【フライバックコンバータ】スナバ回路の目的と動作について!

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この記事ではフライバックコンバータのRCDスナバ回路について

  • スナバ回路の目的
  • スナバ回路の動作
  • スナバ回路に接続されているダイオード

などを図を用いて分かりやすく説明しています。

スナバ回路の目的

【フライバックコンバータ】スナバ回路の目的

上図はフライバックコンバータにおいてスナバ回路周辺を抜粋したものとなっています。

フライバックコンバータにおいて、トランスの1次側の両端に接続されている抵抗R1、コンデンサC1、ダイオードD1で構成されているのがスナバ回路(RCDスナバ回路)です。

フライバックコンバータはトランスのコアにギャップを設けているため、漏れ磁束が増加し、リーケージインダクタンスLLEAKが生じます。

MOSFETがオン状態の時、リーケージインダクタンスLLEAKにドレイン電流IDが流れるためエネルギーが蓄積されます。リーケージインダクタンスLLEAKは他の巻線と結合していないため、2次側に電力を伝達することができません。

そのため、MOSFETがオフになった瞬間、ドレイン電流IDの流れが遮断されることによって、リーケージインダクタンスLLEAK大きなサージ電圧(スパイクノイズ)が発生します。このサージ電圧はMOSFETのドレインソース間に印加されます。

このサージ電圧によって、MOSFETにかかる電圧が耐圧を超えると、アバランシェ降伏を引き起こし、MOSFETが破壊する可能性があります。このサージ電圧を抑制するためにスナバ回路が接続されています。

補足

RCDスナバ回路はRCDクランプとも呼ばれています。

スナバ回路の動作

【フライバックコンバータ】スナバ回路の動作

上図にフライバックコンバータの回路図とMOSFETのドレインソース間電圧VDSとドレイン電流IDを示しています。

MOSFETがオン状態の時、リーケージインダクタンスLLEAKにドレイン電流IDが流れるためエネルギーが蓄積されます。

なお、ドレイン電流IDのピーク値をIPEAKとすると、リーケージインダクタンスLLEAKに蓄積されるエネルギーWLEAKは次式で表されます。

\begin{eqnarray}
W_{LEAK}=\frac{1}{2}L_{LEAK}I_{PEAK}^2
\end{eqnarray}

MOSFETがオフになった瞬間、ドレイン電流IDの流れが遮断されることによって、リーケージインダクタンスLLEAKに大きなサージ電圧(スパイクノイズ)が発生し、MOSFETのドレイン電圧が増加します。

MOSFETのドレイン電圧がノードXの電圧を超えると、スナバダイオードD1がオンし、サージ電圧をクランプします。上図ではスナバ回路によってクランプされるクランプ電圧をVCLAMPで表しています。スナバ回路がない場合や抵抗R1の抵抗値が大きい場合、クランプ電圧VCLAMPが大きくなります。

補足

MOSFETがオフの状態では、トランスの1次側にはVRO=nVOUTの電圧が発生しているため、コンデンサC1の両端電圧がVROになるまで充電されています。コンデンサC1には並列に抵抗R1が接続されているため、抵抗R1では常に電力を消費しています。

スナバ回路に接続されているダイオードについて

【フライバックコンバータ】スナバ回路に接続されているダイオード

スナバ回路に接続されているダイオードには一般的には逆回復時間の早いファストリカバリーダイオードを用います。

しかし、スナバ回路専用のダイオード(サンケン電気製:SARS01など)というものもあります。スナバ回路専用のダイオードは逆回復時間が比較的長い素子となっています。

上図に示しているのはスナバ回路のダイオードにファストリカバリーダイオードを用いた場合(左)スナバ回路専用のダイオードを用いた場合(右)の動作イメージです。

ファストリカバリーダイオードを用いた場合

MOSFETがオフになった瞬間、リーケージインダクタンスLLEAKに蓄積されているエネルギーはスナバダイオードD1を通して、スナバコンデンサC1に蓄積されます。

スナバコンデンサC1に蓄積されたエネルギーはスナバコンデンサC1の両端電圧がトランスの1次側に発生している電圧VROと等しくなるまで、抵抗R1で消費されるため、すべて損失となります。

またサージ電圧にリンギングが発生するため、多出力電源においてはクロスレギュレーションの低下の原因になります。

スナバ回路専用のダイオードを用いた場合

MOSFETがオフになった瞬間、リーケージインダクタンスLLEAKに蓄積されているエネルギーはスナバダイオードD1を通して、スナバコンデンサC1に蓄積されます。

逆回復時間が長いため、スナバコンデンサC1に蓄積されたエネルギーはスナバコンデンサC1の両端電圧がトランスの1次側に発生している電圧VROと等しくなるまでリーケージインダクタンスLLEAKに蓄積されているエネルギーを吸収するループに対して逆方向に放電することができます。

その結果、スナバコンデンサC1に蓄積されたエネルギーを2次側に伝達することができるため、電源効率を向上することができます。

またサージ電圧のリンギングも抑制することができるため、多出力電源においてはクロスレギュレーションを向上することができます。

まとめ

この記事ではフライバックコンバータのRCDスナバ回路ついて、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • スナバ回路の目的
  • スナバ回路の動作
  • スナバ回路に接続されているダイオード

お読み頂きありがとうございました。

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