『ボルテージフォロワ』を分かりやすく解説!【オペアンプ】

スポンサーリンク


この記事ではボルテージフォロワについて

  • ボルテージフォロワの特徴
  • ボルテージフォロワと非反転増幅回路の関係
  • ボルテージフォロワの用途

を図を用いて説明しています。

ボルテージフォロワの特徴

ボルテージフォロワ

ボルテージフォロワはオペアンプを用いた回路の1つです。

ボルテージフォロワの回路図は上図のようになっています。入力を非反転入力端子(オペアンプの「+」の箇所)に接続し、出力を反転入力端子(オペアンプの「-」の箇所)に接続したとてもシンプルな回路となっています。

動作もシンプルです。入力をそのまま出力しています。すなわち、ボルテージフォロワの入力電圧を\(V_{IN}\)、出力電圧を\(V_{OUT}\)としたとき、入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)の関係式は以下のようになります。

ボルテージフォロワの式

\begin{eqnarray}
V_{OUT}=V_{IN}
\end{eqnarray}

また、ボルテージフォロワの特徴は下記となっています。

ボルテージフォロワの特徴

  • 増幅度が1(0dB)
  • →入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)が等しいため、増幅度が1(0dB)となります。

  • 入力インピーダンスが大きい
  • →入力をオペアンプの非反転入力端子(オペアンプの「+」の箇所)に接続しているため、入力インピーダンスが大きくなります。

  • 出力インピーダンスが小さい

ボルテージフォロワと非反転増幅回路の関係

ボルテージフォロワと非反転増幅回路の関係

ボルテージフォロワ非反転増幅回路の一種です。具体的には、増幅度が1の非反転増幅回路となります。

非反転増幅回路の『入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)の関係式』は以下の式となっています。

ボルテージフォロワの式

\begin{eqnarray}
V_{OUT}=\left(1+\frac{R_2}{R_1}\right)V_{IN}
\end{eqnarray}

上式において、『\(R_1=∞\)』、『\(R_2=0\)』となると、入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)が等しくなり、増幅度が1となります。『\(R_1=∞\)』とするためには\(R_1\)をオープン(無接続)、『\(R_2=0\)』とするためには\(R_2\)をショート(導線で接続)させます。すると、回路図もボルテージフォロワと同じになります。

オペアンプの非反転入力端子(オペアンプの「+」の箇所)反転入力端子(オペアンプの「-」の箇所)の電圧はイマジナリショート(仮想短絡)より、等しくなります。ボルテージフォロワは非反転入力端子は入力に、反転入力端子は出力に接続されているため、入力と出力が等しくなります。

イマジナリショート(仮想短絡)

【補足】イマジナリショート(仮想短絡)とは?

オペアンプは、非反転入力端子(オペアンプの「+」の箇所)反転入力端子(オペアンプの「-」の箇所)の電位差が0Vになるように動作を行っています。そのため、非反転入力端子と反転増幅端子の電圧は等しくなります。このように、短絡(ショート)していないのに、常に2つの入力端子の電圧が同じになることからイマジナリショート(仮想短絡)と呼ばれています。イマジナリショート(仮想短絡)は、バーチャルショート、仮想接地とも呼ばれています。後日、イマジナリショートについて詳しく記事を書きます。

ボルテージフォロワの用途

ボルテージフォロワは入力と出力が等しいので、増幅度が1(=0dB)の回路となります。

『入力をそのまま出力する回路に何の意味があるの?どこに使われるの?』と思う方が多いと思います。

このボルテージフォロワは増幅用途ではなく、『インピーダンス変換』と『回路の分離』に用いられています。

次に各用途について詳しく説明していきます。

インピーダンス変換

【ボルテージフォロワの用途】インピーダンス変換

上図に示すように、出力インピーダンスが1kΩで10Vの電圧を出力している信号源があるとします。この信号源に1kΩの負荷を接続すると、負荷にかかる電圧\(V_R\)は

\begin{eqnarray}
V_R=\frac{1{\mathrm{kΩ}}}{1{\mathrm{kΩ}}+1{\mathrm{kΩ}}}×10{\mathrm{V}}=5{\mathrm{V}}
\end{eqnarray}

