【発明が解決しようとする課題】では、【背景技術】で挙げた『従来技術』の問題点を記載した後に、『あなたの発明』の目的を説明します。『従来技術』と『あなたの発明』の構成や手法の違いを見つけ、『従来技術』では解決できないが、『あなたの発明』なら必ず解決できることが課題となります。従来技術に問題点があるからこそ、それを解決できるあなたの発明の進歩性が認められやすくなるのです。
ではこれから書き方について説明します。
書き方
①まず、『従来技術』の問題点を記載する
従来技術の問題点を挙げます。『しかしながら、・・・という問題(問題点)があった。』と始めているのが多いです。
注意:問題点は独立請求項によって解決できるものを書く
独立請求項(最も広い特許請求の範囲) に記載してある発明によって、解決できる課題を書きます。従属請求項に記載してある発明によって解決できる課題を記載してはいけません。
②次に『あなたの発明』の目的を提示する
『本発明は、Aすることを目的とする。』、『本発明は、BをせずにAをすることを目的とする。』のような書き方が多いです。『目的とする。』は『目的としている。』や『目的とするものである。』と書き方は様々あり、厳密な決まりはありません。
補足:『あなたの発明』の目的は、課題を解決することではなく、課題を解決できるものを提供すること
厳密には、『あなたの発明』の目的は、課題を解決することではなく、課題を解決できるものを提供することです。ここで、提供するものとは、独立請求項の末尾の○○装置や○○方法のことです。その○○装置や○○方法の前に発明の効果を要約した修飾語を記載します。
そのため、『本発明は、(発明の効果を要約した修飾語を記載)○○装置(○○方法)を提供することを目的とする。』のような書き方が良いと思われます。
注意:『従来技術』の問題点から離れた内容を書いてはいけない
従来技術の問題点として記載した内容とは関係のない課題を目的としてはいけません。『従来技術』の問題点を『あなたの発明』で解決するのです。
【発明が解決しようとする課題】の書き方一例
しかしながら、従来の○○装置においては、AをするときにBをしてしまうという問題があった。
本発明は、BせずにAをすることができる○○装置を提供することを目的とする。
その他の注意点
できる限り【背景技術】を自分の発明にしないこと
【背景技術】で挙げた従来技術については、必ず問題点を記載しなければいけません。従来技術に自分の発明を記載することで、自分の発明が持っている問題点を記載してしまうことになります。
【背景技術】が自分の発明の場合には、どうするべきか
【背景技術】が自分の発明しかなく、今回の発明が前回の発明の高性能化バージョン版の場合には、【背景技術】に自分の特許を記載するケースがあります。その場合に注意する点について説明します。
「問題があった」と記載しないこと
従来技術が自分の発明の場合には「問題があった」と記載してはいけません。自分の発明の問題点を認めてしまうことになります。自分の発明が従来技術の場合には「〇〇は改善の余地があった」などと書きましょう。
製造物責任(PL)法に気をつけること
PL法とは「製品の欠陥によって生命,身体又は財産に損害を被ったことを証明した場合に,被害者は製造会社などに対して損害賠償を求めることができる法律」です。例えば、【背景技術】で「××で構成された〇〇装置は、火を噴き、爆発することで使用者が大怪我する可能性があった。」などと記載すると、自分の発明には「欠陥」があったことを認めることになります。