電解コンデンサの極性を間違えて逆にして使用したら、「プシュー」という音がして臭い匂いがしたという経験をしたことがあるでしょうか。
この記事では、電解コンデンサに『逆電圧』を印加した場合に生じる現象や、逆耐圧が低い理由や、逆耐圧の大きさ等を説明します。
まずアルミ電解コンデンサの電流-電圧特性から
上図はアルミ電解コンデンサに電圧を印加した時の電流-電圧特性の一例です。縦軸が漏れ電流[uA]、横軸が印加電圧[V]となっています。
上図より、アルミ電解コンデンサの極性に対して順電圧VCFを印加した場合、順電圧VCFが定格電圧を超えると漏れ電流ICFが急激に大きくなります。一方、アルミ電解コンデンサの極性に対して逆電圧VCRを印加すると、1~2V程度の低い逆電圧VCRで大きな漏れ電流ICRが流れていることが分かります。これより、アルミ電解コンデンサに逆電圧を印加することはNGというのが分かります。
補足
電解コンデンサの極性を逆にして『逆電圧』を印加した場合
アルミ電解コンデンサに逆電圧を印加すると大きな漏れ電流が流れるほか、
- コンデンサ容量の低下
- 損失角の正接(tanδ)の増加
- 防爆弁(圧力弁)の作動orコンデンサの破裂
が生じます。
これから各項目について説明します。
コンデンサ容量の低下
アルミ電解コンデンサに逆電圧を印加する(アルミ電解コンデンサの陰極部に電圧を印加する)と、漏れ電流が流れ、陰極箔と電解液中の水分が電気分解されます。この電気分解によって発生した酸素と陰極箔が反応し、陰極箔の表面に酸化皮膜が生成されます。陰極箔の表面に酸化皮膜が生成されたことによって、陰極箔の容量が低下します。コンデンサの容量は陽極箔と陰極箔の合成容量なので、コンデンサの容量が低下することになります。
損失角の正接(tanδ)の増加
アルミ電解コンデンサに逆電圧を印加する(アルミ電解コンデンサの陰極部に電圧を印加する)と、電解液が消費するため、損失角の正接(tanδ)が増加します。
補足
防爆弁(圧力弁)の作動orコンデンサの破裂
アルミ電解コンデンサに逆電圧を印加する(アルミ電解コンデンサの陰極部に電圧を印加する)と、逆電圧VCRと、漏れ電流ICRによる電力損失(W=VCR×ICR)が発生し、コンデンサが発熱します。また、「コンデンサ容量の低下」で説明した陰極箔と電解液中の水分が電気分解によって、コンデンサ内部ではガスが発生します。
この発熱と電気分解によって発生したガスによって、コンデンサ内部の圧力が上昇し、アルミ電解コンデンサの防爆弁(圧力弁)が作動することがあります。防爆弁(圧力弁)がない場合にはコンデンサが破裂することがあります。
したがって、アルミ電解コンデンサの極性を逆に接続することや、逆電圧が印加されるような回路での使用は避けて下さい。
アルミ電解コンデンサの逆耐圧はどれくらいなのか?
アルミニウムは酸素に対して高い活性を持つ金属なので、空気中の酸素と反応し自然に酸化皮膜が形成されます。この酸化皮膜によって通常1V程度の耐圧を持っており、ダイオードの順方向電圧(約0.6V)の逆電圧には耐えることができます。本ページの冒頭のアルミ電解コンデンサに電圧を印加した時の電流―電圧特性においても逆電圧が1V以内の箇所では漏れ電流が激減しています。
なぜアルミ電解コンデンサは逆耐圧がないのか
補足:逆耐圧使用の電解コンデンサ
タンタルコンデンサは少しの逆電圧でNG
同じ有極系のコンデンサでもタンタルコンデンサは少しでも逆電圧が印加されると、内部ショートのリスクが激増し、破壊する可能性があります。有極系コンデンサのOSコンはアルミ電解コンデンサと同じく少しの逆耐圧を持っています。
まとめ
この記事では電解コンデンサの極性を逆にして『逆電圧』を印加した場合の現象について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- アルミ電解コンデンサの極性に対して逆電圧を印加すると、1~2V程度の低い逆電圧で大きな漏れ電流が流れる
- 逆電圧を印加すると、「容量の低下」、「損失角の正接(tanδ)の増加」、「防爆弁(圧力弁)の作動orコンデンサの破裂」が生じる
- アルミ電解コンデンサの逆耐圧は約1V程度
- タンタルコンデンサは少しの逆電圧でNG
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