この記事では『耐電圧試験(絶縁耐力試験)』について
- 『耐電圧試験(絶縁耐力試験)』とは
- 耐電圧試験(絶縁耐力試験)の『方法』や『試験電圧』
- 1.2倍の電圧を1秒間印加する理由
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
耐電圧試験(絶縁耐力試験)とは
耐電圧試験(絶縁耐力試験)とは、電気製品や部品が使用する電圧に対して、十分な絶縁耐力があるかどうか(絶縁破壊しないかどうか)を確認するための試験です。電気製品や部品の安全性を確かめるために必要な試験となります。
電気製品は多くの部品で構成されており、基本的には『導体(電気が流れる部分)』と『絶縁体(電気が流れない部品)』で構成されています。この絶縁体に絶縁不良があると、人が電気製品に触れたときに感電する可能性があります。また、絶縁不良の部分が発熱すれば火災を引き起こす可能性もあります。
そのため、電気製品には耐電圧試験(絶縁耐力試験)を行う必要があります。試験を行い、各国が定める安全規格(電圧法やIEC 60950-1など)を満たすことができれば、電気製品は絶縁耐力が十分であり、感電および火災を防止する上で必要条件を備えているということなります。
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補足
- 耐電圧試験は『絶縁耐力試験』や『Hi-Pot試験』とも呼ばれています。
- 耐電圧試験は英語では『Withstand Voltage Test』と書きます。
- 絶縁耐力試験は英語では『Dielectric Strength Test』と書きます。
- 「絶縁耐力」を「絶縁耐圧」と呼ぶ場合ありますが、JISでは「絶縁耐力」or「耐電圧」と記載されています。そのため、一般的には「絶縁耐力」or「耐電圧」と呼んだ方がよいと思われます。
- 耐電圧試験の判定基準
→試験中、絶縁部分を流れる電流(漏洩電流)が所定値(例えば、10mA)を超えた場合に「絶縁破壊」したとみなされます。
耐電圧試験(絶縁耐力試験)の方法
電気製品の「入力-FG間」や「入力-出力間」や「出力-FG間」の絶縁耐力は下記のように測定します。各国の安全規格により試験箇所や印加電圧が異なります。
- 入力-FG間
- 入力-出力間
- 出力-FG間
入力部のライブ(L)とニュートラル(N)をショートさせた後、『入力部』と『試験物の露出している金属部(シャーシ)』に試験電圧を印加し、漏洩電流を測定します。
入力部のライブ(L)とニュートラル(N)をショートさせた後、『入力部』と『人が触れることができる二次回路』に試験電圧を印加し、漏洩電流を測定します。
『人が触れることができる二次回路』と『試験物の露出している金属部(シャーシ)』に試験電圧を印加し、漏洩電流を測定します。
耐電圧試験(絶縁耐力試験)の試験電圧
電気用品安全法(電安法)では、電気機器の動作電圧により試験電圧が異なり、例えば、「入力-FG間」や「入力-出力間」に印加する電圧は下記のようになります。
- 動作電圧150V(実効値)以下の電気機器
- 動作電圧150V(実効値)を超える電気機器
1000Vの交流電圧を1分間印加
1500Vの交流電圧を1分間印加
補足
- 各国の安全規格によって、試験電圧等の条件が異なります。
- 耐電圧試験の試験電圧は、試験を行う機器の動作電圧によって規定されます。例えば、フライバックコンバータのトランスなどは動作電圧が高くなるため、試験機器の最大動作電圧を測定し、その動作電圧に基づいて、試験電圧を決めます。
【耐電圧試験(絶縁耐力試験)】1.2倍の電圧を1秒間印加する理由
耐電圧試験(絶縁耐力試験)は1分間電圧を印加するのが規定ですが、量産工程で1分間も電圧を印加すると、生産性に問題が生じる可能性があります。
そのため、実際の量産工程では「1分間の試験で規定される電圧値の1.2倍の電圧を1秒間印加する」ということが行われていることがあります。
この場合、印加電圧は下記のようになります。
- 動作電圧150V(実効値)以下の電気機器
- 動作電圧150V(実効値)を超える電気機器
1200V(1000V×1.2倍)の交流電圧を1秒間印加
1800V(1500V×1.2倍)の交流電圧を1秒間印加
補足
- 各国の安全規格によって、試験電圧等の条件が異なります。
まとめ
この記事では『耐電圧試験(絶縁耐力試験)』について、以下の内容を説明しました。
- 『耐電圧試験(絶縁耐力試験)』とは
- 耐電圧試験(絶縁耐力試験)の『方法』や『試験電圧』
- 1.2倍の電圧を1秒間印加する理由
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