【ソフトスタート機能とは?】原理や回路構成などを図を用いて解説!

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この記事では『ソフトスタート機能』について

  • ソフトスタート機能とは
  • ソフトスタート機能のメリット
  • ソフトスタート機能を用いない場合の突入電流
  • ソフトスタートの設定時間と充電電流の関係
  • ソフトスタートを実現する回路構成と原理

などを図を用いて分かりやすく説明しています。

ソフトスタート機能とは

ソフトスタート機能とは

ソフトスタート機能とは、出力電圧を徐々に増加させることで起動時の突入電流(ラッシュ電流)を防止する機能です。

ソフトスタート機能を行うメリットを下記に示します。

  • 出力コンデンサへの突入電流を抑える
  • 出力電圧のオーバーシュートを抑える
  • 入力電圧のドロップを抑える
  • 入力電圧が低い状態で通常動作を開始するのを防止する

各メリットについて順番に説明します。

出力コンデンサへの突入電流を抑える

出力コンデンサへの突入電流を抑える

コンバータ起動時、出力コンデンサへの突入電流が大きいほど、出力電圧が急峻に立ち上がります。ソフトスタート機能を用いることで、出力電圧を0Vから徐々に増加させるため、出力コンデンサへの突入電流を抑えることができます。

また、ソフトスタートの設定時間が長いほど、出力コンデンサへの突入電流を抑えることができます。しかし、出力電圧が設定電圧まで達するまでの時間が長くなるため、システムの応答性が悪化します。すなわち、『突入電流の大きさ』と『コンバータの応答性』はトレードオフになります。

そのため、ソフトスタートの設定時間を変更することで、応答性を調整します。なお、ソフトスタートの設定時間を短くすると、起動時にコンバータに流れる電流量が大きくなるため、過電流保護閾値や半導体素子の定格を超えないように気を付けてください。

出力電圧のオーバーシュートを抑える

出力電圧のオーバーシュートを抑える

ソフトスタート機能がない場合、出力コンデンサに突入電流が流れることで、出力電圧が急峻に立ち上がります。その結果、出力電圧にオーバーシュートが発生し、設定電圧よりも高くなってしまう可能性があります。設定電圧より大きなオーバーシュートが発生すると、コンバータに接続されている負荷を破壊してしてしまう可能性があります。

ソフトスタート機能を用いることで、出力電圧を徐々に立ち上げるため、オーバーシュートを抑制することができます。

入力電圧のドロップを抑える

入力電圧のドロップを抑える

ソフトスタート機能がない場合、コンバータの起動時に出力コンデンサへ突入電流が流れます。ということは、入力側にも突入電流が流れているということです。この突入電流が大きい場合、入力電圧がドロップして不具合を招く可能性があります。ソフトスタート機能を用いることで、入力側の突入電流も抑制するため、入力電圧のドロップを防ぐことができます。

入力電圧が低い状態で通常動作を開始するのを防止する

入力電圧が徐々に立ち上がるシステムの場合(入力部にロードスイッチがある場合など)、入力電圧が低い状態で通常動作を開始すると、入力電流を多く流す必要があるため、ロードスイッチやMOSFET等の半導体素子の定格を超えてしまう可能性があります

そのため、入力電圧の立ち上がり時間より、ソフトスタートの設定時間を長くすることで、上記の問題を解決することができます。

ソフトスタート機能を用いない場合の突入電流について

ソフトスタート機能を用いない場合の突入電流について

突入電流は『出力コンデンサを充電する電流(充電電流)』と『出力に接続された負荷に流れる電流(負荷電流)』の合計値となります。

なお、コンバータ起動時の突入電流の主な要因は、『出力コンデンサを充電する電流(充電電流)』となっています。そのため、大容量の出力コンデンサを接続している場合、突入電流が大きくなります。

突入電流が流れると、過電流保護により電源が停止してしまう、半導体素子の定格を超えて破損する等の問題が生じる可能性があります。このような問題を回避するためにソフトスタート機能を有しているコンバータがあります。

