この記事ではチップ抵抗の硫化について
- チップ抵抗の『硫化』とは
- チップ抵抗の『硫化』のメカニズム
- チップ抵抗の『硫化』の対策
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
チップ抵抗の硫化のメカニズム
最初にチップ抵抗の硫化のポイントについて説明します。
硫化のポイント
チップ抵抗の硫化とは、チップ抵抗器の内部抵抗(銀:Ag)と空気中の硫黄成分が反応して、絶縁体である硫化銀(Ag2S)が生成する現象です。この硫化よって、内部電極が断線する可能性があります。
チップ抵抗の硫化のメカニズムについてもう少し詳しく説明します。
温泉や火山の近くで発生する硫化ガスや自動車の排気ガスなど、空気中には硫黄成分が存在しています。この硫黄成分は金属表面に吸着すると、金属と反応する性質があります。
一般的なチップ抵抗器は上図のような構造をしており、内部電極には銀(Ag)が使用されています。
チップ抵抗器の保護層とメッキ層の隙間から硫黄成分が侵入し、内部電極の表面に付着すると、抵抗器の内部電極の銀(Ag)と反応し、以下の化学式のような反応が進むことによって、絶縁体である硫化銀(Ag2S)が生成します。
\begin{eqnarray}
Ag&{\to}&Ag^{+}+e^{-}\\
S+2e^{-}&{\to}&S^{2-}\\
2Ag^{+}+S^{2-}&{\to}&Ag_{2}S
\end{eqnarray}
その結果、抵抗器の内部電極が腐食します。この腐食部分が基板まで達すると断線します。また、硫化によって、チップ抵抗器が正しく動作しなくなる可能性があります(抵抗値が正常値からずれる)。
この硫黄成分によって、抵抗器の内部電極が断線する現象は硫化断線や硫化による断線と呼ばれています。
補足
- 硫黄は重油などの燃焼でも発生します。
- 工作機械のオイル、ケーブルやタイヤなどのゴム製品などには硫黄を加えてあるものがあります。
- 保護層とメッキ層の隙間は抵抗実装時の熱ストレスによって生じる場合があります。
- 銀と硫黄の反応速度は『硫黄成分の濃度』・『温度』・『湿度』に大きく影響を受けます。
- 硫化は英語では「Sulfurization」と書きます。
チップ抵抗の硫化の対策
硫化対策をチップ抵抗器に施すことによって、硫化を防ぐことができます。
硫化対策はメーカーによって様々な方法がありますが、チップ抵抗器の硫化は内部電極の材料とその構造に起因することから、一般的に大きく分けて以下の2つの方法に分類されます。
硫化対策
- 内部電極に硫化しない材料を使用する
- 耐硫化層によって内部電極を外部の空気にさらされない構造にする
→効果は高いが、コストが高い
→①の方法より効果は低いが、コストが安い
それぞれ硫化対策について詳しく説明していきます。
内部電極に硫化しない材料を使用する
内部電極に硫化しない金(Au)や合金などを使用することによって、チップ抵抗器の硫化を防ぐことができます。
この方法は硫化しない材料を内部電極に使用するため、最も効果が高いですが、金(Au)という効果な材料を使用するため、製品価格が高くなります。そのため、コストを考慮すると使用が難しくなります。
耐硫化層によって内部電極を外部の空気にさらされない構造にする
この方法は内部電極に銀を使用するため、硫化する可能性があります。そのため、①の方法よりも効果は低くなりますが、一般的なチップ抵抗器と比べれば、高い耐硫化特性が得られます。
また、高価な材料を使用しないため、コスト的にも有利な方法です。そのため、この方法が硫化対策としてよく用いられています。
まとめ
この記事ではチップ抵抗の硫化について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- チップ抵抗の『硫化』とは
- チップ抵抗の『硫化』のメカニズム
- チップ抵抗の『硫化』の対策
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