ヒューズの用語には、遮断電流・溶断電流・定格電流・定常電流という〇〇電流というものが多くあります。そのため、各電流の意味と違いをきちんと理解することが重要となります。
この記事では各用語の意味とその違いを説明します。
溶断特性上における各電流
各電流をヒューズの溶断特性上に当てはめると、以下のようになります。
溶断特性とは、ヒューズにある一定電流(I)をどのくらい流し続けたら溶断するかを表す特性です。では、これから各用語を順々に説明します。
遮断電流
ヒューズが破壊(破裂)することなく、安全に遮断できる電流です。
この電流値を超える場合、亀裂が生じたり、ひどい場合にはヒューズが破壊する可能性があります。そのため、ヒューズに流れる電流がこの遮断電流を超えるような場合、1ランク上の遮断能力を持つヒューズに変更する必要があります。なお、ヒューズが破壊すると、ヒューズエレメントが飛び散るため、安全規格上では不合格となります。
この遮断電流は遮断定格電流、定格遮断電流、定格遮断容量、許容電流とも呼ばれています。
溶断電流
ヒューズが溶断特性に従って溶断する時の電流です。英語ではFusing Currentと書きます。
定格電流
ヒューズに表示されている電流値です。例えば、ヒューズに0.5A/250Vと表示されていれば、0.5Aがヒューズの定格電流となります。なお、250Vは定格電圧を示します。
ヒューズに定格電流を流しても溶断しないことに注意してください(定格電流を流すと溶断すると勘違いする方が多いです)。ヒューズの定格電流は、その値の電流までは絶対に切れないことを表します。定格電流を超える電流が流れると、ヒューズの溶断特性によりある時間経過後にヒューズが溶断します。
定常電流
通常時にヒューズに流れる電流です。定常電流は定格電流に対して、定常ディレーティングと温度ディレーティングを掛けた値以下にする必要があります。式で表すと以下のようになります。
例えば、定格電流3Aのヒューズにおいて、定常ディレーティングが0.75、温度ディレーティングが0.9の場合、通常時に流れる電流は、
以下にならなければなりません。
定常ディレーティング
取得した安全規格により定常ディレーティングが変わります。IEC規格では0.9〜1.0程度、UL規格では0.7〜0.75程度となります。IEC規格ではヒューズ自身の定格電流にマージンが含まれているので、ディレーティングを1.0でも良いのです。
このように規格により定常ディレーティングが異なるのは、安全規格によって要求事項が異なるためです。同じ定格電流のヒューズでも取得した安全規格によりヒューズの溶断時間が異なります。
IEC規格はUL規格より要求事項が厳しく、溶断しにくいヒューズとなっています。つまり、IEC規格の方が回路に流れる定常電流が大きくて良いので、定常ディレーティングが大きくなります。
温度ディレーティング
ヒューズのエレメントには金属が使用されています。この金属は抵抗温度係数を持つため、温度が上がるにつれて抵抗値が大きくなります。そのため、温度が上がると、より短い時間より低い電流でヒューズが溶断するようになります。したがって、温度が高いほど回路の定常電流を低くしなければなりません。それを考慮するために温度ディレーティングがあります。