ソフトスタートの設定時間と充電電流の関係

ソフトスタートの設定時間と充電電流の関係

コンバータの出力を定電流源とした場合、充電電流の大きさは出力コンデンサの容量によって決まります。

例えば、出力電圧5Vのコンバータにおいて、出力ラインに接続されているコンデンサの容量が1000μFであるとします。

Q=CVから1000μFを5Vまで充電するにはQ=CV=1000μF×5V=5000μC=5mCの電荷が必要となります。

そのため、ソフトスタート設定時間が5msの場合には1Aの充電電流、ソフトスタート設定時間が50msの場合には0.1Aの充電電流となり、ソフトスタートの設定時間が長いほど、充電電流は小さくなります。

ソフトスタート機能がある場合でも負荷に大容量の出力コンデンサを接続している場合には注意!

ソフトスタート機能がある場合でも負荷に大容量の出力コンデンサを接続している場合には注意!

出力コンデンサ\(C_{OUT}\)の充電電流を\(I_{COUT}\)とすると、出力電圧\(v_{OUT}\)は以下の式で表されます。

\begin{eqnarray}
v_{OUT}=\frac{I_{COUT}}{C_{OUT}}×t
\end{eqnarray}

例えば、ソフトスタートの設定時間を\(T_{SOFT}\)とすると、出力電圧\(v_{OUT}\)は時間\(T_{SOFT}\)で設定電圧\(V_{OUT1}\)になるため、以下の式となります。

\begin{eqnarray}
V_{OUT1}=\frac{I_{COUT}}{C_{OUT}}×T_{SOFT}
\end{eqnarray}

上式より、ソフトスタート設定時間\(T_{SOFT}\)を一定とした場合、出力コンデンサの容量\(C_{OUT}\)が大きくなると、充電電流\(I_{COUT}\)が大きくなることが分かります。

この充電電流がコンバータの過電流閾値よりも大きくなると、コンバータは下記のような保護動作を行います。

  • ラッチ停止
  • 電流制限制御

電流制限制御を行うコンバータの場合、充電電流がコンバータの過電流閾値よりも大きくなると、出力コンデンサの充電電流\(I_{COUT}\)が小さくなるため、出力電圧\(v_{OUT}\)の傾斜は緩やかになり、立ち上がり時間が長くなります。その結果、ソフトスタートの設定時間内に充電が完了しなくなるという問題が生じます。

ソフトスタートを実現する回路構成と原理

回路構成

ソフトスタートを実現する回路構成

ソフトスタートを実現する回路構成は上図のようになっています(上図は一例です。ソフトスタートに関連する回路のみ記載しています)。

定電流源\(I_{REF}\)、ソフトスタートコンデンサ\(C_{SS}\)、MOSFET\(Q_1\)、基準電圧部\(V_{ref1}\)で構成されています。

ICの外部にコンデンサ\(C_{SS}\)を接続する場合と、コンデンサがIC内部に内蔵され、外付けコンデンサが不要なものもあります。後者の場合、一般的にはソフトスタートの設定時間はIC内部で固定され、ユーザーが任意に変更することができなくなります。

原理

ソフトスタートの原理

ソフトスタートの原理を

  1. 基準電圧\(v_{ref}\)の増加
  2. コンバータの出力電圧\(v_{OUT}\)の増加
  3. 出力コンデンサの充電電流\(I_{COUT}\)の増加

の順番で説明していきます。

基準電圧vrefの増加

コンバータ起動時、コンデンサ\(C_{SS}\)に定電流源から定電流\(I_{REF}\)を流すことで、コンデンサ\(C_{SS}\)が充電され、基準電圧\(v_{ref}\)が増加します。

