『コンプリメンタリ・トランジスタ』とは?特性比較や回路例を紹介

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トランジスタのデータシート、トランジスタが使われている回路図、そして通販等の説明を見ると、

  • 2SA1015 コンプリメンタリ
  • コンプリメンタリ・トランジスタ:2SA1010

などコンプリメンタリという表現が頻繁に出てきます。

今回はこの『コンプリメンタリ』について説明します。

コンプリメンタリ・トランジスタとは?

『コンプリメンタリ・トランジスタ』とは?
コンプリメンタリ・トランジスタとは、電流と電圧の極性は違うが、絶対最大定格や電気的特性は同等であるトランジスタのことを指します。

コンプリメンタリ・トランジスタのことをコンプリと略す場合もあります。

代表的なコンプリメンタリ・トランジスタの組み合わせとしては、2SA1015(PNP型)2SC1815(NPN型)があります。

この2つのトランジスタのコレクタ・エミッタ間電圧の絶対最大定格を比較すると、

  • 2SA1015(PNP型):-50V
  • 2SC1815(PNP型):+50V

となっており、極性が異なりますが、耐電圧の絶対値は同じです。また、そのほかの項目の絶対値も同等になっています。

実際に2SC1815のデータシートを見ると、

2SA1015 とコンプリメンタリになります。(O, Y, GR クラス)

などと記述してあり、2SC1815のコンプリメンタリ・トランジスタは「2SA1015」であることが分かるようになっています。

注意

コンプリメンタリ・トランジスタは極性が異なるため、代替品として使用することはできません。

コンプリメンタリとは?

そもそも『コンプリメンタリ』とはなんでしょうか。

コンプリメンタリは英語では『Complementary』と書きます。

意味は「補完する」とか「補充する」という意味があります。

NPNトランジスタの足りない部分をPNPトランジスタで補う、PNPトランジスタの足りない部分をNPNトランジスタで補うといったような、個々では不完全なトランジスタをお互いに補うという意味で「コンプリメンタリ」という言葉を使用しているらしいです。

例えば、以下の回路を考えると、NPNトランジスタは波形の+側しか増幅できません。一方、PNPトランジスタは波形の-側しか増幅できません。この不完全なトランジスタを2つ組み合わせることで、プッシュプル増幅器のような波形の+側も-側も増幅可能な回路ができるわけです。
プッシュプル増幅器をコンプリメンタリトランジスタで構成

補足

CMOSは、コンプリメンタリMOSの意味であり、これは同一基板上にPMOSとNMOSを構成したものです。

コンプリメンタリ・トランジスタの回路例

コンプリメンタリ・トランジスタを使用した回路としては、プッシュプル増幅器やインバータ回路などがあります。

プッシュプル増幅器とは、波形の+側をNPNトランジスタで増幅し、波形の-側をPNPトランジスタで増幅する回路です。動作条件が逆なので、NPNトランジスタとPNPトランジスタの2つが必要であり、かつ2つのトランジスタの特性が揃わないと出力波形に歪みが生じるため、コンプリメンタリのトランジスタを使用します。

コンプリメンタリ・トランジスタの実際の例

コンプリメンタリ・トランジスタの代表的な組み合わせである2SA1015(PNP型)と2SC1815(NPN型)で説明します。

絶対最大定格の比較

『コンプリメンタリ・トランジスタ』の特性比較
2つのトランジスタの絶対最大定格を並べたのが上表です。

耐電圧や耐電流の極性が逆ですが、耐電圧や耐電流の絶対値、許容損失(コレクタ損失)、接合温度の値はほぼ同じです。

バイポーラトランジスタにおいて、ベース電流はベースに流れ込む電流をプラスとします。

そのため、

  • 2SA1015(PNP型):電流はベースから流れ出す向きに流れるのでマイナス
  • 2SC1815(NPN型):電流はベースに流れ込む向きに流れるのでプラス

となっています。

そのほかの項目も同じ考えです。

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