【原理】アルミ電解コンデンサの『再起電圧』とは?

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アルミ電解コンデンサの端子間電圧が増加する再起電圧について説明します。

アルミ電解コンデンサの『再起電圧』とは

アルミ電解コンデンサを充電し、端子間を放電抵抗を介して短絡させた後、開放状態にして放置しておくと、端子間の電圧がしばらくして、再び上昇する現象が起こります。この時の上昇した電圧のことを再起電圧と言います(残留電圧とも言われます)。アルミ電解コンデンサには発生しますが、フィルムコンデンサでは生じないのが特徴です。

『再起電圧』が発生する原理

再起電圧

  1. アルミ電解コンデンサは上図のように電極間に誘電体を挟んでいる構成となっています。
  2. アルミ電解コンデンサに電圧を印可した場合、電極間にある誘電体内部に誘電分極が発生します。そのため、誘電体表面は、印可された電圧と正負反対方向に帯電します。誘電分極には、空間電荷分極原子分極電子分極等があります。原子分極電子分極は短時間で分極が終わります(分極が速い)が、空間電荷分極等は分極が終わるのに時間がかかります(分極が遅い)。つまり、誘電分極は分極のスピードがバラバラであり、電界に即応せず、時間的な遅れを示す分極が存在します。
  3. アルミ電解コンデンサを短絡させることで、端子間電圧を0Vになるまで放電します。
  4. 端子間を開放状態にすると、分極が遅い空間電荷分極等によって端子間に電圧が現れます。それが、再起電圧となります。

補足

  • 電極間に誘電体を挟んでいるため、大きな容量のコンデンサを作ることができます。
  • アルミ電解コンデンサの誘電体はアルミニウム表面の化成処理によって生成された酸化被膜です。

再起電圧の問題

この再起電圧が発生した状態で、端子間を短絡させると、大電流が流れることによってスパークが発生します。

このスパークは組立ラインの作業者の方に恐怖感を与えたり、回路のIC、CPU、メモリー等の定電圧駆動素子を破壊させる可能性があります。

そのため、使用前(実装前)には100Ω~1kΩ程度の抵抗をコンデンサの端子間に接続させ、蓄積された電荷を放電することが必要です。導体でショートさせると、大電流によって電界コンデンサの箔にダメージを与える可能性があるので控えてください。メーカーによっては、アルミニウム箔や導電性ゴムで端子間を短絡状態になるような状態にして出荷することで再起電圧の対策を行うようにすることも可能です。

補足

製造メーカーではアルミ電解コンデンサの検査後、一度放電してから出荷しています。しかし、その後の納入までの間に再起電圧は発生しているので、使用する際には注意してください。

その他

  • 再起電圧の発生は1~3週間程度でピークとなり、その後徐々に電圧が低下します。
  • 再起電圧はネジ端子形や基板自立型等の大型部品になるほど、大きくなる傾向があります。
  • 再起電圧は誘電体の厚さに関係するため、定格電圧が高いほど高くなります。
  • アルミ電解コンデンサの再起電圧によるIC等の破壊が起こるのは、1次側に使用する大きな容量の電解コンデンサの場合です。2次側やICの近くに配置する電解コンデンサの再起電圧ではICの破壊はおそらく生じません(1/2CV^2のエネルギーが小さいため)。
  • 表面実装品のアルミ電解コンデンサも再起電圧は発生します。

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