この記事では『ボード線図』について
- 『ボード線図』とは
- 『ボード線図』の見方
- 『ゲイン余裕』と『位相余裕』の目安
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
ボード線図とは
上図の縦軸がゲイン(dB表記)、横軸が周波数の対数であるグラフをゲイン線図と呼びます。また上図の縦軸が位相(度表記)、横軸が周波数の対数であるグラフを位相線図と呼びます。
このゲイン線図と位相線図の組み合わせがボード線図(Bode plot,Bode chart)となります。
ボード線図はボード図やボーデ線図とも呼ばれています。
ボード線図は負帰還制御の安定性を検討する際に使われています(ナイキスト線図やニコルス線図などを使うこともありますが、ボード線図が一番一般的です)。
なお、ゲイン線図はゲイン曲線、位相線図は位相曲線とも呼ばれています。
ボード線図の見方
ボード線図において、負帰還のループゲインが0dBになるまでに位相遅れが180度に達しなければ安定な制御となります(発振しないということ)。言い換えると、位相遅れが180度になるまでにループゲインが0dB以下に達していれば安定な制御となります。
ゲイン余裕・位相余裕とその他の用語について
ボード線図において安定度を判断するための指標として使用されるのがゲイン余裕と位相余裕になります。
- ゲイン余裕(Gain Margin)
- 位相余裕(Phase Margin)
- ゲインクロスオーバー周波数(Gain Crossover Frequency)
- 位相クロスオーバー周波数(Phase Crossover Frequency)
- ピークゲイン(Peak Gain)
- ピーク周波数(Peak Frequency)
- 帯域幅(Bandwidth)
ループゲインの位相遅れが180度になった時に、ゲインが1倍(0dB)までどの程度余裕があるかを表すものです。位相遅れが180度におけるループゲインと0dBの差がゲイン余裕となります。変数はGMで表されることが多いです。
ループゲインが1倍(0dB)になった時に、位相遅れが180度までどの程度余裕があるかを表すものです。ループゲインが0dBにおける位相遅れと180度との差になります。変数はPMで表されることが多いです。
ゲインが1倍(0dB)となる時の周波数です。ゲイン交差周波数、ゲインゼロクロス周波数とも呼ばれています。変数はPCGまたはWCGで表すことが多いです。
ループゲインの位相遅れが180度になる時の周波数です。位相交差周波数、位相ゼロクロス周波数とも呼ばれています。変数はPCPまたはWCPで表すことが多いです。
ゲインが最も大きくなる値です。変数はMPで表すことが多いです。
ゲインが最も大きくなる時の周波数です。変数はPPまたはWPで表すことが多いです。
ゲインが3dB低下した時の周波数です。ループ帯域幅やシステム帯域幅とも呼ばれています。変数はPBまたはWBで表すことが多いです。
ゲイン余裕と位相余裕の目安
用途 | ゲイン余裕 | 位相余裕 |
増幅回路 | 7〜10dB | 45〜60度 |
電源回路 | 20dB以上* | 45度以上 |
プロセス制御(目標が固定の定値制御) | 3〜10dB | 15〜80度 |
プロセス制御(目標を追従する追値制御) | 4〜10dB | 50度以上 |
サーボ(機械制御) | 10〜20dB | 40〜65度 |
*電源回路においてはゲイン余裕は6dB以上で良いという理論もあります。
ゲイン余裕と位相余裕が大きい場合と小さい場合の応答速度と安定度
- 大きい場合
- 小さい場合
ループゲインを下げるため、安定度は増すが、応答が遅くなる。また、制御対象(電源だと出力電圧なと)の変化時に振動しにくくなる
安定度が遅くなるが、応答が早くなる。