【ポリスイッチとは】ヒューズとの違いは?

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材質に導電性ポリマーを用いたPTCサーミスタである『ポリスイッチ』。回路の過電流や加熱を保護する素子ですが、具体的にはどのような素子なのでしょうか?
基本構造や保護する原理、そしてヒューズとの違いなど詳しく説明します。

ポリスイッチとは?

ポリスイッチとは
『周囲素子の発熱』や『ポリスイッチに過電流が流れることによるジュール熱』などによって、素子内部の温度が上昇すると、抵抗値が増加し、回路に流れる電流を制限する素子です。 過電流過熱を保護するために用いられます。電源をオフして、素子内部の温度が減少すると、抵抗値が下がります。
回路記号は以下のように書きます。抵抗の回路記号に似ていますね。
ポリスイッチの回路記号

ポリスイッチの基本構造

ポリスイッチの基本構造
 ポリスイッチ、2枚の金属電極箔で導電性ポリマーのシートを挟み込んだ構造となっています。上図は、金属電極箔の部分にはんだ付、溶接等を行い、実装用のリードが接合されたものです。リードがない表面実装のポリスイッチもあります。

呼び名が幾通りもあります

温度が上がると抵抗値が上がる特性があるサーミスタは各メーカーで発売されており、各メーカー独自の呼び名があります。以下の用語は全てポリスイッチと同じです。
・リセッタブル・ヒューズ
・ポリヒューズ
・ポリマーPTC(PPTC: Polymer Positive Temperature Coefficient)
・ポジスタ
・ポジアール

ポリスイッチとヒューズの違い

ポリスイッチとヒューズの違い
先ほどポリスイッチは過電流が流れると、抵抗値が増加し、回路に流れる電流を制限する素子と言いましたが、ヒューズも過電流が流れた時に遮断する素子です。ポリスイッチとヒューズの両方とも過電流を保護する素子ですが、これら2つの違いはなんでしょうか。

違い①
ヒューズは過電流によって一度切れてしまうと交換が必要なのに対し、ポリスイッチは過電流によって抵抗値が増加しても、自動的に復帰する(素子内部の温度が減少すると、抵抗値が下がる) ため、交換の必要がなく、繰り返し使用することができます。そのため、ヒューズのように交換する必要がありません。

違い②
ヒューズは過電流が流れた瞬間すぐに電流を遮断します。一方、ポリスイッチは、過電流が流れた瞬間に電流を遮断することができません。ある時間が経つと遮断します。その時間ですが1秒後なのか、1分後なのかは分かりません。過電流の具合によって変わります。過電流の電流値が小さければ、遮断までに非常に長い時間(1時間以上)かかります。

違い③
ヒューズは遮断すると、電流が全く流れなくなりますが、ポリスイッチの抵抗値が増加するだけなので、遮断しても微小な電流(保持電流)が流れ続けます。その微小電流でもポリスイッチはジュール熱によって発熱するため、高抵抗を維持します。 

ポリスイッチの特性

ポリスイッチの特性
ポリスイッチの温度が上昇することによって抵抗値は増加しますが、この抵抗値の増加は線形ではなく非線形です。そのため、素子の温度がある温度を超えると、低抵抗の状態から急激に抵抗値が増加し高抵抗の状態になります。その変化は、0.1Ω以下の抵抗値から104~106Ωになります。高抵抗の状態に遷移することを、トリップすると言います。この高抵抗の状態になる温度は、ポリマーの融点に依存します。

材質

ポリスイッチは材質に導電性ポリマーを用いたPTCサーミスタです。PTCサーミスタのPTCは、Positive TemperatureCoefficientの頭文字を取ったもので、正の温度特性を持つサーミスタのことを指します。正の温度特性とは、素子の温度が上がると、抵抗値が上がるということです。

導電性ポリマーとは、絶縁体であるポリマー中にカーボンブラックやニッケルなどの導電性粒子を分散させたもので、ポリマーに混合する導電性粒子の種類と量によってポリスイッチの抵抗値が調整されます。

ポリスイッチの原理

ポリスイッチの原理
平常状態(低温時)
平常状態では、絶縁体であるポリマー中に分散してある導電性粒子(カーボンなど)が、接触をしているため導電経路が形成されます。その結果、ポリスイッチは低い抵抗値となります。この抵抗値はポリマーと導電性粒子の種類と量によって決まります。通常、ポリスイッチはヒューズのような回路の保護を目的としているため、低抵抗にして導通損失を減らすように設計されています。

電流が流れて温度上昇時
周囲素子の発熱やポリスイッチに過大な電流が流れることによるジュール熱によって、ポリスイッチの温度が上昇すると、ポリマーが熱膨張し体積が増加します。その結果、導電性粒子の接触が絶たれ、導電経路が次々と切断されていきます。その結果、ポリスイッチの抵抗値が増大します。

ポリスイッチとヒューズの使い分け

ポリスイッチは自動復帰、ヒューズは自動復帰しないことから、以下のような使い分けを行うことが多いです。
ポリスイッチを使うとき
・過電流が繰り返し加わるような回路の保護のとき
・ユーザが誤配線して過電流が流れることが考えられるとき
・製造工程において、高密度実装による故意の短絡などが考えられるとき

ヒューズを使うとき
・故障状態で過電流が流れた時に電流を完全に停止したいとき。
・ヒューズ下流にある回路の安全性の確保とダメージの回避をしたいとき。
・回路設計者や装置の使用者が過電流の発生源を付きとめたいとき(ポリスイッチだと自動的に復帰するため、過電流の発生源を突き止めるのが困難です)。
・過電流が流れた瞬間に電流を遮断したいとき(ポリスイッチは電流遮断までに時間がかかります)。

ポリスイッチの用途

ポリスイッチはモータ、スイッチング電源、バックライト・インバータ、衛星放送受信機、工業用制御装置、火災報知器、リチウムイオン二次電池等の保護素子、電気カーペット、コンピュータ、周辺機器、ポータブル機器(スマートフォン、タブレットなど)など様々な電気製品に使用されている素子です。電源の2次側などに使用されていることが多いですね。

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