【アンペアの周回積分の法則とは】図を用いてわかりやすく説明!

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この記事ではアンペアの周回積分の法則について

  • 『アンペアの周回積分の法則』とは
  • 『アンペアの周回積分の法則』を用いて磁界の強さHを導出する方法
  • 『アンペアの周回積分の法則』に関する問題

などを図を用いて分かりやすく説明しています。

『アンペアの周回積分の法則』とは

『アンペアの周回積分の法則』とは

アンペアの周回積分の法則とは、電流が作る磁界を一周たどるとき、『閉曲面の微小部分×その箇所の磁界の強さ』の総和は『閉曲面内部の電流』の総和と等しくなる法則です。アンペアの周回積分の法則は『アンペアの周回路の法則』とも呼ばれています。

もう少し詳しく説明します。

上図に示すように、\(1\)本の電線に電流\(I{\mathrm{[A]}}\)が流れると、その周囲には磁界が発生します。

ここで、閉曲面\({{\partial}S}\)を微小部分\(dl_1,dl_2,{\;}{\cdots}{\;},dl_n{\mathrm{[m]}}\)と分けます。

また、その箇所の磁界の強さを\(H_1,H_2,{\;}{\cdots}{\;},H_n{\mathrm{[A/m]}}\)とします。

その時、『閉曲面\({{\partial}S}\)の微小部分\(dl\)×その箇所の磁界の強さ\(H\)』の総和は『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和(上図では\(I{\mathrm{[A]}}\))と等しくなります。

式で表すと、次式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
{dl_1}{\;}{\cdot}{\;}{H_1}+{dl_2}{\;}{\cdot}{\;}{H_2}+{\;}{\cdots}{\;}+{dl_n}{\;}{\cdot}{\;}{H_n}=I\tag{1}
\end{eqnarray}

ここで、左辺を積分に直すと、次式に変換することができます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}=I\tag{2}
\end{eqnarray}

上式は『磁界を周回積分すると、その中を流れる電流に等しい』ということを示しています。

アンペアの周回積分の法則の閉曲面は『円』である必要はありません。あらゆる閉曲面で成り立ちます。楕円形でも四角形でも閉曲面であれば、閉曲面を微小部分\(dl\)に分け、その箇所の磁界の強さ\(H\)を求め、それを積分することで、磁界の強さ\(H\)を求めることができます。

補足

電流密度\(J\)を用いると、『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和は\({\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}\)で表すことができるため、(2)式は次式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}={\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}\tag{3}
\end{eqnarray}

『アンペアの周回積分の法則』を用いて磁界の強さHを導出する方法

次に、アンペアの周回積分の法則を用いて

  • 直流導体\(1\)本の周囲の磁界の強さ\(H\)の導出
  • 直流導体\(N\)本の周囲の磁界の強さ\(H\)の導出
  • 環状ソレノイドの磁界の強さ\(H\)の導出

の磁界の強さ\(H\)を導出する方法を説明します。磁界の強さ\(H\)は以下の流れによって導出することができます。

磁界の強さを求める方法

  1. 『閉曲面\({{\partial}S}\)の微小部分\(dl\)×その箇所の磁界の強さ\(H\)』の総和\(\left({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}\right)\)を求める
  2. 『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和\(\left({\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}\right)\)を求める
  3. ①と②を『イコール(\(=\))』で結ぶ

直流導体1本の周囲の磁界の強さHの導出

【アンペアの周回積分の法則】直流導体1本の周囲の磁界の強さHの導出

\(1\)本の電線に電流\(I{\mathrm{[A]}}\)が流れるとき、電線から半径\(r{\mathrm{[m]}}\)離れた点の磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)をアンペアの周回積分の法則を用いて導出してみましょう。

step
1
『閉曲面\({{\partial}S}\)の微小部分\(dl\)×その箇所の磁界の強さ\(H\)』の総和を求める

電線から半径\(r{\mathrm{[m]}}\)離れた円周上では磁界の強さが等しくなります。そのため、積分記号『\({\displaystyle\oint}\)』の外に出すことができます。ここで、この磁界の強さを\(H{\mathrm{[A/m]}}\)とすると、『\({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}\)』は次式となります。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}=H{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}\tag{4}
\end{eqnarray}

また、『\({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}\)』は半径\(r{\mathrm{[m]}}\)の円周の長さであるため、次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}=2{\pi}r\tag{5}
\end{eqnarray}

(5)式を(4)式に代入すると、『閉曲面\({{\partial}S}\)の微小部分\(dl\)×その箇所の磁界の強さ\(H\)』の総和\(\left({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}\right)\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}=H{\;}{\cdot}{\;}2{\pi}r\tag{6}
\end{eqnarray}

『\({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}\)』は周回積分と呼ばれるものであり、閉曲面\({{\partial}S}\)を微小部分\(d{\vec{l}}\)に分け、それらを全て足したものです。

step
2
『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和を求める

『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和は\(I{\mathrm{[A]}}\)なので次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}=I\tag{7}
\end{eqnarray}

step
3
①と②を『イコール(\(=\))』で結ぶ

(6)式と(7)式を(3)式に代入すると次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}&=&{\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}\\
{\Leftrightarrow}H{\;}{\cdot}{\;}2{\pi}r&=&I\\
H&=&\frac{I}{2{\pi}r}\tag{8}
\end{eqnarray}

ゆえに、(8)式より\(1\)本の電線に電流\(I{\mathrm{[A]}}\)が流れるとき、電線から半径\(r{\mathrm{[m]}}\)離れた点の磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
H&=&\frac{I}{2{\pi}r}
\end{eqnarray}

あわせて読みたい

磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)は『ビオ・サバールの法則』でも求めることができます。『ビオ・サバールの法則』について以下の記事で説明していますので、参考にしてください。

