この記事では『チップ抵抗』について
- チップ抵抗の『トリミング溝』とは?
- チップ抵抗の『過電流破壊(過負荷破壊)』の原理
- チップ抵抗の『クラック』の原理
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
チップ抵抗の『トリミング溝』
チップ抵抗の構造は上図のようになっています。セラミック基板上に抵抗体があり、端部には電極があります。
チップ抵抗は抵抗体をレーザーでカットし、トリミング溝を形成することで、抵抗値を調整しています。この工程はレーザートリミングと呼ばれています。
まず、目標とする抵抗値に対して、低い抵抗値になるように抵抗体を印刷します。その後、レーザートリミングにより、トリミング溝を入れ、電流経路を狭くすることで抵抗値を高くし、目標とする抵抗値を作製します。トリミング溝が長いほど、電流経路が狭くなるので抵抗値が高くなります。
なお、チップ抵抗の構造については、下記の記事にまとめていますので、ご参考になれば幸いです。
補足
- トリミング溝には直線状やL字状など様々な形があります。上図に示しているのはL字状のトリミング溝です。
チップ抵抗の『過電流破壊(過負荷破壊)』
チップ抵抗に流れる電流は『トリミング溝が無い部分』となります。
そのため、チップ抵抗に定格電力の数倍の過電力を印加すると、トリミング溝が無い部分に電流が集中的に流れるため、抵抗体が局部的に発熱します。
その結果、抵抗体の温度が非常に高くなります(数100度)。そして、抵抗体の温度が耐熱温度を超えると、溶融現象が生じ、抵抗体が焼き切れます。これが、チップ抵抗の『過電流破壊(過負荷破壊)』の原理となっています。
補足
- 抵抗体が焼き切れ、抵抗がオープン状態(開放状態)になる瞬間、電極間で放電現象が生じます。
- トリミング溝が無い部分に集中的に過電流が流れることで、チップ抵抗にクラックが生じることもあります。
チップ抵抗の『クラック』
レーザートリミング工程では、目標とする抵抗値に達したら、レーザーの照射を終了します。
レーザー照射の終了時、急激な温度降下が生じるため、トリミング溝の端部は細かな亀裂(マイクロクラック)が発生しやすくなっています。また、トリミング溝の端部は電流が集中する箇所なので、マイクロクラックがあると、発展進行し、抵抗値や電気的特性の変動が生じる可能性があります。
まとめ
この記事では『チップ抵抗』について、以下の内容を説明しました。
- チップ抵抗の『トリミング溝』とは?
- チップ抵抗の『過電流破壊(過負荷破壊)』の原理
- チップ抵抗の『クラック』の原理
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