コンデンサに蓄積される電荷量を\(Q\)とすると、以下の式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
Q={\displaystyle\int}idt=I_{REF}t=C_{SS}v_{ref}{\Leftrightarrow}v_{ref}=\frac{I_{REF}}{C_{SS}}t
\end{eqnarray}

上式より、定電流\(I_{REF}\)でコンデンサ\(C_{SS}\)を充電することで、基準電圧\(v_{ref}\)は直線的に増加することが分かります。基準電圧\(v_{ref}\)が\(V_{ref1}\)に達する時間がソフトスタートの設定時間\(T_{SOFT}\)となります。また、コンデンサ\(C_{SS}\)の容量が大きいほど、電圧の立ち上がりの傾きが緩やかになり、基準電圧\(v_{ref}\)が\(V_{ref1}\)に達するまでの時間が増加します。

基準電圧\(v_{ref}\)が\(V_{ref1}\)に達すると、クランプされ一定値となります。

コンバータ停止時、コンデンサ\(C_{SS}\)に並列に接続されているMOSFET\(Q_1\)がONすることで、コンデンサ\(C_{SS}\)の電荷が放電され、基準電圧\(v_{ref}\)が0Vとなります。そのため、次回のコンバータ起動時において、基準電圧\(v_{ref}\)は0Vから増加します。

コンバータの出力電圧VOUTの増加

上図の回路構成の場合、コンバータの出力電圧\(v_{OUT}\)は次式で表されます

\begin{eqnarray}
v_{OUT}=\left(1+\frac{R_1}{R_2}\right)×v_{ref}
\end{eqnarray}

基準電圧\(v_{ref}\)が直線的に増加するため、コンバータの出力電圧\(v_{OUT}\)も直線的に増加するということになります。基準電圧\(v_{ref}\)が\(V_{ref1}\)の時、出力電圧\(v_{OUT}\)は設定電圧\(V_{OUT1}\)となります。

出力コンデンサの充電電流ICOUTの増加

出力電圧\(v_{OUT}\)が直線的に増加するということは、

\begin{eqnarray}
Q=I_{COUT}t=C_{OUT}×v_{OUT}{\Leftrightarrow}v_{OUT}=\frac{I_{COUT}}{C_{OUT}}×t
\end{eqnarray}

より、出力コンデンサ\(C_{OUT}\)への充電電流\(I_{COUT}\)が定電流ということになります(傾きが一定)。この充電電流\(I_{COUT}\)の大きさは出力コンデンサ\(C_{OUT}\)の容量によって決まります。

出力電流は付加に依存することに注意!

出力電圧\(v_{OUT}\)の増加中において、負荷への出力電流は負荷インピーダンスに依存します。

  • 抵抗負荷の場合
  • 電圧に比例した負荷電流となるので、出力電圧が低い場合、出力電流も小さくなります。

  • 負性抵抗負荷やモータ負荷の場合
  • 出力電圧が低い場合でも大きな電流が流れる可能性があります。

このように、ソフトスタート時、出力電圧\(v_{OUT}\)はゆっくりと立ち上がりますが、出力電流\(I_{OUT}\)は制御されていないことに注意が必要です。出力電圧\(v_{OUT}\)は一定のペースで増加しますが、コンバータから出ている電流は『出力コンデンサを充電する電流(充電電流)』と『出力に接続された負荷に流れる電流(負荷電流)』の合計値なのでどのような電流が実際に流れているかは負荷に依存します。

そのため、ソフトスタートの設定時間を長くし、ゆっくりと出力電圧\(v_{OUT}\)を立ち上げたとしても、負荷電流があるため、どれくらいの電流が流れているかは実際に測定しなければ分かりません。

まとめ

この記事では『ソフトスタート機能』について、以下の内容を説明しました。

  • ソフトスタート機能とは
  • ソフトスタート機能のメリット
  • ソフトスタート機能を用いない場合の突入電流
  • ソフトスタートの設定時間と充電電流の関係
  • ソフトスタートを実現する回路構成と原理

お読み頂きありがとうございました。

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