抵抗の『ワンパルス限界電力』について!単発パルスにどれくらい耐えられる?

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抵抗の特性には、定格電力以外にワンパルス限界電力というものがあります。

ワンパルス限界電力とは、抵抗に定格電力を超える電力が短い時間だけ印加される場合、抵抗がどれくらい耐えることができるのかを表す特性のことです。

この記事ではこのワンパルス限界電力について説明します。

ワンパルス限界電力PPとは

抵抗のワンパルス限界電力
ワンパルス限界電力とは、抵抗に定格電力を超える電力が短い時間だけ印加される場合、抵抗がどれくらい耐えることができるのかを表す特性です。

雷サージや静電気などの瞬間的に大きな電力が抵抗に印加される場合に考慮する必要があります。

ワンパルス限界電力のグラフは、抵抗のデータシートや仕様書では上図のように横軸がパルス印加時間t、縦軸がワンパルス限界電力PPとなっています

例えば、上図では耐サージ抵抗品の場合、パルス印加時間tが1msなら100Wの電力まで印加できることを示しています。パルス印加時間tが1msで100Wの電力を抵抗に印加した場合、抵抗値が変化します(抵抗値の変化は±5%だったり±0.5%だったりデータシートや仕様書等によって定義が異なります)。そのため、ワンパルスでの電力と印加時間がこのグラフの下部領域にあることが必要となります。

また、このワンパルス限界電力PPは、その名の通りパルス波を想定しています。そのため、正弦波や三角波などパルス波と異なる電圧波形(または電流波形)が抵抗に印加される場合、パルス波に近似させ、パルス印加時間tとピーク電圧(またはピーク電流)を求める必要があります(後ほど説明します)

補足

  • 上記のワンパルス限界電力PPのグラフは、通常、「常温かつ常湿中においてワンパルスを印加した場合」のグラフとなっています。高温で使用する場合には、ワンパルス限界電力PPが低下します。そのため、高温で使用する場合には、必要に応じてメーカーに問い合わせする必要があります。
  • ワンパルス限界電力PPのグラフは、参考値として、あるロットの一例を示したものがほとんどであり、保証値とはならないのが一般的です(データシート等に”保証値とはならない”などと記載されていることがあります)。

正弦波や三角波をパルス波に近似した時

ここで、正弦波や三角波などをパルス波に近似した時にどうなるかを説明します。

正弦波

正弦波をパルス波に変換
ピーク電圧がVP(またはピーク電流がIP)、印加時間がtの正弦波の半波整流波形の場合、パルス波に近似すると、ピーク電圧がVP(またはピーク電流がIP)、パルス印加時間が1/2tになります。この時、ワンパルスでの電力Pは
\begin{eqnarray}
P=\frac{{V_P}^2}{R}=R{I_P}^2
\end{eqnarray}
となります。ここで、パルス印加時間tにおけるワンパルスでの電力Pがワンパルス限界電力PPのグラフの下部領域にあることが必要となります

これから説明する三角波やコンデンサ放電波形等も同様の考えです。波形をパルス波に近似し、パルス印加時間とワンパルスでの電力Pを求め、パルス印加時間におけるワンパルスでの電力Pがワンパルス限界電力PPのグラフの下部領域にあるかを確認します。

三角波

三角波をパルス波に変換
上記のような三角波の場合、パルス波に近似すると、ピーク電圧がVP(またはピーク電流がIP)、パルス印加時間が1/3tになります

コンデンサ放電波形(時定数tの放電波形)

コンデンサ放電波形をパルス波に変換
上記のようなコンデンサ放電波形(時定数tの放電波形)の場合、パルス波に近似すると、ピーク電圧がVP(またはピーク電流がIP)、パルス印加時間が1/2tになります

減衰振動波形(包絡線の時定数がt)

減衰振動波形をパルス波に変換
上記のような減衰振動波形(包絡線の時定数がt)の場合、パルス波に近似すると、ピーク電圧がVP(またはピーク電流がIP)、パルス印加時間が1/4tになります

特殊波形

特殊波形をパルス波に変換
上記のような特殊波形の場合、パルス波に近似すると、ピーク電圧がVP(またはピーク電流がIP)、パルス印加時間が1/2tになります

補足

この近似方法は JEITAの資料(固定抵抗器の安全使用に関する最新の注意点)に載っている近似方法となっており、この近似方法はメーカーによって異なる場合があります。そのため、パルス波と異なる電圧波形が抵抗に印加される場合には、必要に応じてメーカーに問い合わせする必要があります。

まとめ

この記事では抵抗のワンパルス限界電力PPについて、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • ワンパルス限界電力PPとは
  • 正弦波や三角波をパルス波に近似した時にどうなるか?

お読み頂きありがとうございました。

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