交流回路において、
- 抵抗にかかる電圧の振幅を\(V_M{\mathrm{[V]}}\)
- 抵抗にかかる電圧の実効値を\(V_{RMS}{\mathrm{[V]}}\)
- 抵抗に流れる電流の振幅を\(I_M{\mathrm{[A]}}\)
- 抵抗に流れる電流の実効値を\(I_{RMS}{\mathrm{[A]}}\)
とすると、抵抗の消費電力\(P_R{\mathrm{[W]}}\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
P_R=\frac{V_MI_M}{2}=V_{RMS}I_{RMS}{\mathrm{[W]}}
\end{eqnarray}
この記事では、上記の式の導出方法を『計算』と『波形』で説明します。図を用いて分かりやすく説明するように心掛けていますので、ご参考になれば幸いです。
交流回路における抵抗の消費電力を『計算』で導出
まず、交流回路における抵抗の消費電力\(P_R\)の公式を『計算』で導出する方法について説明します。
抵抗の消費電力\(P_R\)は下記の手順(ステップ1,2)で求めることができます。
抵抗の消費電力を求める手順
- 抵抗の瞬時電力\(p_R\)を求める。
- 瞬時電力\(p_R\)を1周期で積分して平均化する。
ではこれから、抵抗の消費電力\(P_R\)を計算してみましょう。
上図に示しているのは、交流電源\(v\)に抵抗のみを接続している回路です。
交流電源\(v\)の電圧の最大値を\(V_M{\mathrm{[V]}}\)、角周波数を\({\omega}{\mathrm{[rad/s]}}\)、時間を\(t{\mathrm{[s]}}\)とすると、交流電源\(v\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
v=V_M{\sin}{\omega}t{\;}{\mathrm{[V]}}\tag{1}
\end{eqnarray}
上図に示している回路は交流電源\(v\)に抵抗のみを接続しています。そのため、抵抗にかかる電圧\(v_R\)は交流電源\(v\)と等しくなるため、次式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
v_R=v=V_M{\sin}{\omega}t{\;}{\mathrm{[V]}}\tag{2}
\end{eqnarray}
「抵抗に流れる電流\(i_R\)」は「抵抗にかかる電圧\(v_R\)」と位相が同じになります。そのため、抵抗に流れる電流の最大値を\(I_M{\mathrm{[A]}}\)とすると、抵抗に流れる電流\(i_R\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
i_R=I_M{\sin}{\omega}t{\;}{\mathrm{[A]}}\tag{3}
\end{eqnarray}
抵抗の瞬時電力\(p_R{\mathrm{[W]}}\)は「(2)式の\(v_R\)」と「(3)式の\(i_R\)」の積となるため、次式で表されます。
\begin{eqnarray}
p_R&=&v_R{\;}{\cdot}{\;}i_R\\
\\
&=&V_M{\sin}{\omega}t{\;}{\cdot}{\;}I_M{\sin}{\omega}t\\
\\
&=&V_MI_M{\sin}^2{\omega}t{\;}{\mathrm{[W]}}\tag{4}
\end{eqnarray}
ここで、(4)式を少し整理してみましょう。
(4)式に三角関数の倍角公式を用いると、抵抗の瞬時電力\(p_R{\mathrm{[W]}}\)は次式に変形することができます。
\begin{eqnarray}
p_R&=&V_MI_M{\sin}^2{\omega}t\\
\\
&=&V_MI_M{\;}{\cdot}{\;}\frac{1-{\cos}2{\omega}t}{2}\\
\\
&=&\frac{V_MI_M}{2}(1-{\cos}2{\omega}t){\;}{\mathrm{[W]}}\tag{5}
\end{eqnarray}
【参考】三角関数の倍角公式
\begin{eqnarray}
{\cos}2α&=&1-2{\sin}^2α\\
\\
{\Leftrightarrow}{\sin}^2α&=&\frac{1-{\cos}2α}{2}
\end{eqnarray}
(5)式を抵抗にかかる電圧\(v_R\)の1周期\(T\)で積分して、平均したものが抵抗の消費電力(平均電力)\(P_R{\mathrm{[W]}}\)となります。そのため、抵抗の消費電力\(P_R\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
P_R&=&\frac{1}{T}{\displaystyle\int}_0^Tp_Rdt\\
\\
&=&\frac{1}{T}{\displaystyle\int}_0^T\frac{V_MI_M}{2}(1-{\cos}2{\omega}t)dt{\;}{\mathrm{[W]}}\tag{6}
\end{eqnarray}
ここで、\({\omega}=2{\pi}f\)を用いると、周期\(T\)は次式で表すことができます。
\begin{eqnarray}
T=\frac{1}{f}=\frac{2{\pi}}{{\omega}}\tag{7}
\end{eqnarray}
(7)式を(6)式に代入すると、抵抗の消費電力\(P_R\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
P_R&=&\frac{1}{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}{\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}\frac{V_MI_M}{2}(1-{\cos}2{\omega}t)dt\\
\\
&=&\frac{{\omega}}{2{\pi}}{\;}{\cdot}{\;}\frac{V_MI_M}{2}{\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}(1-{\cos}2{\omega}t)dt\\
\\
&=&\frac{{\omega}V_MI_M}{4{\pi}}\left({\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}1{\;}dt-{\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}{\cos}2{\omega}t{\;}dt\right){\mathrm{[W]}}\tag{8}
\end{eqnarray}
ここで、(8)式の「\({\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}1{\;}dt\)」と「\({\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}{\cos}2{\omega}t{\;}dt\)」を別々に求めてみましょう。
「\({\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}1{\;}dt\)」を計算すると、次式となります。
\begin{eqnarray}
