熱電対はJIS規格やIEC規格で規定されている熱電対と、規定されていない熱電対があり、全てを含めると数10種類あると言われています。
この記事ではJIS規格やIEC規格で規定されている熱電対の種類と特徴について説明します。
そもそも熱電対の『特徴』や『原理』って何だったけ?という方は以下の記事で詳しく説明していますので、ご参考になれば幸いです。
熱電対とは?『原理』などを解説!温度を測定できるのはなぜ?
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熱電対の種類
工業用に多く使用される熱電対は規格化されており、日本ではJIS C 1602、国際規格ではIEC 60584、米国規格はASTM E 230にそれぞれ制定されています。
上図は『JIS規格やIEC規格で規定されている熱電対』の種類と特徴をまとめたものです。
熱電対には、白金やロジウムといった融点の高い金属を使用した貴金属熱電対と、白金やロジウムを使用していない卑金属熱電対があります。
一般的に、貴金属熱電対は1000℃以上の測定に使用され、1000℃未満の測定には卑金属熱電対を使用します。
この中で貴金属熱電対はB熱電対、R熱電対、S熱電対の3種類あり、卑金属熱電対は、N熱電対、K熱電対、E熱電対、J熱電対、T熱電対、C熱電対の6種類あります。
各熱電対は2種類の金属導体の組み合わせによって決まり、それぞれ特徴が異なります。ではこれから各熱電対について説明していきます。
B熱電対
B熱電対は、+脚がロジウム30%を含む白金ロジウム合金で-脚がロジウム6%を含む白金ロジウム合金の熱電対です。
工業用の熱電対としては最も高温で使用できる熱電対となっています。
また、他の貴金属熱電対と比較してロジウムの含有量が多いため、融点および機械的な強度が増し、高寿命となっています。したがって、基本的にはR熱電対やS熱電対で測定できないような高温の領域を測定する場合にB熱電対を選定します。
B熱電対の特徴
メリット
- 酸化性雰囲気・不活性雰囲気での長時間使用が可能である。
- 耐薬品性に優れる。
- 1000℃以上の測定に適している。
デメリット
- 熱起電力が極めて小さいため、600℃以下の温度計測が不可能である。
- 還元性雰囲気での使用には適していないが、R熱電類より耐久性がある(R熱電類と比較して、10~20倍の寿命)。
- 金属蒸気中での使用には適していない。
- 感度が悪い。
- コストが高い。
- 熱起電力の直線性に劣る。
使用温度範囲と最高使用温度
- 使用温度範囲:0℃~1500℃
- 最高使用温度:1700℃
R熱電対
R熱電対は、+脚がロジウム13%を含む白金ロジウム合金で-脚が白金の熱電対です。
精度に優れており、バラツキや劣化がすくないため、標準熱電対として利用されています。
また、R熱電対は貴金属熱電対の中では最も多く使用されています。
R熱電対の特徴
メリット
- 精度に優れており、バラツキが劣化が少ない。
- 酸化性雰囲気に強い。
デメリット
- 還元性雰囲気での使用には適していない(特に水素ガスには弱い)。
- 金属蒸気中での使用には適していない。
- 熱起電力が小さいため、低温での温度測定には適していない。
- 感度が悪い。
- コストが高い。
使用温度範囲と最高使用温度
- 使用温度範囲:0℃~1400℃
- 最高使用温度:1600℃
S熱電対
S熱電対は、+脚がロジウム10%を含む白金ロジウム合金で-脚が白金の熱電対です。
ル・シャトリエによって1886年に開発された熱電対です。R熱電対とロジウムの含有量が異なるだけです。そのため、R熱電対と同様の特徴を持っていますが、R熱電対と比較すると熱起電力は小さくなっています。精度に優れており、バラツキや劣化がすくないため、S熱電対も標準熱電対として利用されています。
S熱電対の特徴
メリット
- 精度に優れており、バラツキが劣化が少ない。
- 酸化性雰囲気に強い。
デメリット
- 還元性雰囲気での使用には適していない(特に水素ガスには弱い)。
- 金属蒸気中での使用には適していない。
- 熱起電力が小さいため、低温での温度測定には適していない。
- 感度が悪い。
- コストが高い。
使用温度範囲と最高使用温度
- 使用温度範囲:0℃~1400℃
- 最高使用温度:1600℃
N熱電対
N熱電対は、+脚がニッケル、クロムおよびシリコンを主とした合金(ナイクロシル)で-脚がニッケルおよびシリコンを主とした合金(ナイシル)の熱電対です。
N熱電対は、1989年にIEC規格で規定され実用化されました。
K熱電対の改良品であり、K熱電対でみられた酸化による1000℃以上の高温での『熱起電力ドリフト』や『ショートレンジオーダリング』といった問題が改善され、安全性が強化し、安定した温度支持が得られるようになりました。ただし、K熱電対と同様に還元性雰囲気には適していません。
一般的には、N熱電対は安価で1000℃以上の高温領域を測定したい場合に選定します。
N熱電対の特徴
メリット
- 低温から高温まで広い温度範囲にわたって、熱起電力が安定している。
デメリット
- 電気抵抗が大きい。
- 還元性雰囲気には適さない。
- 600℃以下の直線性の劣る。
使用温度範囲と最高使用温度
- 使用温度範囲:-200℃~1200℃
- 最高使用温度:1250℃
K熱電対
