電気基板の組み立て工程などでは、人体に蓄積した電荷が人体から電子部品に放電するESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)が生じる可能性があります。このESDによって発生する高電圧パルスによって抵抗が損傷する可能性があります。抵抗器が損傷すると、抵抗値が変化します。
この記事では主に
- ESDについて
- ESDによって抵抗が損傷した時にどのように抵抗値が変化するか
- 抵抗のデータシートや仕様書に記載されているESDに対する強さを表した耐ESD特性
について説明します。
ESDについて
電気基板の組み立て工程において、帯電している人が抵抗器に触れた場合、ESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)が発生し、高電圧パルスが抵抗器に印加されて電流が流れます。
ここで、人体を等価回路で表すと、容量C(人体の容量)は100pFや150pF、抵抗R(人体の皮膚抵抗と接触抵抗)は500Ωや1500Ωで表すことができます。これを人体帯電モデル(HBM:Human Body Model)と呼んでいます。
また、人体からの放電を模擬した静電気放電の試験回路があります。この試験回路は、帯電している人が電子部品(図では抵抗)に触れたときに指から電子部品に放電することを模擬した等価回路です。スイッチSを高電圧の直流電源Vに接続し、容量Cのコンデンサを充電します(人体が帯電したことの模擬)。その後、スイッチを切り換えてコンデンサに溜まっていた電荷を試験サンプルに放電させています。
補足
ESDによる抵抗の損傷メカニズムと抵抗値の変化
ここでESDを抵抗に印加した時にどのような変化が生じるでしょうか?
角形チップ抵抗器の場合、チップ抵抗にESDを印加することで、抵抗値が下がるが、ある一定電圧以上で抵抗値が上がり、最終的には断線に至ります。
このメカニズムですが、角形チップ抵抗器はガラス材(絶縁部)と導電材の混合物となっています。
抵抗器にESDが印加された場合、まず抵抗体内のガラス材(絶縁部)が破壊されて導通することによって、抵抗値が下がります。また、さらに高い電圧が印加されると、導電材が破壊されることによって、抵抗値が増加します。最終的には、抵抗体の溶解クラック、抵抗体の剥離などによって断線に至ります。
補足
耐ESD特性
抵抗のデータシートや仕様書を見ると、上図のように横軸が抵抗値[Ω]、縦軸が抵抗値変化率[%]となっているグラフが記載されていることがあります。これは、抵抗の耐ESD特性を示した図であり、抵抗にESDを印加した時にどれくらい抵抗値が変化するかを示しています。
例えば、上図では10kΩの1608サイズの抵抗(通常品)だとESDを印加した時に抵抗値が-25%変化することを示しています。
ESD耐性は電極間の距離と電極の幅に大きく影響されます。電極間の距離が長いほど、電極の幅が太いほどESDに強くなります。したがって、形状が小さくなるにつれて、ESDに弱く、ESDが印加された時の抵抗体の変化が大きくなります。そのため、図では、1608サイズの抵抗の抵抗値の変化率が大きくなっています。
また、抵抗値が100Ωから100kΩの範囲でESDの影響を受けやすく、100Ω以下や100kΩ以上ではESDの影響を受けにくくなるのが特徴です。
耐サージ抵抗はESDに対して強いため、ESDが印加されたときにおいても抵抗体の変化が小さくなります。
補足
まとめ
この記事では抵抗と静電気について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 人体の等価回路とESDの試験回路
- ESDによって抵抗値が変化する
- 抵抗のデータシートや仕様書にはESDに対する強さを表す耐ESD特性グラフがある
お読み頂きありがとうございました。
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