字を取ってMTTRと呼ばれています。
MTTRは製品の総修理時間を故障数で割ることで求めることができます。式で表すと次式のようになります。
\begin{eqnarray}
MTTR=\frac{製品の総修理時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}
\end{eqnarray}
例えば、上図に示す製品Aが下記に示すような稼働と修理を行っていたとします。
- 1,100時間稼働して故障し、10時間修理
- 修理後1,000時間稼働して故障し、8時間修理
- 修理後900時間稼働して故障し、12時間修理
そのため、製品AのMTTRを計算すると以下の値になります。
\begin{eqnarray}
MTTR&=&\frac{製品の総修理時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}\\
\\
&=&\frac{10+8+12}{3}\\
\\
&=&\frac{30}{3}\\
\\
&=&10
\end{eqnarray}
したがって、MTTRが10時間である製品Aは『1回修理するのに平均10時間要する』ということになります。ゆえに、MTTRが短ければ短いほど製品の稼働率を長くすることができます。
稼働率(アベイラビリティ)とは
稼働率(アベイラビリティ,Availability)とはその名の通り、製品の総時間(総稼働時間+総修理時間)において、製品がどれくらい稼働しているかを表したものです。
稼働率は総稼働時間を総時間(総稼働時間+総修理時間)で割ることで求めることができます。また、先ほど説明したMTBFとMTTRを用いても稼働率を計算することができます。式で表すと次式のようになります。
\begin{eqnarray}
稼働率&=&\frac{総稼働時間}{総稼働時間+総修理時間}\\
\\
&=&\frac{MTBF}{MTBF+MTTR}\\
\end{eqnarray}
そのため、平均修理時間(MTTR)がゼロに近いほど、稼働率が向上します。
例えば、上図に示す製品Aが下記に示すような稼働と修理を行っていたとします。
- 1,100時間稼働して故障し、10時間修理
- 修理後1,000時間稼働して故障し、8時間修理
- 修理後900時間稼働して故障し、12時間修理
上記の場合、製品AのMTBFとMTTRは以下の値となります。
\begin{eqnarray}
MTBF&=&\frac{製品の総稼働時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}=\frac{1,100+1,000+900}{3}=1,000\\
\\
MTTR&=&\frac{製品の総修理時間{\mathrm{[時間]}}}{故障数{\mathrm{[個]}}}=\frac{10+8+12}{3}=10
\end{eqnarray}
そのため、製品Aの稼働率を計算すると以下の値になります。
\begin{eqnarray}
稼働率&=&\frac{MTBF}{MTBF+MTTR}\\
\\
&=&\frac{1,000}{1,000+10}\\
\\
&=&0.99
\end{eqnarray}
なお、製品の総時間(総稼働時間+総修理時間)を用いても同じ値となります。計算すると以下の値になります。
\begin{eqnarray}
稼働率&=&\frac{総稼働時間}{総稼働時間+総修理時間}\\
\\
&=&\frac{3,000}{3,000+30}\\
\\
&=&0.99
\end{eqnarray}
まとめ
この記事では、製品の信頼性を表す品質用語であるFIT・MTBF・MTTF・MTTRについて説明しました。
お読み頂きありがとうございました。
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