K熱電対は、+脚がニッケルおよびクロムを主とした合金(クロメル)で-脚がニッケルおよびアルミニウムを主とした合金(アルメル)の熱電対です。そのため、K熱電対は通称クロメル・アルメル熱電対と呼ばれています。
温度と熱起電力の関係が直線的であり、耐熱性・耐食性も優れており、貴金属熱電対と比較して安価なので、工業用の熱電対で最も多く使用されています。
K熱電対の特徴
メリット
- 熱起電力の直線性に優れている。
- 酸化性雰囲気に強い。
デメリット
- 還元性雰囲気には適さない(特に亜硫酸ガス・硫化水素)。
- 『ショートレンジオーダリング』と呼ばれる現象によって、350℃~500℃の範囲で使用すると短時間で起電力が大きく変化してしまう(この現象は800℃以上で加熱すると正常に戻る)。
使用温度範囲と最高使用温度
- 使用温度範囲:-200℃~1000℃
- 最高使用温度:1200℃
E熱電対
E熱電対は、+脚がニッケルおよびクロムを主とした合金(クロメル)で-脚がニッケルおよび銅を主とした合金(コンスタンタン)の熱電対です。そのため、E熱電対は通称クロメル・コンスタンタン熱電対と呼ばれています。1974年からJISに加えられました。
工業用の熱電対としては熱起電力特性が最も高くなっています。すなわち、最も感度の良い熱電対ということになるため、精度よく温度を測定したいときにE熱電対を使用します。一方、工業用の熱電対の中では電気抵抗が最も高いため、使用機器の選択には十分な配慮が必要になります。
最高使用温度は800℃でJ熱電対と同等ですが、E熱電対はクロメルを使用しているので、J熱電対に比べて耐食性・耐酸化性に優れています。
E熱電対の特徴
メリット
- 熱起電力が大きい。
- +脚と-脚ともに非磁性である。
- 熱伝導が小さい。
デメリット
- 還元性雰囲気には適さない。
- 電気抵抗が大きい。
- 流通量が少ない。
使用温度範囲と最高使用温度
- 使用温度範囲:-200℃~700℃
- 最高使用温度:800℃
J熱電対
J熱電対は、+脚が鉄で-脚がニッケルおよび銅を主とした合金(コンスタンタン)の熱電対です。
E熱電対に次ぐ熱起電力特性を有していますが、+脚に鉄を使用しているため防錆処理が必要となります。
しかし、J熱電対はE熱電対よりも価格が安く、還元性雰囲気でも使用できることから、K熱電対に次いで使用されています。
J熱電対の特徴
メリット
- コストが安い。
- 還元性雰囲気で使用できる(水素や一酸化炭素にも安定)。
- 不活性雰囲気で使用できる。
デメリット
- +脚の鉄が錆びやすい(540℃以上では鉄の酸化が早まる)。
- 0℃以下の使用には不向き。
使用温度範囲と最高使用温度
- 使用温度範囲:0℃~600℃
- 最高使用温度:750℃
T熱電対
T熱電対は、+脚が純銅で-脚がニッケルおよび銅を主とした合金(コンスタンタン)の熱電対です。
電気抵抗が小さく、200℃以下では熱起電力が安定しているため、低温で高精度の測定に最適です。また、伸線加工性が良いため、ガラス繊維やテフロン皮膜を施した被膜熱電対として広く使用されています。
T熱電対の特徴
メリット
- 熱起電力の直線性に優れる。
- 還元性雰囲気で使用できる。
- 不活性雰囲気で使用できる。
デメリット
- +脚に純銅を使用しているため、高温での酸化性雰囲気での使用に適していない。
- 熱伝導誤差が大きい。
使用温度範囲と最高使用温度
- 使用温度範囲:-200℃~300℃
- 最高使用温度:350℃
C熱電対
C熱電対は、+脚がレニウム5%を含むタングステン・レニウム合金で-脚がレニウム26%を含むタングステン・レニウム合金の熱電対です。
還元性雰囲気、不活性雰囲気、水素期待に適しますが、空気中で使用することができません。
C熱電対の特徴
メリット
- 還元性雰囲気で使用できる。
- 不活性雰囲気で使用できる。
デメリット
- 空気中で使用することができない。
まとめ
この記事では熱電対の『種類』と『特徴』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- B熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
- R熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
- S熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
- N熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
- K熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
- E熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
- J熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
- T熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
- C熱電対の特徴(メリット・デメリットなど)
お読み頂きありがとうございました。
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