となり、10Vの電圧を負荷に印加することができません。この場合、負荷に10Vを印加したいのに5Vしか印加されていないため、50%程度の誤差が生じています。このように、『出力インピーダンスが高い信号源』に『インピーダンスの低い負荷』を接続すると誤差が大きくなります。

言い換えると、信号源の電圧を正しく負荷に印加するには、『信号源の出力インピーダンス』より『負荷のインピーダンス』の方が十分高いことが必要となります。

このような場合にボルテージフォロワを用いると解決することができます。

ボルテージフォロワは入力インピーダンスが非常に高い(100MΩ前後)という特徴を持っています。そのため、負荷の前段にボルテージフォロワを接続することで、負荷側のインピーダンスの影響を無視することができます。

このような使い方を一般にバッファを呼びます。

信号源に電流が流れることによって信号源の出力インピーダンスによる電圧降下が起こってしまいます。そのため、ボルテージフォロワを接続して、信号源に流れる電流をほぼゼロにし、信号源の出力インピーダンスによる電圧降下を生じさせないようにしているのです。

回路の分離

【ボルテージフォロワの用途】回路の分離

上図に示すように、入力電圧\(V_{IN}=30{\mathrm{V}}\)の直流電圧源1kΩの2つの抵抗(\(R_1\),\(R_2\))で分圧している回路があるとします。この時、2つの抵抗の間を出力電圧\(V_{OUT}\)とした時、出力電圧\(V_{OUT}\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
V_{OUT}=\frac{R_2}{R_1+R_2}×V_{IN}=\frac{1{\mathrm{kΩ}}}{1{\mathrm{kΩ}}+1{\mathrm{kΩ}}}×30{\mathrm{V}}=15{\mathrm{V}}
\end{eqnarray}

この出力に負荷をつなげたときにどのようになるでしょうか。例えば、1kΩの負荷\(R_{OUT}\)がつながると、下側の合成抵抗\(R_3\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
R_3=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{R_2}+\displaystyle\frac{1}{R_{OUT}}}=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{1{\mathrm{kΩ}}}+\displaystyle\frac{1}{1{\mathrm{kΩ}}}}=0.5{\mathrm{kΩ}}
\end{eqnarray}

その結果、出力電圧\(V_{OUT}\)は以下の値となり、負荷\(R_{OUT}\)が接続されることによって出力電圧が変化してしまいます。

\begin{eqnarray}
V_{OUT}=\frac{R_3}{R_1+R_3}×V_{IN}=\frac{0.5{\mathrm{kΩ}}}{1{\mathrm{kΩ}}+0.5{\mathrm{kΩ}}}×30{\mathrm{V}}=10{\mathrm{V}}
\end{eqnarray}

このような場合に負荷の前段にボルテージフォロワを用いると、出力電圧の変化を解決することができます。

ボルテージフォロワは入力インピーダンスが非常に高い(100MΩ前後)という特徴を持っています。そのため、負荷の前段にボルテージフォロワを接続することで、分圧回路に影響を与えなくなります。その結果、出力電圧\(V_{OUT}\)は\(V_{OUT}=15{\mathrm{V}}\)となり、負荷の抵抗値の影響を無視することができます。

なお、負荷には以下の負荷電流が流れます。

\begin{eqnarray}
I_{OUT}=\frac{V_{OUT}}{R_{OUT}}=\frac{15{\mathrm{V}}}{1{\mathrm{kΩ}}}=15{\mathrm{mA}}
\end{eqnarray}

また、直流電圧源の入力電圧\(V_{IN}\)が変化すると、出力電圧\(V_{OUT}\)が変化しますが、負荷\(R_{OUT}\)が変化しても、出力電圧\(V_{OUT}\)は変化しません。

すなわち、電圧源と負荷の間にボルテージフォロワを接続すると、電圧源の変化は負荷に伝わりますが、負荷の変化は電圧源に影響を及ぼしません。これが、回路の分離となります。

まとめ

この記事ではボルテージフォロワついて、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • ボルテージフォロワの特徴
  • ボルテージフォロワと非反転増幅回路の関係
  • ボルテージフォロワの用途

お読み頂きありがとうございました。

当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。

全記事一覧

スポンサーリンク