ノートンの定理の例題

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この記事ではノートンの定理を用いた例題を解いています。

そもそもノートンの定理って何?」という方は以下の記事で詳しく説明していますので、ご参考になれば幸いです。

ノートンの定理とは?分かりやすく説明します!
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ノートンの定理の例題

ノートンの定理において、抵抗\(R\)にかかる電圧\(V\)は下記の手順(ステップ1~6)で求めることができます。

ノートンの定理を用いて電圧を求める手順

  1. 電圧を求めたい抵抗\(R\)の両端に端子Aと端子Bを割り当てる
  2. 端子A-B間を開放した時の合成コンダクタンス\(G_O\)を求める
  3. 端子A-B間を短絡した時に流れる短絡電流\(I_O\)を求める
  4. 抵抗\(R\)のコンダクタンス\(G\)を求める
  5. 電流源\(I_O\)と合成コンダクタンス\(G_O\)の等価回路に変換する
  6. ノートンの定理の公式に\(G_O\),\(I_O\),\(G\)を代入して、電圧\(V\)を求める

では実際に様々な例題で抵抗\(R\)にかかる電圧\(V\)を求めてみましょう。

ノートンの定理の例題1

ノートンの定理の例題1

上図に示している回路において、抵抗\(R\)にかかる電圧\(V\)は何\({\mathrm{V}}\)でしょうか。ノートンの定理を用いて計算してみましょう。

電圧を求めたい抵抗\(R\)の両端に端子Aと端子Bを割り当てる

ノートンの定理の例題1(ステップ1)

上図に示すように、電圧を求めたい抵抗\(R\)の両端に端子Aと端子Bを割り当てます。

端子A-B間を開放した時の合成コンダクタンス\(G_O\)を求める

ノートンの定理の例題1(ステップ2)

端子A-B間を開放した時の合成コンダクタンス\(G_O\)を求めます。合成コンダクタンス\(G_O\)を求める際には、電圧源は短絡し、電流源は開放させて求めます。

抵抗\(R_1\),\(R_2\),\(R_3\)のコンダクタンス\(G_1\),\(G_2\),\(G_3\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
G_1&=&\frac{1}{R_1}=\frac{1}{2}{\mathrm{[S]}}\tag{1-1}
\\
G_2&=&\frac{1}{R_2}=\frac{1}{6}{\mathrm{[S]}}\tag{1-2}
\\
G_3&=&\frac{1}{R_3}=\frac{1}{3}{\mathrm{[S]}}\tag{1-3}
\end{eqnarray}

上図に示している回路の場合、電圧源を短絡させると、コンダクタンス\(G_1\)とコンダクタンス\(G_2\)が並列接続された回路となります。並列接続された回路の場合、合成コンダクタンス\(G_{12}\)は単純な足し算で計算することができるため、以下の値となります。

\begin{eqnarray}
G_{12}=G_1+G_2=\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}=\frac{R_1+R_2}{R_1R_2}=\frac{2+6}{2×6}=\frac{2}{3}{\mathrm{[S]}}\tag{1-4}
\end{eqnarray}

また、合成コンダクタンス\(G_{12}\)とコンダクタンス\(G_3\)は直列接続されています。直列接続された回路の場合、合成コンダクタンス\(G_O\)の逆数\(\displaystyle\frac{1}{G_O}\)は「各々のコンダクタンスの逆数の和」になるため、次式で表されます。

\begin{eqnarray}
\frac{1}{G_O}&=&\frac{1}{G_{12}}+\frac{1}{G_3}\\
\\
{\Leftrightarrow}G_O&=&\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{G_{12}}+\displaystyle\frac{1}{G_3}}=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{2}{3}}+\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{3}}}=\frac{1}{\displaystyle\frac{3}{2}+3}=\frac{2}{9}{\mathrm{[S]}}\tag{1-5}\\
\end{eqnarray}

コンダクタンスって何?

