電解コンデンサは陽極、陰極、誘電体、電解質の種類によって分類することができます。この記事では電解コンデンサを一覧表にし、特徴をまとめました。これから詳しく説明します。
電解コンデンサの『種類』について
電解コンデンサは陽極、陰極、誘電体、電解質の種類によって分類されます。
まず、電解コンデンサは電解質が液体である液体電解質と固体である固体電解質に分類されます。
液体電解質を使用した電解コンデンサは、湿式や非固体が電解コンデンサの名称に付きます(例えば、湿式アルミ電解コンデンサやアルミニウム非固体電解コンデンサなど)。また、電解コンデンサには電解質ペーストを使用した乾式電解コンデンサというものがあります。アルミ電解コンデンサは当初は電解質が水溶液の湿式電解コンデンサが主流でした。しかし、現在では乾式が主流となっています。
一方、固体電解質を使用した電解コンデンサは、固体が電解コンデンサの名称に付きます(例えば、タンタル固体電解コンデンサなど)
さらに、電解コンデンサは各電解質において、陽極や陰極、誘電体、電解質の種類によって分類されます。以下に、電解コンデンサのは陽極、陰極、誘電体、電解質による分類表を指します。
液体電解質の電解コンデンサで有名なのが湿式アルミ電解コンデンサと乾式アルミ電解コンデンサです。一般的に電解コンデンサと言えばこのタイプを指します。また、固体電解質の電解コンデンサで有名なのが、タンタル(固体)電解コンデンサです。これから各電解コンデンサについて詳しく説明します。
液体電解質の電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサは歴史の流れ上「湿式」と「乾式」があります。アルミ電解コンデンサは当初は電解質が水溶液の湿式電解コンデンサが主流でした。現在では乾式が主流となっています。
(湿式)アルミ電解コンデンサは、陽極部と陰極部は共にアルミ箔、誘電体がアルミ酸化皮膜(酸化アルミ二ウム:Al2O3)、電解質が電解質水溶液(溶媒に電解質を溶かした液体)の電解コンデンサです。一方、(乾式)アルミ電解コンデンサは電解質がホウ酸アンモニウムとエチレングリコール(またはグリセリン)を使用したペースト状の電解液の電解コンデンサです。陽極部、陰極部、誘電体は(湿式)アルミ電解コンデンサと同じです。
電気分解により、陽極のアルミ箔の表面に誘電体(アルミ酸化皮膜)の絶縁層を形成しています。アルミ箔と電解液を使用するので、アルミ電解コンデンサと呼ばれています。
誘電体(アルミ酸化皮膜)とアルミ箔との間に紙(セパレート紙)を挟んでお互いに接触しないようにしながらロール状に巻き、液体の電解質に浸して封じた構造となっています。
電解コンデンサには様々な種類がありますが、このアルミ電解コンデンサが一番有名です。そのため、単に電解コンデンサといったらこのアルミ電解コンデンサを指しているのがほとんどです。また、電解コンデンサは誘電体(アルミ酸化皮膜)と電解液が化学反応をしているため、別名、ケミカルコンデンサ(ケミコン)とも呼ばれています。
特徴
- 誘電体膜を薄くできるため、大容量コンデンサの主流を占めています。
- 電解質が液体であるため、コンデンサの封口部から電解液が蒸発(ドライアップ)します。そのため、(湿式)アルミ電解コンデンサには寿命があります。
- 酸化皮膜は、漏れ電流の存在によって常時修復され続けています。電解コンデンサを無負荷で長時間放置(約2年)すると、電解コンデンサの陽極部のアルミ酸化皮膜が電解液と化学反応を起こし劣化します。劣化した場合には、電圧を印加し漏れ電流を流すことで、電解液によりアルミ酸化皮膜が修復されます。
長所と短所
- 耐圧・容量の品種が多い
- 安い
- 寿命がある
- サイズが大きい
- 周波数特性が悪い
- 温度特性が悪い
- 漏れ電流が大きい
- 誘電体損失が大きい
その他の名称
- 電解コンデンサ
- (湿式)電解コンデンサ
- アルミ電解コンデンサ
- アルミニウム非固体電解コンデンサ
- ケミカルコンデンサ(ケミコン)
英語表記
- Aluminum Electrolytic Capacitors
- Non-Solid Aluminum Electrolytic Capacitors
- Wet Aluminum Electrolytic Capacitors
- Liquid Aluminum Electrolytic Capacitors
(湿式)タンタル電解コンデンサ
タンタル電解コンデンサは、電解質が液体である湿式タンタル電解コンデンサと固体であるタンタル固体電解コンデンサがあります。湿式タンタル電解コンデンサの方が、漏れ電流が小さいという特徴がありますが、逆電圧には弱く、逆電圧がかかると容易にショート故障してしまうという特徴があります。
英語表記
- Wet Tantalum Electrolytic Capacitors
固体電解質の電解コンデンサ
タンタル固体電解コンデンサ
陽極部がタンタル金属粉の燃結体、陰極部が銀層とグラファイト層、誘電体がタンタル酸化皮膜(五酸化タンタル:Ta2O5)、電解質が二酸化マンガン(固体)の電解コンデンサです。見た目は四角だったり、卵型をしています。基本構造は(湿式)アルミ電解コンデンサとほとんど同じです。
(湿式)アルミ電解コンデンサよりも小型であり、漏れ電流特性、周波数特性、温度特性も優れています。また、電解質が固体のため、ドライアップがなく寿命が長い特徴があります。ただし、コストが高く、また故障モードがショートなので発火発煙に至る可能性があり危険性があります。そのため、ショートしても大丈夫なように安全対策が必要です。
英語表記
- Solid Tantalum Electrolytic Capacitors
有機半導体系固体電解コンデンサ(OSコン)
