この記事ではバイポーラトランジスタの出力特性(IC-VCE特性)について詳しく説明します。
バイポーラトランジスタの『出力特性(IC-VCE特性)』とは?
出力特性(IC-VCE特性)とは、エミッタ接地トランジスタの静特性で、あるベース電流IBを流している状態において、コレクタ-エミッタ間電圧VCEとコレクタ電流ICの関係を表した特性です。
コレクタ-エミッタ間電圧VCEがある一定値を超えるまでは、コレクタ-エミッタ間電圧VCEが増加するとコレクタ電流ICが増加しますが、コレクタ-エミッタ間電圧VCEがある一定値を超えると、コレクタ電流ICはコレクタ-エミッタ間電圧VCEによらず、ベース電流IBに依存する値となります。
バイポーラトランジスタの飽和領域、活性領域、遮断領域について
バイポーラトランジスタの『出力特性(IC-VCE特性)』には3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)があります。
バイポーラトランジスタをスイッチとして用いるときは、飽和領域(スイッチがオンの状態)と遮断領域(スイッチがオフの状態)を利用し、バイポーラトランジスタをアンプとして用いるときは、活性領域を利用します。
次に3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)について順番に説明します。
飽和領域
飽和領域とは、ベース電流IBを大きくしてもコレクタ電流ICが増加しない領域であり、『出力特性(IC-VCE特性)』の青色の箇所となります。『出力特性(IC-VCE特性)』の見方によって様々な説明方法があるため、コレクタ-エミッタ間電圧VCEが小さくてもコレクタ電流ICが流れる領域と説明している参考書もあります。
バイポーラトランジスタをスイッチのオン状態にするためには、ベース電流を沢山流して、コレクタ-エミッタ間電圧VCEが最小電圧となる箇所で用います。これは、コレクタ-エミッタ間電圧VCEを小さくすることで、オン状態のおける損失(PLOSS=VCE×IC)が小さくなるからです。
ちなみに、この最小電圧のことをコレクタ飽和電圧VCE(sat)と呼びます。このコレクタ飽和電圧VCE(sat)はデータシートに記載してあります。
活性領域
活性領域とは、ベース電流IBが一定なら、コレクタ-エミッタ間電圧VCEによらずコレクタ電流ICが一定となる領域であり、『出力特性(IC-VCE特性)』の赤色の箇所となります。
つまり、活性領域では、コレクタ電流ICはコレクタ-エミッタ間電圧VCEではなくベース電流IBで決まります。
バイポーラトランジスタをアンプとして用いるときは、この活性領域を利用します。また、活性領域ではコレクタ-エミッタ間電圧VCEによらずコレクタ電流ICが一定となるため、一定の電流を流す電流源としても利用されます。
『出力特性(IC-VCE特性)』の傾きがコレクタ抵抗rCとなります。コレクタ抵抗は以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
r_C=\frac{{\Delta}V_{CE}}{{\Delta}I_C}
\end{eqnarray}
コレクタ-エミッタ間電圧VCEを大きくしてもコレクタ電流ICは大きく変化しないことから、活性領域ではコレクタ抵抗rCは非常に大きな値ということになります。
遮断領域
遮断領域とは、ベース電流IB=0でもコレクタ電流IC=0とならず漏れ電流がわずかに流れる領域であり、『出力特性(IC-VCE特性)』の緑色の箇所となります。
この漏れ電流をコレクタ遮断電流ICEOと言います。漏れ電流なので、小さければ小さいほど特性の良いトランジスタとなります。コレクタ遮断電流ICEOはコレクターエミッタ間遮断電流とも呼ばれます。なお、コレクタ遮断電流ICEOはデータシートには最大値のみが記載されています。
補足
- 遮断領域では、バイポーラトランジスタのスイッチがオフ状態です。
- 遮断領域はコレクタ遮断領域とも呼ばれています。
【その他】バイポーラトランジスタの『出力アドミタンス』
トランジスタを使用するとき、h定数と呼ばれるものを用いることがあります。
h定数には『出力アドミタンスhOE』、『電流増幅率hFE』、『入力インピーダンスhIE』、『電圧帰還率hRE』があります。
『出力特性(IC-VCE特性)』に関係あるのは『出力アドミタンスhOE』です。
『出力アドミタンスhOE』とは、『出力特性(IC-VCE特性)』の曲線の傾きのことであり、コレクタ-エミッタ間電圧VCEの変化に対するコレクタ電流IC変化の逆数で
\begin{eqnarray}
H_{OE}=\frac{{\Delta}I_C}{{\Delta}V_{CE}}
\end{eqnarray}
となります。なお、単位は[S(ジーメンス)]となります。
まとめ
この記事ではバイポーラトランジスタの『出力特性(IC-VCE特性)』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- バイポーラトランジスタの『出力特性(IC-VCE特性)』とは
- バイポーラトランジスタの3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)について
お読み頂きありがとうございました。
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