コンダクタンスとは抵抗の逆数です。

コンダクタンスについては、下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。

【コンダクタンスとは】『単位』や『計算方法』などのまとめ!
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『アドミタンス』と『コンダクタンス』と『サセプタンス』の違い!
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端子A-B間を短絡した時に流れる短絡電流\(I_O\)を求める

ノートンの定理の例題1(ステップ3)

端子A-B間を短絡した時に流れる短絡電流\(I_O\)を求めます。

端子A-B間を短絡すると、上図に示すような回路になります。「電流\(i_1\)のルート」と「電流\(i_2\)のルート」でキルヒホッフの第二法則を用いると次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
12&=&2(i_1+i_2)+3i_1\tag{1-6}\\
\\
12&=&2(i_1+i_2)+6i_2\tag{1-7}
\end{eqnarray}

(1-6)式と(1-7)式より電流\(i_1\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
i_1=2{\mathrm{[A]}}\tag{1-8}
\end{eqnarray}

短絡電流\(I_O\)は電流\(i_1\)と等しいので、以下の値となります。

\begin{eqnarray}
I_O=i_1=2{\mathrm{[A]}}\tag{1-9}
\end{eqnarray}

抵抗\(R\)のコンダクタンス\(G\)を求める

ノートンの定理の例題1(ステップ4)

コンダクタンスは抵抗の逆数なので、抵抗\(R\)のコンダクタンス\(G\)は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
G&=&\frac{1}{R}=\frac{1}{\displaystyle\frac{3}{2}}=\frac{2}{3}{\mathrm{[S]}}\tag{1-10}
\end{eqnarray}

電流源\(I_O\)と合成コンダクタンス\(G_O\)の等価回路に変換する

ノートンの定理の例題1(ステップ5)

ステップ2~4で求めた合成コンダクタンス\(G_O\)、短絡電流\(I_O\)、コンダクタンス\(G\)を用いると、上図に示すような「電流源\(I_O\)とコンダクタンス\(G_O\)が並列接続されている等価回路」に変換することができ、複雑な回路をシンプルにすることができます。

補足

ノートンの定理を用いて変換した等価回路は「ノートンの等価回路」と呼ばれています。

ノートンの定理の公式に\(G_O\),\(I_O\),\(G\)を代入して、電圧\(V\)を求める

ノートンの定理の例題1(ステップ6)

「電流源\(I_O\)とコンダクタンス\(G_O\)が並列接続されている等価回路」より、抵抗\(R\)にかかる電圧\(V\)は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
V=\frac{I_O}{G_O+G}\tag{1-11}
\end{eqnarray}

上式に、各値を代入すると、抵抗\(R\)にかかる電圧\(V\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
V=\frac{I_O}{G_O+G}=\frac{2}{\displaystyle\frac{2}{9}+\displaystyle\frac{2}{3}}=\frac{18}{2+6}=\frac{9}{4}=2.25{\mathrm{[V]}}\tag{1-12}
\end{eqnarray}

なお、抵抗\(R\)に流れる電流\(I\)はオームの法則より以下の値となります。

\begin{eqnarray}
I=\frac{V}{R}=\frac{\displaystyle\frac{9}{4}}{\displaystyle\frac{3}{2}}=1.5{\mathrm{[A]}}\tag{1-13}
\end{eqnarray}

【関連記事】テブナンの定理

なお、抵抗\(R\)に流れる電流\(I\)は『テブナンの定理』でも求めることができます。

『テブナンの定理』については下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。

テブナンの定理とは?分かりやすく説明します!
テブナンの定理の例題
テブナンの定理の証明

ノートンの定理の例題2

ノートンの定理の例題2

上図に示している回路において、抵抗\(R\)にかかる電圧\(V\)は何\({\mathrm{V}}\)でしょうか。ノートンの定理を用いて計算してみましょう。

電圧を求めたい抵抗\(R\)の両端に端子Aと端子Bを割り当てる

ノートンの定理の例題2(ステップ1)

上図に示すように、電圧を求めたい抵抗\(R\)の両端に端子Aと端子Bを割り当てます。

端子A-B間を開放した時の合成コンダクタンス\(G_O\)を求める

ノートンの定理の例題2(ステップ2)

端子A-B間を開放した時の合成コンダクタンス\(G_O\)を求めます。合成コンダクタンス\(G_O\)を求める際には、電圧源は短絡し、電流源は開放させて求めます。

抵抗\(R_1\),\(R_2\),\(R_3\),\(R_4\)のコンダクタンス\(G_1\),\(G_2\),\(G_3\),\(G_4\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
G_1&=&\frac{1}{R_1}=\frac{1}{4}{\mathrm{[S]}}\tag{2-1}
\\
G_2&=&\frac{1}{R_2}=\frac{1}{8}{\mathrm{[S]}}\tag{2-2}
\\
G_3&=&\frac{1}{R_3}=\frac{1}{8}{\mathrm{[S]}}\tag{2-3}
\\
G_4&=&\frac{1}{R_4}=\frac{1}{5}{\mathrm{[S]}}\tag{2-4}
\end{eqnarray}

