オペアンプの『スルーレート』とは?

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この記事ではオペアンプの『スルーレート』について

  • オペアンプのスルーレートとは
  • オペアンプのスルーレートに関する例題

などを図を用いて分かりやすく説明しています。

オペアンプの『スルーレート』

オペアンプの『スルーレート』

オペアンプの『スルーレート』とは入力電圧の変化に対して出力電圧が1μsあたり何Vの割合で変化に追従できるかを示す数値です。オペアンプの性能を示す基本特性の1つとなります。

スルーレートの単位は[V/μs]となっています。例えば、10[V/µs]は1[µs]で10[V]電圧を変化させることができるという意味です。すなわち、スルーレートが大きければ大きいほど、高速な入力電圧波形に追従できることを示しています。理想的なオペアンプはスルーレートが∞[V/µs]であり、どのような波形の入力電圧に対しても忠実に出力電圧が追従可能となります。

立ち上がりor立ち下がりが急峻な入力電圧をオペアンプに印加した時、出力電圧は入力電圧に対して完全に追従することができず、ある一定時間かかって変化します。出力電圧が単位時間あたり(1μsあたり)にどの程度変化に追従可能であるかをスルーレートが示しています。

オペアンプの『スルーレート』による波形の歪

なお、立ち上がりのスルーレート\(SR_r\)立ち下がりのスルーレート\(SR_f\)は次式で計算されます。

\begin{eqnarray}
SR_r&=&\frac{{\Delta}V}{{\Delta}t_r}\\
SR_f&=&\frac{{\Delta}V}{{\Delta}t_f}
\end{eqnarray}

データシート上でのスルーレートの規定は「立ち上がり」もしくは「立ち下がり」の遅い方を基準に規定されています。

入力電圧の周波数が高くなったり、入力電圧の振幅が大きくなったりして、出力電圧が追従できなくなると、出力電圧は下図に示すような三角波のような波形になります。

オペアンプの『スルーレート』による波形の変化

補足

  • スルーレートは英語では『Slew Rate』と書きます。
  • 数100[V/μs]を超えると高速なオペアンプと言われています。
  • 周波数帯域幅の広いオペアンプは、スルーレートが高くなる傾向がありますが、周波数帯域幅とスルーレートの間に比例関係があるわけではないので注意してください。

オペアンプのデータシート上でのスルーレート

オペアンプのデータシート上でのスルーレート

上図に示しているのは新日本無線製オペアンプNJM4558/4559のデータシートの一部です。

オペアンプのスルーレートは電気的特性の箇所に記載されています。

NJM4558のスルーレートは\(SR=1{\mathrm{[V/{\mu}s]}}\)、NJM4559のスルーレートは\(SR=2{\mathrm{[V/{\mu}s]}}\)であることが確認できます。

オペアンプが追従できる正弦波の最高周波数

オペアンプが追従できる正弦波の最高周波数

オペアンプが追従できる正弦波の最高周波数を求めてみましょう。上図はスルーレートが\(SR{\mathrm{[V/{\mu}s]}}\)のオペアンプで作成したボルテージフォロワ回路となっています。この回路に振幅\(V_M\)の正弦波\(v_{IN}=V_M{\sin}{\omega}t\)を印加します。

正弦波において電圧の変化が最大になる値は、正弦波\(v_{IN}=V_M{\sin}{\omega}t\)を時間で微分した時の最大値となります。正弦波\(v_{IN}\)を時間で微分すると、次式となります。

\begin{eqnarray}
\frac{dv_{IN}}{dt}=V_M{\omega}{\cos}{\omega}t
\end{eqnarray}

上式が最大となるのは\({\cos}{\omega}t=1\)の時となります。したがって正弦波\(v_{IN}\)の時間に対する電圧の変化が最大になる値は\(V_M{\omega}\)となります。

したがって、振幅\(V_M\)の正弦波を印加した時において理論的に歪まない最大周波数\(f_{MAX}\)は

\begin{eqnarray}
SR&=&V_M{\omega}\\
&=&2{\pi}f_{MAX}V_M\\
{\Leftrightarrow}f_{MAX}&=&\frac{SR}{2{\pi}V_M}
\end{eqnarray}

となります。上式がオペアンプが追従できる正弦波の最高周波数となります。この後、オペアンプのスルーレートに関する例題を2つ解いてみましょう。

ポイント

入力電圧の変化(微分値)の最大値がスルーレート以下であれば出力電圧は歪まないことになります。式で表すと次式となります。

\begin{eqnarray}
SR{\;}{≥}{\;}2{\pi}f_{MAX}V_M
\end{eqnarray}

オペアンプのスルーレートに関する例題

例題1

例題1

スルーレートが\(SR=1.0{\mathrm{[V/{\mu}s]}}\)のオペアンプで作成したボルテージフォロワ回路となっています。この回路に振幅\(V_M=1{\mathrm{[V]}}\)の正弦波\(v_{IN}={\sin}{\omega}t\)を印加します。この時、周波数を上げていくと,ある周波数を境に出力電圧が入力電圧に追従しなくなります。その周波数はいくつでしょうか。

オペアンプのスルーレートに関する例題01

解答

\begin{eqnarray}
f_{MAX}&=&\frac{SR}{2{\pi}V_M}\\
&=&\frac{1.0{\mathrm{[V/{\mu}s]}}}{2{\pi}×1{\mathrm{[V]}}}\\
&{\approx}&159{\mathrm{[kHz]}}
\end{eqnarray}

上記で求めた周波数を超えると波形はスルーレートに制限され正弦波は三角波のような波形になり歪が生じます。

例題2

例題2

振幅\(V_M=5{\mathrm{[V]}}\)、周波数\(f_{MAX}=10{\mathrm{[kHz]}}\)の正弦波を扱うにはスルーレートが何V/μs以上のオペアンプを選択する必要があるでしょうか。

オペアンプのスルーレートに関する例題02

解答

\begin{eqnarray}
SR&{\;}{≥}{\;}&2{\pi}f_{MAX}V_M\\
&{\;}{≥}{\;}&2{\pi}×10×10^3×5×10^{-6}\\
&{\;}{≥}{\;}&0.314{\mathrm{[V/{\mu}s]}}
\end{eqnarray}

上記で求めたスルーレートよりも小さいオペアンプを選定すると、正弦波は三角波のような波形になり歪が生じます。

まとめ

この記事では『オペアンプのスルーレート』について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • オペアンプのスルーレートとは
  • オペアンプのスルーレートに関する例題

お読み頂きありがとうございました。

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