この記事では鉛フリーはんだで発生する『ウィスカ』について
- 鉛フリーはんだの「ウィスカ」とは
- ウィスカの「歴史」
- ウィスカの「メカニズム」と「対策」
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
鉛フリーはんだの「ウィスカ」とは
鉛フリーはんだで発生する問題の中に「ウィスカ」というものがあります。
ウィスカとは、めっき皮膜の表面から発生するヒゲ状の金属結晶です。スズめっきや亜鉛めっきからウィスカが発生することが知られています。
ウィスカは時間とともにゆっくりと成長し、長いもので数mmになります。この成長したウィスカが隣接する部品リードやパターンに接触すると、ショートを引き起こし、電子機器が正常に動作をしなくなる可能性があります。最悪の場合、電子機器が故障してしまうこともあります。
補足
- ウィスカは人間の毛髪の10~100倍も細いので、肉眼ではほぼ見ることができません。
- ウィスカは英語では「Whisker」と書きます。「ホイスカ」と発音されることもありますが、英語発音からは「ウィスカ」が正しいです。
- ウィスカは「猫のヒゲ」や「ヒゲ結晶」とも呼ばれることがあります。
ウィスカの「歴史」
1946年に米国のCobbさんによって、ラジオのバリアブルコンデンサに使われていた「カドミウムめっき」からウィスカが発生し、市場で短絡故障が発生したと報じられました。
また、1950年頃、アメリカのベル研究所が電話回路用コンデンサの故障を調査したところ、スズ(Sn)からウィスカが発生することが発見されました。その後、スズに鉛(Pb)を添加すると、ウィスカの発生が抑制できることが分かりました。そのため、2000年代前半まで多くの電子部品にはスズに鉛を添加し、ウィスカの発生を抑えていました。
しかし、現在はRoHSなど電子機器の環境対応により、鉛を使用していない鉛フリーはんだが使用されるようになり、再びウィスカによる短絡故障が問題視されるようになりました。
ウィスカの「メカニズム」と「対策」
接触抵抗を減少させるために、端子やリードの銅素材にスズめっきなどの表面処理を施す場合があります。
しかし、銅素材の上にスズめっきをしている場合、銅の拡散により、スズの層に圧縮応力が発生します。この圧縮応力がスズをヒゲ状に成長させるウィスカの原因と言われています。
対策としては、銅素材とスズめっきとの間にニッケル(Ni)めっき皮膜を付けることで、スズめっきへの銅の拡散が抑制され、ウィスカの発生防止に効果があります。また、スズめっきの厚さを厚くしてもウィスカの発生防止に効果があります。
補足
- ウィスカは「温度」「湿度」「応力」によって発生が加速されると言われています。
まとめ
この記事では、鉛フリーはんだで発生する『ウィスカ』について、以下の内容を説明しました。
- 鉛フリーはんだの「ウィスカ」とは
- ウィスカの「歴史」
- ウィスカの「メカニズム」と「対策」
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