上図に示している回路の場合、電圧源は短絡し、電流源は開放させると、コンダクタンス\(G_1\),\(G_2\),\(G_3\)が直列接続されています。直列接続された回路の場合、合成コンダクタンス\(G_{123}\)の逆数\(\displaystyle\frac{1}{G_{123}}\)は「各々のコンダクタンスの逆数の和」になるため、次式で表されます。

\begin{eqnarray}
\frac{1}{G_{123}}&=&\frac{1}{G_1}+\frac{1}{G_2}+\frac{1}{G_3}\\
\\
{\Leftrightarrow}G_{123}&=&\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{G_1}+\displaystyle\frac{1}{G_2}+\displaystyle\frac{1}{G_3}}=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{4}}+\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{8}}+\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{8}}}=\frac{1}{4+8+8}=\frac{1}{20}{\mathrm{[S]}}\tag{2-5}\\
\end{eqnarray}

また、合成コンダクタンス\(G_{123}\)とコンダクタンス\(G_4\)は並列接続されています。並列接続された回路の場合、合成コンダクタンス\(G_O\)は単純な足し算で計算することができるため、以下の値となります。

\begin{eqnarray}
G_O=G_{123}+G_4=\frac{1}{20}+\frac{1}{5}=\frac{1}{4}{\mathrm{[S]}}\tag{2-6}
\end{eqnarray}

端子A-B間を短絡した時に流れる短絡電流\(I_O\)を求める

ノートンの定理の例題2(ステップ3)

端子A-B間を短絡した時に流れる短絡電流\(I_O\)を求めます。

端子A-B間を短絡すると、上図に示すような回路になります。電流\(i_1\)は電流源\(I_1\)と同じ値になるため、以下の値となります。

\begin{eqnarray}
i_1=I_1=2{\mathrm{[A]}}\tag{2-7}
\end{eqnarray}

電流\(i_2\)のルート」でキルヒホッフの第二法則を用いると次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
V_1&=&R_1(i_2-i_1)+R_2i_2+R_3i_2\\
\\
{\Leftrightarrow}12&=&4(i_2-2)+8i_2+8i_2\\
\\
{\Leftrightarrow}20&=&20i_2\\
\\
{\Leftrightarrow}i_2&=&1{\mathrm{[A]}}\tag{2-8}
\end{eqnarray}

短絡電流\(I_O\)は電流\(i_2\)と等しいので、以下の値となります。

\begin{eqnarray}
I_O=i_2=1{\mathrm{[A]}}\tag{2-9}
\end{eqnarray}

抵抗\(R\)のコンダクタンス\(G\)を求める

ノートンの定理の例題2(ステップ4)

コンダクタンスは抵抗の逆数なので、抵抗\(R\)のコンダクタンス\(G\)は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
G&=&\frac{1}{R}=\frac{1}{4}{\mathrm{[S]}}\tag{2-10}
\end{eqnarray}

電流源\(I_O\)と合成コンダクタンス\(G_O\)の等価回路に変換する

ノートンの定理の例題2(ステップ5)

ステップ2~4で求めた合成コンダクタンス\(G_O\)、短絡電流\(I_O\)、コンダクタンス\(G\)を用いると、上図に示すような「電流源\(I_O\)とコンダクタンス\(G_O\)が並列接続されている等価回路」に変換することができ、複雑な回路をシンプルにすることができます。

ノートンの定理の公式に\(G_O\),\(I_O\),\(G\)を代入して、電圧\(V\)を求める

ノートンの定理の例題2(ステップ6)

「電流源\(I_O\)とコンダクタンス\(G_O\)が並列接続されている等価回路」より、抵抗\(R\)にかかる電圧\(V\)は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
V=\frac{I_O}{G_O+G}\tag{2-11}
\end{eqnarray}

上式に、各値を代入すると、抵抗\(R\)にかかる電圧\(V\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
V=\frac{I_O}{G_O+G}=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{4}}=2{\mathrm{[V]}}\tag{2-12}
\end{eqnarray}

なお、抵抗\(R\)に流れる電流\(I\)はオームの法則より以下の値となります。

\begin{eqnarray}
I=\frac{V}{R}=\frac{2}{4}=0.5{\mathrm{[A]}}\tag{2-13}
\end{eqnarray}

まとめ

この記事では『ノートンの定理の例題』について、説明しました。

お読み頂きありがとうございました。

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