有機半導体系固体電解コンデンサは、1963年に、佐賀三洋工業によって量産されたコンデンサです。1990年からはNECや松下電子部品も同様のコンデンサを生産するようになりました。OSコンとも呼ばれています。
OSコンは(湿式)アルミ電解コンデンサとタンタル固体電解コンデンサの両方の欠点を解決したコンデンサとなっています。
陽極、陰極、誘電体は(湿式)アルミ電解コンデンサと同じです。電解質に固体の有機半導体を使用している点が異なります。OSコンの封口部は、エポキシ樹脂で固められているため、(湿式)アルミ電解コンデンサの短所であるドライアップがありません。また、高温にも耐えられるため、寿命が改善されています。
しかし、固体電解質を使用しているため、(湿式)アルミ電解コンデンサと比較すると、酸化皮膜の修復能力が劣ります。酸化皮膜の劣化が修復されないため、落下や圧迫等の衝撃を与えないように注意しなければなりません。また、半田づけ時は過熱と冷却により、酸化皮膜が収縮・膨張をするため、酸化皮膜が劣化します。この場合には、長時間電圧を印可して、酸化皮膜を修復する必要があります。
なお、OSコンのOSは「Organic Semiconductor(有機半導体)」の頭文字からとっています。
その他の名称
- 有機半導体電解コンデンサ
英語表記
- Solid Aluminum Capacitors with Organic Semiconductor Electrolyte
- Organic Semiconductor Aluminum Electrolytic Capacitors
導電性高分子系固体電解コンデンサ
電解質に導電性高分子(固体)を使用したコンデンサです。導電性高分子アルミ電解コンデンサと導電性高分子タンタル電解コンデンサの2種類あります。
導電性高分子を使用することで、セラミックコンデンサよりは劣りますが、(湿式)アルミ電解コンデンサやタンタル固体電解コンデンサよりも特性が良くなり、またセラミックコンデンサでは実現が難しい高耐圧・大容量を得ることができます。
また、導電性高分子の電気伝導率は非常に高いため、等価直列抵抗(ESR)が低く、リプル吸収用途では、他の電解コンデンサよりも優れています。なお、導電性高分子の電気伝導率は(湿式)アルミ電解コンデンサの約10000倍、タンタル固体電解コンデンサの二酸化マンガンの1000倍となっています。
これらの特徴から、導電性高分子系固体電解コンデンサへの置き換えが進んでいます。しかし、高価であり、また定格電圧が低いため、用途に応じて他の電解コンデンサと使い分けます。
その他の名称
- 導電性高分子電解コンデンサ
- 高分子コンデンサ
導電性高分子アルミ電解コンデンサ
導電性高分子アルミ電解コンデンサは、導電性高分子コンデンサにおいて、陽極部と陰極部がアルミ箔であるコンデンサです。言い換えれば、電解質以外は(湿式)アルミ電解コンデンサと同じになります。
その他の名称
- アルミニウム固体電解コンデンサ
英語表記
- Conductive Polymer Aluminum Solid Electrolytic Capacitors
- Aluminum Solid Capacitor Conductive Polymer Electrolyte
導電性高分子タンタル電解コンデンサ
導電性高分子タンタル電解コンデンサは、導電性高分子コンデンサにおいて、陽極部と陰極部がタンタル金属粉の燃結体であるコンデンサです。言い換えれば、電解質以外はタンタル固体電解コンデンサと同じになります。
その他の名称
- 導電性高分子タンタル固体コンデンサ
英語表記
- Conductive Polymer Tantalum Solid Electrolytic Capacitors
- Tantalum Solid Capacitor Conductive Polymer Electrolyte
ニオブ固体電解コンデンサ
陽極部が金属ニオブ粉体の燃結体、陰極部が銀層とグラファイト層、誘電体が五酸化ニオブ(Nb2O5)、電解質が二酸化マンガンまたはポリマー電解質(固体)の電解コンデンサです。電解質がアノードの表面を覆っている構造となっています。
ニオブの埋蔵量はタンタルの100倍程度と見積もられており、タンタル電解コンデンサと比較すると、供給の安定化と低価格化が期待されます。また、タンタル固体電解コンデンサより逆電圧耐性が高く、大容量化できるため、タンタル電解コンデンサの置き換えとして期待されています。加えて、一般的にはタンタル固体電解コンデンサは耐圧の50%まで使用しますが、ニオブ固体電解コンデンサは耐圧の80%まで使用することができます。
英語表記
- Niobium Electrolytic Capacitor
酸化ニオブ固体電解コンデンサ
陽極部が金属ニオブ粉体の燃結体ではなく、酸化金属ニオブ粉体の燃結体であるコンデンサ。故障モードがオープンのため、安全性が高いという特徴があります。
英語表記
- Niobium Oxide Capacitors
【その他】アルシコン(アルミ燃結型コンデンサ)
佐賀三洋工業によって開発・商品化(1970年)されたのがアルシコンです。タンタル電解コンデンサの性能と同等であり、しかもタンタル電解コンデンサの欠点(逆電圧に弱い、急激な充放電に弱い)を克服しています。しかし、大容量化が出来ず広く普及されることはありませんでした(6.3Vでは10uF、25Vでは1uFまで)。
【その他】両極性電解コンデンサ
陽極側、陰極側の双方に酸化皮膜を形成した電極を用いると両極性コンデンサになります。両極性コンデンサには電解コンデンサの表面にB.P.またはN.P.の表示があります。なお、B.P.は両極性を表すBi-Polarizedの頭文字となっています。N.P.は無極性を表すNon-Polarizedの頭文字となっています。
その他の名称
- ノンポーラコンデンサ(NPコンデンサ)
- バイポーラコンデンサ(BPコンデンサ)