この記事では『RLC並列共振回路』について
- RLC並列共振回路のQ値とは
- RLC並列共振回路のQ値の「導出方法」
- 「Q値」と「インダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)に流れる電流」の関係
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
RLC並列共振回路のQ値とは
Q値とは周波数特性の鋭さ(尖鋭度)を表す値です。Q値が大きいと特性が鋭くなり、小さいと特性が緩やかになります。
上図にRLC並列共振回路に流れる電流の大きさ\(I\)の周波数特性を示しています。RLC並列共振回路は、抵抗\(R\)とインダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)を並列接続した回路であり、インダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)が共振する角周波数\({\omega}_0\left(=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}}\right)\)で電流の大きさ\(I\)が最小値\(I_{MIN}\)になります。
このRLC並列共振回路において、Q値は次式で表されます(次式の導出方法については後ほど説明します)。
RLC並列共振回路の『Q値』
\begin{eqnarray}
Q=R\sqrt{\frac{C}{L}}=\frac{R}{{\omega}_0L}={\omega}_0CR\tag{1}
\end{eqnarray}
上式において、\({\omega}_0\)は共振角周波数、\(R\)は抵抗の抵抗値、\(L\)はインダクタの自己インダクタンス、\(C\)はコンデンサの静電容量となります。
補足
- Qは「Quality factor(品質要素)」のQからとった記号です。
- Q値は「共振回路の良さ(共振回路の損失の少なさ)」を表す指標です。RLC並列共振回路の場合、抵抗値\(R\)が大きいほど、Q値が大きくなります。それは、抵抗値\(R\)が大きいほど、抵抗に流れる電流\(I_R\)が小さくなり、抵抗に流れる電流\(I_R\)によって生じる損失が小さくなるからです。
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RLC並列共振回路のQ値の導出
RLC並列共振回路は上図に示すように、抵抗\(R\)とインダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)を並列接続した回路です。抵抗\(R\)の抵抗値を\(R{\mathrm{[{\Omega}]}}\)、インダクタ\(L\)のインダクタンスを\(L{\mathrm{[H]}}\)、コンデンサ\(C\)の静電容量を\(C{\mathrm{[F]}}\)とします。
RLC並列共振回路におけるQ値の定義は「共振時にインダクタ\(L\)に流れる電流の大きさ\(I_L\)(またはコンデンサ\(C\)に流れる電流の大きさ\(I_C\))」と「共振時に抵抗\(R\)に流れる電流の大きさ\(I_R\)」の比となります。この定義を式で書くと、RLC並列共振回路のQ値は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
Q=\frac{I_L}{I_R}=\frac{I_C}{I_R}\tag{2}
\end{eqnarray}
ここで、共振角周波数\({\omega}_0\)の時に「抵抗\(R\)に流れる電流の大きさ\(I_R\)」と「インダクタ\(L\)に流れる電流の大きさ\(I_L\)」と「コンデンサ\(C\)に流れる電流の大きさ\(I_C\)」を求めてみましょう。
- 抵抗\(R\)に流れる電流の大きさ\(I_R\)
- 抵抗\(R\)にかかる電圧の大きさ\(V_R\)は電源電圧の大きさ\(V\)となるため、抵抗\(R\)に流れる電流の大きさ\(I_R\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_R=\frac{V_R}{R}=\frac{V}{R}\tag{3}
\end{eqnarray}
- 抵抗\(R\)にかかる電圧の大きさ\(V_R\)は電源電圧の大きさ\(V\)となるため、抵抗\(R\)に流れる電流の大きさ\(I_R\)は次式で表されます。
- インダクタ\(L\)に流れる電流の大きさ\(I_L\)
- インダクタ\(L\)にかかる電圧の大きさ\(V_L\)は電源電圧の大きさ\(V\)となります。また、インダクタ\(L\)のリアクタンスの大きさ\(X_L\)は「\(X_L={\omega}L\)」で表されます。そのため、共振角周波数\({\omega}_0\)の時、インダクタ\(L\)に流れる電流の大きさ\(I_L\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_L=\frac{V_L}{X_L}=\frac{V}{{\omega}_0L}\tag{4}
\end{eqnarray}
- インダクタ\(L\)にかかる電圧の大きさ\(V_L\)は電源電圧の大きさ\(V\)となります。また、インダクタ\(L\)のリアクタンスの大きさ\(X_L\)は「\(X_L={\omega}L\)」で表されます。そのため、共振角周波数\({\omega}_0\)の時、インダクタ\(L\)に流れる電流の大きさ\(I_L\)は次式で表されます。
- コンデンサ\(C\)に流れる電流の大きさ\(I_C\)
- コンデンサ\(C\)にかかる電圧の大きさ\(V_C\)は電源電圧の大きさ\(V\)となります。また、コンデンサ\(C\)のリアクタンスの大きさ\(X_C\)は「\(X_C=\displaystyle\frac{1}{{\omega}C}\)」で表されます。そのため、共振角周波数\({\omega}_0\)の時、コンデンサ\(C\)に流れる電流の大きさ\(I_C\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_C=\frac{V_C}{X_C}=\frac{V}{\displaystyle\frac{1}{{\omega}_0C}}={\omega}_0CV\tag{5}
\end{eqnarray}
- コンデンサ\(C\)にかかる電圧の大きさ\(V_C\)は電源電圧の大きさ\(V\)となります。また、コンデンサ\(C\)のリアクタンスの大きさ\(X_C\)は「\(X_C=\displaystyle\frac{1}{{\omega}C}\)」で表されます。そのため、共振角周波数\({\omega}_0\)の時、コンデンサ\(C\)に流れる電流の大きさ\(I_C\)は次式で表されます。
(2)~(5)式より、RLC並列共振回路のQ値は次式となります。
\begin{eqnarray}
Q&=&\frac{I_L}{I_R}=\frac{\displaystyle\frac{V}{{\omega}_0L}}{\displaystyle\frac{V}{R}}=\frac{R}{{\omega}_0L}\tag{6}\\
\\
Q&=&\frac{I_C}{I_R}=\frac{{\omega}_0CV}{\displaystyle\frac{V}{R}}={\omega}_0CR\tag{7}\\
\end{eqnarray}
