この記事ではMOSFETの横型構造と縦型構造の違いと特徴について詳しく説明します。
MOSFETの構造の種類
MOSFETの構造の種類を示します。
MOSFETは1970年代から登場したパワー半導体です。MOSFETの構造は横型構造から縦型構造へ、そして、縦型構造のプレーナ構造から縦型構造のトレンチ構造へと変化していきました。
MOSFETの『横型構造』と『縦型構造』の違いと特徴
上図はMOSFETの横型構造と縦型構造(プレーナ構造)を示したものです。
ゲートソース間電圧VGSを印加すると、ゲート(G)の絶縁膜直下にP層内の電子が引き寄せられ、電子よるNチャネル領域(上図の赤色)が形成されます。
横型構造のMOSFET
横型構造のMOSFETでは、Nチャネル領域が形成されることによって、ドレイン(D)からソース(S)に横方向に電流が流れるようになります。ドレイン(D)→ソース(S)でも、ソース(S)→ドレイン(D)のどちらでも電流を流すことができます。
横型構造は、素子の表面の部分に電流が流れるため、オン抵抗が大きくなってしまいます。また高耐圧化も難しくなっています。
しかし、横型構造のMOSFETは低容量特性([低入力容量Ciss、低ゲート入力電荷量Qg]、[低帰還容量Crss、低ゲート-ドレイン間電荷量Qgd])という特徴があり、特に帰還容量Crssが非常に小さくなっています。そのため、高周波電力増幅器等ではこの横型構造のMOSFETがよく用いられています。
なお、MOSFETの動作原理を説明する場合には、この横型構造のMOSFETの図が良く用いられます。
縦型構造のMOSFET
縦型構造のMOSFETは、ソース(S)が上部にあり、ドレイン(D)が下部にあります。そのため、Nチャネル領域が形成されることによって、ドレイン(D)からソース(S)に縦方向に電流が流れるようになります。縦型構造もドレイン(D)→ソース(S)でも、ソース(S)→ドレイン(D)のどちらでも電流を流すことができます。
横型構造のMOSFETと比較すると、縦型構造のMOSFETはチップ全体に電流を流すことができるため、電流密度が高くなります。その結果、オン抵抗が低くなります。したがって、スイッチング用途ではこの縦型構造のMOSFETの方がよく用いられています。
しかし、横型構造のMOSFETと比較すると、入力容量Cissや帰還容量Crssが大きくなります。
また、縦型は高耐圧化と低オン抵抗化に適した構造です。中/高耐圧(VDSS=200V以上の素子)の多くはこの縦型構造のMOSFETとなっています。
補足
- P層は電子が不足している層ですが、電子をわずかに含みます。そのため、ゲートソース間電圧VGSを印加することによって、ゲート(G)の近くに電子によるNチャネル領域が形成されます。
- FETは電圧(電界)によって流れる電流を制御します。そのため、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)と呼ばれています。
まとめ
この記事ではMOSFETの『横型構造』と『縦型構造』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- MOSFETの『横型構造』と『縦型構造』の違い
- MOSFETの『横型構造』の特徴
- MOSFETの『縦型構造』の特徴
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