ダイオードの『接合温度Tj』と『保存温度Tstg』について!

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この記事では、ダイオードの絶対最大定格に記載されている接合温度Tj保存温度Tstgについて説明します。

ダイオードの『接合温度Tj

ダイオードの『接合温度Tj』

接合温度Tjとは、半導体の接合部の温度のことです。絶対最大定格に記載されている接合温度Tjは、そのダイオードが許容できる接合部の温度の最大値となります。

例えば、ダイオードに順電流IFが流れると、順電流IF順電圧VFによる損失(損失PD)が発生し、発熱することで、接合温度Tjが上昇します。

接合温度Tjが10℃上昇すると、素子の寿命は約半分になり、故障率は約2倍になると言われています。また、シリコン半導体の場合、接合温度Tjが175℃を超えると、破壊する可能性があるため、データシートに記載されている接合温度Tjは150℃~175℃程度が一般的です。しかし、データシートに記載されている接合温度Tjの付近でダイオードを使用すると、信頼性が低下するため、接合温度Tjはデータシートに記載されている接合温度Tjの80%を超えないように設計することが多いです。

また、接合温度Tjが上昇すると、ダイオードの逆電流IRが増加します。その結果、『接合温度Tj増加→逆電流IR増加→損失PD増加→接合温度Tj増加→逆電流IR増加→…』の繰り返しにより、熱暴走を引き起こす場合がありますので、注意してください。

なお、絶対最大定格は以下の記事に記載していますので参考にしてください。

補足

  • 接合温度は『接合部温度』や『ジャンクション温度』と書かれていることがあります。
  • Tjのjはジャンクション(junction)のjとなっています。
  • 接合温度の記号は『Tj』ではなく『Tjw』と書かれていることもあります。
  • 接合温度は英語では「Junction Temperature」と書きます。
  • 英語のデータシート上では接合温度は「Operation Junction Temperature」や「Operating Junction Temperature」と書かれていることがあります。
  • データシート上では接合温度の温度範囲が記載されていることがあります。この場合、『接合部温度(範囲)』や『動作接合温度範囲』と書かれていることが多いです(英語のデータシート上では「Operation Junction Temperature Range」と書かれています)。

ダイオードの『保存温度Tstg

ダイオードの『保存温度Tstg』

絶対最大定格に記載されている保存温度Tstgとは、ダイオードを動作させない状態(電圧が印加されていない状態)において、ダイオードを安全に保存または輸送できる周囲温度の範囲のことを指します。

補足

  • 保存温度は『保存温度範囲』と書かれていることがあります。
  • Tstgのstgは保存(storage)のstgとなっています。
  • 保存温度は英語では「Storage Temperature」と書きます。
  • 保存温度範囲は英語では「Storage Temperature Range」や「Range of storage temperature」と書きます。
  • 保存の際には、温度だけでなく、端子の酸化などにも十分注意する必要があります。

ダイオードの『接合温度Tj』と『保存温度Tstg』の値

ダイオードの『接合温度Tj』と『保存温度Tstg』の値

ダイオードの『接合温度Tj』と『保存温度Tstg』は使用するダイオードによって変わりますので、データシートを確認してください。上表はFAIRCHILD製ダイオード(MBR20200CT)の絶対最大定格です。

  • 接合温度Tj:150℃
  • 保存温度Tstg:-55℃~150℃

となっています。

つまりこのダイオードは、動作している状態では接合温度Tjは150℃を超えてはならず、動作していない状態では-55℃~150℃の温度範囲で保存しなければいけないということになります。

『接合温度Tj』の求め方

『接合温度Tj』の求め方

絶対最大定格にはダイオードが許容できる接合温度Tjの最大値が規定されていますが、実際に接合温度Tjを測定することはできません。

そこで、周囲温度Ta(またはケース温度Tc)、損失PDを用いて、間接的に接合温度Tjを求めます。

FAIRCHILD製ダイオード(MBR20200CT)の熱抵抗RθJAは62.5[℃/W]なので、例えば、周囲温度Taが30℃、ヒートシンクが未実装、損失PDが1Wの場合、ダイオードの接合温度Tjは以下の値となります。

\begin{eqnarray}
T_{j}= R_{th(j-a)}×P_{D}+ T_{a}=62.5{\mathrm{[^{\circ}C/W]}}×1{\mathrm{[W]}}+30{\mathrm{[^{\circ}C]}}=92.5{\mathrm{[^{\circ}C]}}
\end{eqnarray}

まとめ

この記事ではダイオードの絶対最大定格に記載されている接合温度Tj保存温度Tstgについて、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • ダイオードの『接合温度Tj』とは
  • ダイオードの『保存温度Tstg』とは
  • ダイオードの『接合温度Tj』と『保存温度Tstg』の値
  • ダイオードの『接合温度Tj』の求め方

お読み頂きありがとうございました。

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