コイルに交流電圧を印加すると、コイルに流れる電流の位相が90度遅れます。
なぜ、電流の位相が90度遅れるのでしょうか。
この記事では、電流の位相が90度遅れる理由を『式』・『波形』・『覚え方』で説明します。
コイルに流れる電流の位相が遅れる理由
交流電圧にコイル\(L\)(自己インダクタンスを\(L{\mathrm{[H]}}\)とする)のみ接続した回路を上図に示しています。
コイル\(L\)に交流電圧を印加した時、次式で表される電流\(i_L\)がコイルに流れたとします。
\begin{eqnarray}
i_L=I_M{\sin}{\omega}t{\mathrm{[A]}}\tag{1}
\end{eqnarray}
この時、コイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
v_L&=&L×\frac{di_L}{dt}\\
&=&L×\frac{d}{dt}I_M{\sin}{\omega}t\\
&=&{\omega}LI_M{\cos}{\omega}t\\
&=&{\omega}LI_M{\sin}\left({\omega}t+\frac{{\pi}}{2}\right){\mathrm{[V]}}\tag{2}
\end{eqnarray}
(1)式と(2)式より、コイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)とコイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)は上図に示すような波形となります。
コイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)とコイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)の波形を見れば、位相の『進み』と『遅れ』を簡単に見分けることができます。
コイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)は\({\omega}t=0{\mathrm{[rad]}}\)の時に減少し始めます。
一方、コイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)は\({\omega}t=\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}}\)の時に減少し始めます。
そのため、コイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)に対してコイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)は位相が90度\((=\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}})\)遅れていることが分かります。
補足
言い換えれば、コイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)に対してコイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)は位相が90度\((=\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}})\)進んでいるということになります。
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コイルの場合、交流電圧を印加すると、コイルに流れる電流の位相が90度遅れます。
一方、コンデンサの場合、交流電圧を印加すると、コンデンサに流れる電流の位相が90度進みます。
コンデンサに流れる電流の位相が進む理由については下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。
コンデンサに流れる電流の位相が進む理由
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コイルに流れる電流の『位相の覚え方』
コイルに流れる電流の『位相の覚え方』としては、サザンオールスターズの「いとし(愛し)のエリー」から「エリー(ELI)を愛す(ICE)」と覚えましょう。
コイルの場合
コイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)とコイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)の位相関係は「エリー(ELI)」となります。
「エリー(ELI)」のE、L、Iは以下の意味を表します。
- E:電圧
- L:コイル
- I:電流
E(電圧)→L(コイル)→I(電流)の順番となっていますね。
そのため、『コイル(L)の場合、電圧(E)に対して、電流(I)は遅れる(=後に来る)』と覚えることができます。
コンデンサの場合
ついでに、コンデンサに流れる電流の『位相の覚え方』も説明します。
コンデンサ\(C\)に流れる電流\(i_C\)とコンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)の位相関係は「愛す(ICE)」となります。
「愛す(ICE)」のI、C、Eは以下の意味を表します。
- I:電流
- C:コンデンサ
- E:電圧
I(電流)→C(コンデンサ)→E(電圧)の順番となっていますね。
そのため、『コンデンサ(C)の場合、電圧(E)に対して、電流(I)は進む(=前に来る)』と覚えることができます。
コイルの特性から電流と電圧の位相関係を考えてみよう
先ほど、(1)式と(2)式からコイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)とコイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)の波形をプロットしましたが、コイルの特性を理解していれば、波形と簡単に描くことができます。
まず、コイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)を正弦波でプロットします。
コイル\(L\)は電流\(i_L\)の変化を妨げる方向に電圧\(v_L\)が生じる特性があります。
そのため、下記のように電圧\(v_L\)の波形をプロットすることができます。
- 電流\(i_L\)の増加量が一番大きい箇所で電圧\(v_L\)が最大値\(V_{LMAX}\)
- 電流\(i_L\)の減少量が一番大きい箇所で電圧\(v_L\)が最小値\(V_{LMIN}\)
- 電流\(i_L\)の最大点と最小点では、電流\(i_L\)の変化がほぼないため、電圧\(v_L\)は0V
すると、コイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)とコイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)の波形は上図に示すようになり、コイル\(L\)にかかる電圧\(v_L\)に対してコイル\(L\)に流れる電流\(i_L\)は位相が90度\((=\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}})\)遅れていることが分かります。
まとめ
この記事では『コイルに流れる電流の位相』について、以下の内容を説明しました。
- コイルに流れる電流の位相が遅れる理由
- コイルに流れる電流の『位相の覚え方』
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