この記事ではバイポーラトランジスタを使用した増幅回路であるベース接地回路の特徴や原理について説明します。
ベース接地回路とは
ベース接地回路はバイポーラトランジスタを使用した基本的な増幅回路の1つです。電流利得は低いですが、電圧利得が高い回路となっています。
入力と出力の共通端子がベースあるため、ベース接地回路と呼ばれています。エミッタに入力電圧vINを印加することで、コレクタから出力電圧vOUTを取り出す回路となっています。
ベース接地回路はベース共通回路(Common Base)とも呼ばれています。
補足
ベース接地回路の動作
- ベース電圧よりエミッタ電圧が約0.6〜0.7V低い状態になると、バイポーラトランジスタがオンします。
- バイポーラトランジスタがオンしたことによって、エミッタ電流IEとコレクタ電流ICが流れます。
- コレクタ負荷抵抗RCとコレクタ電流ICにより電圧降下が発生します。出力電圧vOUTは電源電圧VCCからコレクタ負荷抵抗RCとコレクタ電流ICの電圧降下を引いた値となり
\begin{eqnarray}
V_{OUT}=V_{CC}-R_CI_C
\end{eqnarray}
となります。
コレクタ負荷抵抗RCの両端電圧を出力とする場合には、出力電圧VOUTはRC×ICとなります。
PNPトランジスタを使用した場合のベース接地回路
ベース接地回路はNPNトランジスタでもPNPトランジスタでも作成することができます。上図に回路図を示します。
ベース接地回路を実際に使用する時の回路
今までの回路図は原理を示すために用いられる図であり、実際の回路で使用する際には上図の右のように使用します。
ベース接地回路の特徴
- 入力インピーダンスが低い
- 出力インピーダンスが高い(コレクタ負荷抵抗RCと同じ)
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- 電流利得は1より少し小さい
- 電圧利得は高い
- 電力利得はエミッタ接地回路より小さい
- 入力電圧VINと出力電圧VOUTは同相
- 周波数特性はエミッタ接地特性より良い
-
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バイポーラトランジスタのIB-VBE特性より、バイポーラトランジスタの入力電圧(エミッタ間電圧VE)を小さくすると(つまりベースエミッタ間電圧VBEを大きくすると)、ベース電流IBがかなり大きくなります。
エミッタ電流IEは
\begin{eqnarray}
I_E=I_B+I_C=I_B+h_{FE}I_B=I_B(1+h_{FE})
\end{eqnarray}
となるため、ベース電流IBが大きくなると、入力電流(エミッタ電流IE)がかなり大きくなります。
入力インピーダンスZINは
\begin{eqnarray}
Z_{IN}=\frac{入力電圧の変化}{入力電流の変化}=\frac{{\Delta}V_{E}}{{\Delta}I_{E}}
\end{eqnarray}
となるため、入力インピーダンスZINは非常に低くなります。
ベース接地回路の出力インピーダンスZOUTはコレクタ負荷抵抗RCと同じになります。エミッタ接地回路でも出力インピーダンスZOUTはコレクタ負荷抵抗RCと同じになります。
出力インピーダンスZOUTがコレクタ負荷抵抗RCと同じなる理由については、ベース接地回路とエミッタ接地回路で考え方は同じです。出力インピーダンスZOUTがコレクタ負荷抵抗RCと同じになる理由については、以下の記事の後半(エミッタ接地回路の出力インピーダンスがコレクタ負荷抵抗RCと同じになる理由)に説明しているので参照してください。
エミッタ電流IE、コレクタ電流IC、ベース電流IBの関係は以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_E&=&I_B+I_C\\
I_C&=&h_{fe}I_B
\end{eqnarray}
上式の2式から
\begin{eqnarray}
I_E=I_B+I_C=\frac{1}{h_{fe}}I_C+I_C=I_C\left(1+\frac{1}{h_{fe}}\right)
\end{eqnarray}
となります。そのため、ベース接地回路の電流利得は以下の式となります。
\begin{eqnarray}
A_I=\frac{出力電流}{入力電流}=\frac{I_C}{I_E}=\frac{I_C}{I_C\left(1+\displaystyle\frac{1}{h_{fe}}\right)}=\frac{h_{fe}}{h_{fe}+1}
\end{eqnarray}
となります。電流増幅率hfeの大きなトランジスタでは1000程度であり、構造上、電流増幅率hfeを大きくすることができないパワートランジスタでは数10程度となっています。そのため、ベース接地回路の電流利得は1より少し小さい値になります。
ベース接地回路において、出力電圧の振幅はコレクタ負荷抵抗RCの電圧降下と等しくなります。そのため、コレクタ負荷抵抗RCを大きくすればするほど、出力電圧が大きくなります。但し、電源電圧VCCより大きな振幅は取れません。
電流利得は1より小さく、電圧利得はエミッタ接地と同等なので、電力利得としては、エミッタ接地回路よりは小さくなります。
入力電圧(エミッタ電圧)が上昇→ベース電流が減少→エミッタ電流とコレクタ電流が減少→出力電圧(コレクタ電圧)が上昇という動作をしますから、入力と出力は同位相です。
ベース接地回路では入力のエミッタと出力のコレクタの間にベースがあります。このベースが交流的には接地されているため、入出力が結合せず、ミラー効果はありません。そのため、周波数特性はエミッタ接地よりは良くなります。
なお、エミッタ接地回路はベースコレクタ間の寄生コンデンサによるミラー効果があるため、周波数特性は良くありません。ミラー効果とは入力のベースと出力のコレクタが見かけ上(電圧利得+1)倍の容量で結合する現象です。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
まとめ
この記事では『ベース接地回路』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- ベース接地回路の特徴
- ベース接地回路の原理
お読み頂きありがとうございました。
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