{\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}1{\;}dt=\left[t\right]_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}=\frac{2{\pi}}{{\omega}}-0=\frac{2{\pi}}{{\omega}}\tag{9}
\end{eqnarray}
「\({\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}{\cos}2{\omega}t{\;}dt\)」を計算すると、次式となります。
\begin{eqnarray}
{\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}{\cos}2{\omega}t{\;}dt&=&\left[\frac{{\sin}2{\omega}t}{2{\omega}}\right]_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}\\
\\
&=&\frac{{\sin}\left(2{\omega}{\;}{\cdot}{\;}\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}\right)}{2{\omega}}-\frac{{\sin}\left(2{\omega}{\;}{\cdot}{\;}0\right)}{2{\omega}}\\
\\
&=&\frac{{\sin}4{\pi}}{2{\omega}}-\frac{{\sin}0}{2{\omega}}\\
\\
&=&\frac{0}{2{\omega}}-\frac{0}{2{\omega}}\\
\\
&=&0\tag{10}
\end{eqnarray}
(9)式と(10)式を(8)式に代入すると、抵抗の消費電力\(P_R\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
P_R&=&\frac{{\omega}V_MI_M}{4{\pi}}\left({\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}1{\;}dt-{\displaystyle\int}_0^{\displaystyle\frac{2{\pi}}{{\omega}}}{\cos}2{\omega}t{\;}dt\right)\\
\\
&=&\frac{{\omega}V_MI_M}{4{\pi}}\left(\frac{2{\pi}}{{\omega}}-0\right)\\
\\
&=&\frac{V_MI_M}{2}{\mathrm{[W]}}\tag{11}
\end{eqnarray}
ここで、正弦波の交流回路において、抵抗にかかる電圧の「振幅\(V_M{\mathrm{[V]}}\)」と「実効値\(V_{RMS}{\mathrm{[V]}}\)」、抵抗に流れる電流の「振幅\(I_M{\mathrm{[A]}}\)」と「実効値\(I_{RMS}{\mathrm{[A]}}\)」には次式の関係があります。
\begin{eqnarray}
V_M&=&\sqrt{2}V_{RMS}{\mathrm{[V]}}\tag{12}\\
\\
I_M&=&\sqrt{2}I_{RMS}{\mathrm{[A]}}\tag{13}
\end{eqnarray}
(12)式と(13)式を(11)式に代入すると、抵抗の消費電力\(P_R\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
P_R=\frac{V_MI_M}{2}=\frac{\sqrt{2}V_{RMS}{\;}{\cdot}{\;}\sqrt{2}I_{RMS}}{2}=V_{RMS}I_{RMS}{\mathrm{[W]}}\tag{14}
\end{eqnarray}
このように計算すれば、交流回路における抵抗の消費電力\(P_R\)の公式を導出することができます。
では次に、交流回路における抵抗の消費電力\(P_R\)の公式を『波形』で導出する方法について説明します。
補足
- 消費電力は『有効電力』とも呼ばれています。
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交流回路における抵抗の消費電力を『波形』で導出
先ほど、「抵抗にかかる電圧\(v_R\)」と「抵抗に流れる電流\(i_R\)」と「抵抗の瞬時電力\(p_R\)」を計算で求めました。
- 抵抗にかかる電圧\(v_R\)
\begin{eqnarray}
v_R=V_M{\sin}{\omega}t{\;}{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray} - 抵抗に流れる電流\(i_R\)
\begin{eqnarray}
i_R=I_M{\sin}{\omega}t{\;}{\mathrm{[A]}}
\end{eqnarray} - 抵抗の瞬時電力\(p_R\)
\begin{eqnarray}
p_R=\frac{V_MI_M}{2}(1-{\cos}2{\omega}t){\mathrm{[W]}}
\end{eqnarray}
これらの式を波形で描くと上図のようになります。
「抵抗の瞬時電力\(p_R\)」は「\(\displaystyle\frac{V_MI_M}{2}\)」を中心として、最大値が「\(V_MI_M\)」で最小値が「\(0\)」の正弦波となり、周波数は「抵抗にかかる電圧\(v_R\)」や「抵抗に流れる電流\(i_R\)」の2倍となります。そのため、「抵抗の瞬時電力\(p_R\)」の1周期は\(\displaystyle\frac{T}{2}\)となります。
抵抗の瞬時電力\(p_R\)の平均値が、抵抗の消費電力\(P_R\)となります。
ここで、「抵抗の瞬時電力\(p_R\)」の波形を見ると、「\(\displaystyle\frac{V_MI_M}{2}\)」を中心として、「\(\displaystyle\frac{V_MI_M}{2}\)の上側の面積」と「\(\displaystyle\frac{V_MI_M}{2}\)の下側の面積」は等しくなります。そのため、「抵抗の瞬時電力\(p_R\)」を平均すると「\(\displaystyle\frac{V_MI_M}{2}\)」になります。すなわち、抵抗の消費電力\(P_R\)が「\(P_R=\displaystyle\frac{V_MI_M}{2}{\mathrm{[W]}}\)」になるということになります。
補足
- (6)式では抵抗にかかる電圧\(v_R\)の1周期\(T\)で積分して、平均することで、抵抗の消費電力\(P_R\)を求めましたが、抵抗の瞬時電力\(p_R\)の1周期\(\displaystyle\frac{T}{2}\)で積分して、平均しても、抵抗の消費電力\(P_R\)を求めることができます。
まとめ
この記事では『交流回路における抵抗の消費電力』について、以下の内容を説明しました。
- 交流回路における抵抗の消費電力(計算で公式を導出)
- 交流回路における抵抗の消費電力(波形で公式を導出)
お読み頂きありがとうございました。
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