この記事では『ダイオードの熱暴走』について図を用いて詳しく説明してます。
ダイオードの熱暴走
ダイオードは主に以下の原因で温度が上昇します。
ダイオードの温度上昇の原因
- 順電力損失\(P_F\)
- 逆電力損失\(P_R\)
- リカバリー損失\(P_{SW}\)
ダイオードの『逆回復時間』と『逆回復電流』について!
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- あおり熱
順方向電流\(I_F\)と順方向電圧\(V_F\)による損失です(\(P_F=I_F×V_F\))。ダイオードに順方向電圧\(V_F\)を印加すると、順方向電流\(I_F\)が流れるため、損失が発生し自己発熱します。
逆方向電流\(I_R\)と逆方向電圧\(V_R\)による損失です(\(P_R=I_R×V_R\))。ダイオードに逆方向電圧\(V_R\)を印加すると、逆方向電流\(I_R\)がわずかに流れるため、損失が発生し自己発熱します。
逆回復時間\(t_{rr}\)中に発生する損失です。リカバリー損失や逆回復時間については下記の記事で詳しく説明していますのでご参考にしてください。
周囲の発熱部品から伝搬してくる二次的な温度上昇です。
これらの温度上昇の原因において、逆方向損失\(P_R\)は以下の特徴があります。
逆方向損失の特徴
温度が上がると、逆方向電流\(I_R\)が指数関数的に増加する。すなわち、逆方向損失\(P_R\)が指数関数的に増加し、発熱量も増加する。
そのため、素子の放熱量よりも発熱量の方が大きくなると、放熱しきれなくなることで、温度上昇が止まらなくなり、以下の現象が生じます。
このように、ダイオードの温度が上昇し続けると、最終的にダイオードの接合温度\(T_j\)が最大定格(一般的には150℃が最大定格の素子が多い)を超え、破壊に至る可能性があります。このような現象を熱暴走といいます。
逆方向電流\(I_R\)が大きいショットキーバリアダイオードでは逆電力損失\(P_R\)の影響は無視することができません。ショットキーバリアダイオードを使う場合には、熱暴走には注意してください。
補足
- ダイオードの発熱は損失の合計に熱抵抗を掛けたものとなります。
- 温度が上がると、順方向電流\(I_F\)が減少するため、順電力損失\(P_F\)も減少します。そのため、順方向損失により熱暴走が生じることはありません。
- ダイオードだけではなく、トランスも熱暴走をします。トランスの熱暴走については下記の記事で詳しく説明していますのでご参考にしてください。
まとめ
この記事では『ダイオードの熱暴走』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- ダイオードの熱暴走とは
- 素子の放熱量よりも発熱量の方が大きくなると熱暴走が発生する。
お読み頂きありがとうございました。
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