トランス(変圧器)は寿命が長く、信頼性が高い部品ですが、長時間使用すると温度の上昇によって、電線の被覆や絶縁物が劣化し、絶縁破壊をもたらすことがあります。このようなことから、トランスには許容最高温度が定められており、温度によって階級化したのが耐熱クラス(絶縁階級)です。
この記事ではこの耐熱クラス(絶縁階級)について説明します。
耐熱クラス(絶縁階級)とは
トランスに使用している電線の表面は絶縁処理しています。絶縁処理に使用している材料(塗料や樹脂)の違いによって、耐熱特性が異なるため、絶縁材料によって許容最高温度が定められています。これを階級化したのが耐熱クラス(絶縁階級)です。
下表は耐熱クラス(絶縁階級)を示したものです。許容最高温度により「Y種」から「250」までに分類されます。「250」をアルファベットが与えられています。この耐熱クラス(絶縁階級)は「JIS C4003:2010」で定められています(IEC 60085を元に定めました)。
耐熱クラス | 許容最高温度 |
Y種 | 90℃ |
A種 | 105℃ |
E種 | 120℃ |
B種 | 130℃ |
F種 | 155℃ |
H種 | 180℃ |
N種 | 200℃ |
R種 | 220℃ |
250 | 250℃ |
表の見方ですが、A種の変圧器の許容最高温度は105℃となります。A種のトランスを使用した場合は、105℃を超えて使用をしてはいけないということです。105℃を超えても使用することはできますが、部品の寿命が大きく縮まります。
ポイント
- 以前は、180℃を超える熱に耐える絶縁体はすべて『C種』でしたが、現在のJISC4003では細分化されて、H種・N種・R種・250ができました。
- 耐熱クラスが高いほど、高温環境下に耐えられ、信頼性が高くなるが、効果な絶縁材料を使用しているため、コストが増加してしまう。信頼性とコストがトレードオフの関係となっています。
耐熱クラスと絶縁階級の違い
耐熱クラスと絶縁階級は同じ意味です。
1999年2月に三相モータに関する規格である「JIS C 4034-1、5、6:1999」が制定されました。制定前は『絶縁階級』を用いていましたが、制定後は『耐熱クラス』を用いるようになりました。
絶縁材料
- Y種絶縁
- A種絶縁
- E種絶縁
- B種絶縁
- F種絶縁
- H種絶縁
- N種~250
木綿、絹、クラフト紙・プレスボードなどで構成されている
Y種の絶縁材料をワニス含侵または絶縁油で強化している。
ポリエステルフィルムやマイカペーパーなど許容最高温度120℃に耐える材料で構成された絶縁です。
無機質材料が接着剤で固められて形態となっている。
B種の絶縁材料をより耐熱度がある高い接着剤、シリコン樹脂、アルキド樹脂で構成している。
無機質材料をケイ素樹脂(またはケイ素樹脂と同等以上の耐熱性の樹脂)で構成している。
カプトンフィルムや生マイカで構成している。
各変圧器の耐熱クラス
- 油入変圧器
- モールド変圧器
- 電動機モータ
A種
B種、F種、H種
最近は表面実装のトランス(変圧器)も増え、リフローはんだを考慮して、耐熱性の高いF種がよく使用されています。
E種、B種、F種、H種