この記事では温度ヒューズについて
- 温度ヒューズとは
- 温度ヒューズの『構造』
- 温度ヒューズの『原理』
- 温度ヒューズの『使用場所』
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
温度ヒューズとは
温度ヒューズは温度がある値を超えると溶断する過熱保護素子です。電気機器の故障や内部回路のショートなどによって異常過熱した時、温度ヒューズ本体およびリード線で異常過熱を感知して回路を遮断します。
温度ヒューズにはアキシャルタイプとラジアルタイプがあります。
過熱保護素子には温度ヒューズ以外にも『サーモスタット』という素子があります。『サーモスタット』は過熱状態になると、一時的に回路を遮断することで保護を働かせ、過熱状態が解除されると、自動復帰します。ゆえに、『サーモスタット』が故障すると、回路を遮断することができなくなり、過熱から保護をすることができなくなります。
一方、温度ヒューズは金属片を溶断することで電気回路を遮断するため、過熱状態が解除されても、自動復帰しません。すなわち、溶断した場合、温度ヒューズそのものを交換しなければ、その電気機器を使うことができなくなります。そのため、温度ヒューズは過熱保護の「最後の安全装置」として位置づけられており、火災に至る可能性のある重大な事故を確実に防ぐ目的で使用されます。
補足
ヘアドライヤー、アイロン、電気コンロ、加湿器などの発熱する電気機器には温度ヒューズが内蔵されています。電気機器が故障して過熱され、温度ヒューズが溶断すると、電気機器が使えなくなります。電気機器はユーザーが温度ヒューズを交換できる構造にはなっていないため、溶断した場合、電気機器を破棄するか、メーカーに送付して故障を直してもらう必要があります。
温度ヒューズと電流ヒューズの違い
電流ヒューズは電流がある値を超えると溶断する素子です(ヒューズといえばこの電流ヒューズを指すことが多いです)。回路に過電流が流れると、自己発熱することで、ヒューズが溶断します。
一方、温度ヒューズは内部抵抗が非常に低いため、電流による自己発熱がありません。周囲の温度上昇によって、ヒューズが溶断します。
温度ヒューズの『構造』
温度ヒューズの構造は上図のようになっており、可溶合金、特殊樹脂、絶縁ケース、封止材、リード線で構成されています。
可溶合金は特殊樹脂でコーティングされており、リード線が接続されています。また、可溶合金を絶縁ケースで包囲し、気密性を保つために、封止材で封止しています。
なお、可溶合金、特殊樹脂、絶縁ケース、封止材は以下の成分で構成されています。
温度ヒューズの構成成分
- 可溶合金
- 特殊樹脂
- 絶縁ケース
- 封止材
スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)等を添加した合金
ロジンを主成分としたフラックス等
フェノール樹脂やセラミック等
エポキシ樹脂等
温度ヒューズの『原理』
温度ヒューズの周囲温度が上昇して、温度ヒューズの動作温度に達すると、可溶合金の融点に達して溶融します。
その後、『可溶合金の表面をコーティングしている特殊樹脂の作用』と『可溶合金の表面張力』によって、可溶合金がリード線の両端に凝縮して球状化し、回路が遮断されます。
このように、温度ヒューズは内部の可溶合金を溶かして物理的に切り離す方式のため、自動復帰しない素子となっています。
温度ヒューズの『使用場所』
温度ヒューズはコイルなどに使用されています。
温度ヒューズはトランスやモーターなどのコイルの表面に絶縁フィルム等で絶縁して接触させます。トランスの2次側ショートやモーターのロック等で過電流が流れると、素子が発熱します。温度ヒューズはこの発熱を感知して、保護しています。
また、スイッチング電源の突入防止用に用いられる温度ヒューズ抵抗にも温度ヒューズが内蔵されています。
なお、温度ヒューズ抵抗については以下の記事で説明していますので参考にしてください。
『温度ヒューズ抵抗』とは?構造やヒューズの溶断原理について
続きを見る
まとめ
この記事では温度ヒューズついて、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 温度ヒューズとは
- 温度ヒューズの『構造』
- 温度ヒューズの『原理』
- 温度ヒューズの『使用場所』
お読み頂きありがとうございました。
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