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直流導体N本の周囲の磁界の強さHの導出

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\(N\)本の電線に電流\(I{\mathrm{[A]}}\)が流れるとき、電線から半径\(r{\mathrm{[m]}}\)離れた点の磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)をアンペアの周回積分の法則を用いて導出してみましょう。

step
1
『閉曲面\({{\partial}S}\)の微小部分\(dl\)×その箇所の磁界の強さ\(H\)』の総和を求める

電線から半径\(r{\mathrm{[m]}}\)離れた円周上では磁界の強さが等しくなります。そのため、積分記号『\({\displaystyle\oint}\)』の外に出すことができます。ここで、この磁界の強さを\(H{\mathrm{[A/m]}}\)とすると、『\({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}\)』は次式となります。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}=H{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}\tag{9}
\end{eqnarray}

また、『\({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}\)』は半径\(r{\mathrm{[m]}}\)の円周の長さであるため、次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}=2{\pi}r\tag{10}
\end{eqnarray}

(10)式を(9)式に代入すると、『閉曲面\({{\partial}S}\)の微小部分\(dl\)×その箇所の磁界の強さ\(H\)』の総和\(\left({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}\right)\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}=H{\;}{\cdot}{\;}2{\pi}r\tag{11}
\end{eqnarray}

ここまでは、先ほど導出した『直流導体\(1\)本の周囲の磁界の強さ\(H\)の導出』の流れと同じです。

step
2
『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和を求める

『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和は\(NI{\mathrm{[A]}}\)なので次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}=NI\tag{12}
\end{eqnarray}

step
3
①と②を『イコール(\(=\))』で結ぶ

(11)式と(12)式を(3)式に代入すると次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}&=&{\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}\\
{\Leftrightarrow}H{\;}{\cdot}{\;}2{\pi}r&=&NI\\
H&=&\frac{NI}{2{\pi}r}\tag{13}
\end{eqnarray}

ゆえに、(13)式より\(N\)本の電線に電流\(I{\mathrm{[A]}}\)が流れるとき、電線から半径\(r{\mathrm{[m]}}\)離れた点の磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
H&=&\frac{NI}{2{\pi}r}
\end{eqnarray}

環状ソレノイドの磁界の強さHの導出

【アンペアの周回積分の法則】環状ソレノイドの磁界の強さHの導出

巻数\(N\)、平均半径\(R{\mathrm{[m]}}\)(平均磁路長\(l=2{\pi}R{\mathrm{[m]}}\))の環状ソレノイドに電流\(I{\mathrm{[A]}}\)が流れるとき、環状ソレノイド内部の磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)をアンペアの周回積分の法則を用いて導出してみましょう。

step
1
『閉曲面\({{\partial}S}\)の微小部分\(dl\)×その箇所の磁界の強さ\(H\)』の総和を求める

平均半径\(R{\mathrm{[m]}}\)の箇所では磁界の強さが等しくなります。そのため、積分記号『\({\displaystyle\oint}\)』の外に出すことができます。ここで、この磁界の強さを\(H{\mathrm{[A/m]}}\)とすると、『\({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}\)』は次式となります。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}=H{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}\tag{14}
\end{eqnarray}

また、『\({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}\)』は半径\(R{\mathrm{[m]}}\)の円周の長さであるため、次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}d{\vec{l}}=2{\pi}R\tag{15}
\end{eqnarray}

(15)式を(14)式に代入すると、『閉曲面\({{\partial}S}\)の微小部分\(dl\)×その箇所の磁界の強さ\(H\)』の総和\(\left({\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}\right)\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}=H{\;}{\cdot}{\;}2{\pi}R\tag{16}
\end{eqnarray}

step
2
『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和を求める

『閉曲面\({{\partial}S}\)内部の電流』の総和は\(NI{\mathrm{[A]}}\)なので次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}=NI\tag{17}
\end{eqnarray}

step
3
①と②を『イコール(\(=\))』で結ぶ

(16)式と(17)式を(3)式に代入すると次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
{\displaystyle\oint}_{{\partial}S}{\vec{H}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{l}}&=&{\displaystyle\int}_{S}{\vec{J}}{\;}{\cdot}{\;}d{\vec{S}}\\
{\Leftrightarrow}H{\;}{\cdot}{\;}2{\pi}R&=&NI\\
H&=&\frac{NI}{2{\pi}R}\tag{17}
\end{eqnarray}

ゆえに、(17)式より巻数\(N\)、平均半径\(R{\mathrm{[m]}}\)(平均磁路長\(l=2{\pi}R{\mathrm{[A]}}\))の環状ソレノイドに電流\(I{\mathrm{[A]}}\)が流れるとき、環状ソレノイド内部の磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
H&=&\frac{NI}{2{\pi}R}
\end{eqnarray}

『アンペアの周回積分の法則』に関する問題

問題文

\(3\)本の無限に長い電線に、それぞれ\(2{\mathrm{[A]}}\)の電流が流れている時、電線から\(20{\mathrm{[cm]}}\)離れた点での磁界の強さを求めてみましょう。

回答

半径\(r=20{\mathrm{[cm]}}=0.2{\mathrm{[m]}}\)であり、本数\(N=3\)なので、(13)式に代入すると、

\begin{eqnarray}
H&=&\frac{NI}{2{\pi}r}\\
&=&\frac{3×2}{2{\pi}×0.2}\\
&{\approx}&4.77{\mathrm{[A/m]}}
\end{eqnarray}

となります。

まとめ

この記事ではアンペアの周回積分の法則ついて、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • 『アンペアの周回積分の法則』とは
  • 『アンペアの周回積分の法則』を用いて磁界の強さHを導出する方法
  • 『アンペアの周回積分の法則』に関する問題

お読み頂きありがとうございました。

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