また、(6)式または(7)式において、「\({\omega}_0=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}}\)」を用いると次式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
Q=R\sqrt{\frac{C}{L}}\tag{8}
\end{eqnarray}
これで、RLC並列共振回路のQ値の導出を終わります。
「Q値」と「インダクタLとコンデンサCに流れる電流」の関係
(6)式より、共振角周波数\({\omega}_0\)の時、インダクタ\(L\)に流れる電流の大きさ\(I_L\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
I_L=Q×I_R\tag{9}
\end{eqnarray}
同様に、(7)式より、コンデンサ\(C\)に流れる電流の大きさ\(I_C\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
I_C=Q×I_R\tag{10}
\end{eqnarray}
したがって、Q値は抵抗\(R\)に流れる電流の大きさ\(I_R\)の何倍の電流がインダクタ\(L\)またはコンデンサ\(C\)に流れているかを表す値でもあります。Q値が大きければ大きいほど、インダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)に流れる電流が大きくなります。
ここで、もう少しRLC並列共振回路について深掘りしてみましょう。冒頭でRLC並列共振回路は「インダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)が共振する角周波数\({\omega}_0\left(=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}}\right)\)で電流の大きさ\(I\)が最小値\(I_{MIN}\)になる」と説明しましたが、この\(I_{MIN}\)の値を導出します。
RLC並列共振回路の合成アドミタンス\({\dot{Y}}\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
{\dot{Y}}&=&\frac{1}{R}+\frac{1}{j{\omega}L}+j{\omega}C\\
\\
&=&\frac{1}{R}+j\left({\omega}C-\frac{1}{{\omega}L}\right)\tag{11}
\end{eqnarray}
上式において、\({\omega}\)は角周波数(角速度とも呼ばれる)であり、\({\omega}=2{\pi}f\)の関係があります。
また、RLC並列共振回路の合成アドミタンスの大きさ\(Y\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
Y=|{\dot{Y}}|=\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left({\omega}C-\displaystyle\frac{1}{{\omega}L}\right)^2}\tag{12}
\end{eqnarray}
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したがって、RLC並列共振回路に流れる電流の大きさ\(I\)は、電源電圧の大きさを\(V\)とすると次式で表されます。
\begin{eqnarray}
I=VY=V\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left({\omega}C-\displaystyle\frac{1}{{\omega}L}\right)^2}\tag{13}
\end{eqnarray}
インダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)が共振する角周波数(共振角周波数)\({\omega}_0\left(=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}}\right)\)の時、次式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
{\omega}_0&=&\frac{1}{\sqrt{LC}}\\
\\
{\Leftrightarrow}{{\omega}_0}^2&=&\frac{1}{LC}\\
\\
{\Leftrightarrow}{{\omega}_0}L&=&\frac{1}{{{\omega}_0}C}\\
\\
{\Leftrightarrow}{\omega}_0C-\displaystyle\frac{1}{{\omega}_0L}&=&0\tag{14}
\end{eqnarray}
インダクタ\(L\)のリアクタンス\(X_L\)は\(X_L={\omega}L\)です。一方、コンデンサ\(C\)のリアクタンス\(X_C\)は\(X_C=\displaystyle\frac{1}{{\omega}C}\)です。(14)式から分かるように、共振角周波数\({\omega}_0\)では「インダクタ\(L\)のリアクタンス\(X_L\)」と「コンデンサ\(C\)のリアクタンス\(X_C\)」が等しくなります。
共振角周波数\({\omega}_0\)の時、RLC並列回路に流れる電流の大きさ\(I\)が最小値\(I_{MIN}\)となり、\(I_{MIN}\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
I_{MIN}&=&V\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left({\omega}_0C-\displaystyle\frac{1}{{\omega}_0L}\right)^2}\\
\\
&=&V\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+0^2}\\
\\
&=&\frac{V}{R}\tag{15}
\end{eqnarray}
ここで、(3)式と(15)式を見て見ると、\(I_R\)と\(I_{MIN}\)が同じ値になっていることが分かります。すなわち、(9)式と(10)式は次式に変形することができます。
\begin{eqnarray}
I_L&=&Q×I_R=Q×I_{MIN}\tag{16}\\
\\
I_C&=&Q×I_R=Q×I_{MIN}\tag{17}
\end{eqnarray}
したがって、Q値は共振時において(共振角周波数\({\omega}_0\)の時において)、電源から流れる電流の大きさ\(I_{MIN}\)の何倍の電流がインダクタ\(L\)またはコンデンサ\(C\)に流れているかを表す値でもあります。Q値が大きければ大きいほど、インダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)に流れる電流が大きくなります。
まとめ
この記事では『RLC並列共振回路』について、以下の内容を説明しました。
- RLC並列共振回路のQ値とは
- RLC並列共振回路のQ値の「導出方法」
- 「Q値」と「インダクタ\(L\)とコンデンサ\(C\)に流れる電流」の関係
お読み頂きありがとうございました。
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