【セラミックコンデンサ】DCバイアス特性とは?

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セラミックコンデンサ(セラコン)の型番には静電容量(単位[F])が記載されていますが、この静電容量がセラミックコンデンサに印加する直流電圧によって変化することをご存知でしょうか。

この変化する特性のことをDCバイアス特性と呼びます。

この記事ではこのセラミックコンデンサのDCバイアス特性について、

  • DCバイアス特性で注意すべき特徴
  • DCバイアス特性が発生するメカニズム

等を説明します。

セラミックコンデンサ(セラコン)のDCバイアス特性とは?

セラミックコンデンサ(セラコン)のDCバイアス特性とは?
セラミックコンデンサには製品の型番等に静電容量(単位[F])が「公称値」として記載しています。

しかし、セラミックコンデンサに直流(DC)電圧を印加すると、静電容量が「公称値」から変化(減少)します。

直流電圧の印加によって、静電容量が変化(減少)する特性を「DCバイアス特性」と呼びます。

これは言い換えると、セラミックコンデンサは「公称値」と「実際に使用する動作条件下での実容量」との間で大きな差があるということです。

そのため、セラミックコンデンサの電圧特性を理解し、適切なものを選定することが重要です。

精度が求められる箇所に(高誘電率系の)セラミックコンデンサを使用する場合には、印加電圧に対して数倍の耐圧を持つセラミックコンデンサを使用してDCバイアス特性の影響を少なくする必要があります。

なお、DCバイアス特性は、直流バイアス特性や直流電圧特性とも呼ばれます。

特徴1:DCバイアス特性は高誘電率系のセラミックコンデンサ特有のもの

DCバイアス特性は高誘電率系のセラミックコンデンサ特有

セラミックコンデンサは大きく低誘電率系(CH特性とC0G特性など)高誘電率系(B特性とX5R特性など)に分類されます。

この中でDCバイアス特性を持つのは高誘電率系のセラミックコンデンサです。

上図は

  • 定格電圧25V、静電容量1000pFの高誘電率系(B特性)
  • 定格電圧25V、静電容量1000pFの低誘電率系(CH特性)

におけるセラミックコンデンサの静電容量変化率[%]―直流電圧[V]特性です。

高誘電率系(B特性)のセラミックコンデンサは直流電圧の印可によって静電容量が低下していますが、低誘電率系(CH特性)のセラミックコンデンサは直流電圧を印可しても静電容量が低下していないことがわかります。

このように、低誘電率系のセラミックコンデンサにはDCバイアス特性はありません。

また、セラミックコンデンサ以外の種類のコンデンサ(アルミ電解コンデンサ、タルタル電解コンデンサ、フィルムコンデンサ等)にもDCバイアス特性はありません。

【補足】低誘電率系と高誘電率系の違いについては以下の記事に記載しています。


特徴2:DCバイアス特性はサイズの小さなセラミックコンデンサの方が悪い

DCバイアス特性はサイズの小さなセラミックコンデンサの方が悪い

DCバイアス特性はサイズの小さいコンデンサほど影響が大きくなります。

上図は定格電圧25V、静電容量10uFのセラミックコンデンサにおいて、異なるサイズ(5750,4532,3225,3216,2012)における、静電容量変化率[%]―直流電圧[V]特性です。

なお、5750サイズとはセラミックコンデンサの横幅が5.7mm、縦幅が5mmという意味です。

上図から分かるように、サイズが小さいほど直流電圧を印加した際の静電容量の低下が大きくなります。

特徴2の実例

4532サイズと2012サイズの静電容量変化率

上図は定格電圧25V、静電容量10uFにおいて、4532サイズと2012サイズの静電容量変化率[%]―直流電圧[V]特性です。

定格電圧25Vのセラミックコンデンサに10Vの直流電圧を印可した場合を考えてみます。

4532サイズでは約10%の静電容量の低下なので実容量は9uFになります。

一方、2012サイズでは約80%も静電容量が低下し、実容量は2uFになってしまいます。

そのため、静電容量の低下を回避するためには、大きなサイズの製品を選択する必要があります。

DCバイアス特性が生じるメカニズム

セラミックコンデンサの構造

セラミックコンデンサの構造

上図にセラミックコンデンサの構造を示しています。

セラミックコンデンサは多数の結晶粒(Grain)から構成される多結晶体です。

結晶粒内に微少な分域(Domain)が多数あります。

各専門用語についてはメカニズムとは関係ないので、説明を割愛します。

DCバイアス特性のメカニズム

DCバイアス特性のメカニズム

強誘電率系のセラミックコンデンサは自発分極する強誘電体を材質に使用しているため、DCバイアス特性が生じます。

強誘電体は、外部から電界や圧力を加えなくても、結晶粒の分域において、自発分極(Spontaneous Polarization)が生じます。

セラミックコンデンサに直流電圧を印加していないとき、このドメインの自発分極が反平行、直行したりして互いに打ち消し合います。その結果、全体としては分極を示しません。

ここで、セラミックコンデンサに直流電圧を印加した時を考えます。

セラミックコンデンサに印加する直流電圧が小さい時

セラミックコンデンサに生じる電界が小さくなります。

電界が小さい時は電束密度(D)と電界(E)が比例します。その結果、バラバラの向きであった自発分極が電界の方向に整列し、大きな誘電率となります。そのため、静電容量の実容量が大きくなります。

セラミックコンデンサに印加する直流電圧が大きい時

セラミックコンデンサに生じる電界が大きくなります。

電界を大きくしていくと、自発分極の整列が終わり、分極が飽和状態に達します。分極が飽和すると、誘電体中の自発分極が電界方向に束縛され、自発分極の反転がしにくい状況になります。束縛された誘電体はAC電圧に対して、反応しなります。そのため、誘電率が低下し、静電容量の実容量が小さくなります。

サイズの大きなセラミックコンデンサは小さなセラミックコンデンサと比較すると、電圧印可によって生じる電界が小さくなります。そのため、大きなサイズのセラミックコンデンサはDCバイアス特性が良いのです。

まとめ

直流電圧をセラミックコンデンサに印加する際には、印加電圧、耐圧、サイズを考慮して、実容量が何Fであるかに注意してながら使用することが必要となります。

データシートに十分な情報が記載されていない場合には、詳細なデータを請求することをおすすめします。

また近年、小型化の要求が増しているため、特にサイズが小さくなるにつれて静電容量が低下する「特徴2:DCバイアス特性はサイズの小さなセラミックコンデンサの方が悪い」により発生する問題が日常的になっています。

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