この記事では電源の入力交流(AC)電流の計算方法について説明します。
入力交流(AC)電流の計算方法
上図において、電源に入力される入力交流電流\(i_{IN}\)の実行値\(I_{INRMS}\)の計算を行います。条件を以下に示します。
条件
- 入力交流電圧\(v_{IN}\)の実効値\(V_{INRMS}\):100V
- 出力電力\(P_{OUT}\):100W
- 電源効率\({\eta}\):90%
- 力率\({{\cos}{\phi}}\):0.8
出力電力\(P_{OUT}\)が100W、電源効率\({\eta}\)が90%なので、入力電力\(P_{IN}\)は以下の値となります。
\begin{eqnarray}
P_{IN}&=&\frac{P_{OUT}}{\eta}\\
&=&\frac{100}{0.9}\\
&{\approx}&111.1[W]
\end{eqnarray}
ここで、電源の入力部における皮相電力\(S\)、有効電力\(P\)(←今回は入力電力\(P_{IN}\)と同等)、無効電力\(Q\)の関係は下図のようになっています。
力率\({{\cos}{\phi}}\)が0.8なので、皮相電力\(S\)は、以下の値となります。
\begin{eqnarray}
S&=&\frac{P_{IN}}{{\cos}{\phi}}\\
&=&\frac{111.1}{0.8}\\
&{\approx}&138.9[VA]
\end{eqnarray}
以上より、入力交流電流\(i_{IN}\)の実行値\(I_{INRMS}\)は、以下の値となります。
\begin{eqnarray}
I_{INRMS}&=&\frac{S}{V_{INRMS}}\\
&=&\frac{123.5}{100}\\
&{\approx}&1.38[A]
\end{eqnarray}
補足
- 力率改善回路(PFC回路)が接続されていない場合、力率\({{\cos}{\phi}}\)は0.65程度となり低くなります。力率改善回路を接続することによって、力率\({{\cos}{\phi}}\)を0.95程度まで上げることができます。力率\({{\cos}{\phi}}\)を上げると、皮相電力\(P\)が減るので、電源の入力交流電流が低くなります。
- 電源の入力交流電流の最大値となるときは、入力交流電圧\(v_{IN}\)の実効値\(V_{INRMS}\)が最小値となるときです。入力交流電圧は-15%程度低下することがあるため、今回の場合だと、100Vから15%を引いた85Vを入力電圧\(V_{INRMS}\)の実効値\(V_{INRMS}\)の最小値と考えて、電源の入力交流電流\(i_{IN}\)の実行値\(I_{INRMS}\)の最大値を計算します。
- 電源の入力交流電流の実行値の最大値を計算することによって、ブレーカー、コネクタ、入力ケーブルなどの選定の目安を立てることができます。